爛れた関係のはじまり
───ある部屋で、一つの影が蠢いていた。
「っっっ……リツカっ♡リツカっ♡リツカぁっ♡♡♡」
「ん………………っっっっ!!」
灯りは灯されておらず、ベッドの上で蠢く影以外の存在は無い。
その影──一組の男女は、生まれたままの一糸纏わぬ姿でくんずほぐれつ、抱き合う形で絡み合っていた。
何度も口吸いや、乳繰りをされて、よがり狂う赤髪の”彼女”に向って、黒髪の”彼”は囁きかける。
「くっ……だ、出すよっ……」
「うんっ♡♡中っ♡♡中にっ♡♡中に頂戴っ♡♡」
びゅくっ♡びゅるるるるるるるるるるっっっ♡
彼は、その身に宿していた精を彼女へ向かって吐き出した。
彼女は、彼が放出した精を、その身で全て受け止める。
自らの肉棒を引き抜いた穴からは、白濁した液体がドロリと垂れ落ちる。
「今度は、私が上になるから……」
一発の余韻が冷めやらぬ内に、彼を押し倒して彼女は肉棒に跨る。
───どうしてこんな関係になったんだっけ……
自らの上で腰を振り続ける彼女を見て、彼は思いを巡らせた。
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事の発端は、グランドオーダーの終了から程なくの事であった。
人理焼却を防ぎ、未来を取り戻したあの日。未帰還者一名を残して冠位時間神殿は崩壊した。
カルデア側の調書作成に協力するために管制室へ赴いた帰り道。ふと、彼───藤丸 立香は、帰ってこなかった「あの人」の部屋の前を通った。
「…………グスッ」
部屋の中から、啜り泣く声が聞こえる。
無人であるはずの部屋から泣き声が聞こえるのはおかしい。そう思い、彼はドアを開けた。
灯りが灯っていない室内。主の消えたベッドに寄り掛かるように、赤髪の少女が泣いていた。
「……リツカ」
彼女───藤丸 立夏は、彼に気づいて目元についていた涙を急いで拭った。
「あ……ふ、藤丸くん。ダヴィンチちゃんのお手伝い、終わったんだ……」
「……うん」
二、三言、会話。沈黙が場を支配する。
立香は部屋の奥へ、立夏のいるベッドへと向かう。
「……本当は、わかってるんだ。ドクターがもういないって」
立夏は、ポツリと語り始めた。
「頭のどこかではわかってるんだ。ドクターもう帰ってこないって。泣いても、祈っても……もう、行っちゃったんだって」
「……うん」
「でもね……認めたくない、認めたくないよ……!」
「…………」
立香とて、思う所がないわけではなかった。
ドクターロマンこと、ロマニー・アーキマン。自分達を励まし、支え、時には馬鹿なことを言い合ったり。立夏にとっては、尊敬と、親しみと、恋慕。
そんな彼は、ゲーティアとの闘いで消えた。もう、二度と帰ってくることはない。
「会いたい……会いたいよ……ドクター……」
「…………」
立夏は再び泣き始める。ベッドに顔をうずめて泣く彼女の隣に、立香は座った。
「……俺も、寂しいよ。ロマニと会えないなんて」
ぽつりと、立香は諭すように話し始めた。
「でも、ロマニは……多分、『前を向いて、走りなよ』って……いうんじゃないかな」
「…………」
「別れはある、誰にでも。それを乗り越えるのも、試練なんじゃないかな……って、思うんだ」
その試練超えるの一人じゃ無理なら俺が手伝うからさ、と彼は語った。
泣いていた立夏は、顔を上げて彼の瞳を見つめた。
──蒼い瞳、真っ直ぐな心、芯が強く、真っ直ぐした少年
彼女は、少し間をおいて立香に話しかけた。
「……手伝って、くれるんだよね」
彼が,頷く。
「じゃあ…………私の事、抱いて」
──彼の事を、汚したくなった
これが、事の始まり。