熱中症
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「その…こ、困ります…!」
「いいじゃねぇ〜かよ?俺と楽しもうぜ?」
ゴア王国の海水浴場の売店の裏の塀で下卑た笑みを浮かべるガラの悪い男に壁ドンされた女性が困った顔をしていた。
その日の前日の夜、フーシャ村にて。
「うぅ〜ん…やっぱりこれ着るしかないかなぁ…?」
村唯一の酒場の主人であるマキノは自室で去年購入した水着に着替え迷っていた。
去年王都に買い出しに行った際、王都で働いている旧友と再会してお互いの話をしながら一緒に買い物していた際に、「いい歳なんだから!これならいい男を捕まえられるわよ!」と半ば強引に買わされた水着だが、ソレは胸とお尻を強調させる肌面積が多い大人向けのセクシーなタイプの黒色のビキニ水着だった。
明日水着が必要になるからと棚から水着を出したのだが、他のものは普段着ないせいで小さかったり虫食いがあったりしていて、唯一着れるものがソレしかなかったのだ。
「まぁ、パーカー羽織ればいいし…保護者として行くだけだし大丈夫よね…?」
鏡に映る自分の姿に頬を赤らめながら、ルフィ達との約束を思い出す。
一週間前に弟のように可愛がっているルフィとエース、サボから新しくできた海水浴場に保護者として引率してほしいと頼まれたのだ。
なぜか顔を赤らめ辿々しく話すエースによれば、新しくできた海水浴場では事故防止のために子供だけの入場は厳しく禁じられているため、遊ぶことができないというのだ。
公共の場で一応無法者の山賊であるダダンが堂々と入れるわけもなく、それとは別に仕事で忙しいようで頼むことができず、自分に頼んできたそうだ。
「う〜ん…いいわよ!四人で楽しみましょ!」
マキノは人差し指を口に添え数秒考え事をした後、その日は特に用事がなく店も定休日だからと了承したのだ。
「うわ〜いやったぁ〜!」
「フフ、でもルフィ?あなた能力者なんだから一人で海に入っちゃうダメよ?」
大喜びではしゃぐルフィを見てマキノは微笑んだ。
「…おい、やったな!マキノさんの水着見れるぞ?」
「ばっ⁉︎サボテメー…!」
その後ろではサボがニヤニヤしながら顔を赤らめているエースを揶揄うのだった。
当日、照りつける太陽の下、人が溢れる海水浴場で四人は休日を楽しんでいた。
「おぉ〜い!エース!サボ!こっちこいよ〜!」
「待てよルフィ〜!」
「あんまり遠くにいっちゃダメよ〜?フフ、エースも楽しんでる?」
「うぇッ⁉︎あ、あぁ…!」
ルフィを追いかけるサボを見ながら突然声をかけられ驚きながら返事をしたエースはマキノの姿を見て顔を赤らめて顔を背ける。
水着姿のマキノの二十代になり女の魅力も上がった彼女の胸と尻を強調するスタイルはエースには刺激が強すぎた。
「その…ありがとなマキノさん…保護者引き受けてくれて…お礼はするから!」
頬をポリポリかきながらエースはマキノにお礼を言った。
「いいのよ、3人とも楽しんでいるし来てよかったわ。そうだ、お礼ならオイル塗ってくれるかしら?フフフ…」
マキノは羽織っていたパーカーを脱いで綺麗な背中を見せながらエースを揶揄った。
「ふぁッ⁉︎や、やらねーよ⁉︎ルフィのところ行ってくる!」
エースは顔を真っ赤にして慌ててルフィのところに向かった。
「あらあら…少し揶揄い過ぎちゃったかしら?」
初々しい反応のエースに微笑みながら、監視員の人が監視塔にいるのを確認した後、マキノは遊び疲れるであろう3人のために近くの売店にジュースを買いに行くのだった。
そこで子供用の小さい瓶コーラを三本購入し戻ろうとしたマキノは冒頭の男に絡まれることになった。
どうしよう…
マキノは、男に壁に追い詰められた状態でなんとか逃げることを考えていた。
村から離れているので知り合いはおらずもちろんガープもここにはいない。早く戻らないと3人は心配するだろう。
「そ、その…お願いします…戻らないといけないので…」
マキノは手に持った瓶コーラごと両手を胸に押し当てながら男を見上げて断ろうとするも、瓶コーラが胸に埋まる形になりそれが男の劣情を余計煽ることになった。
ゴクンと喉を鳴らして、男はこの上玉の女をモノにしようと手を伸ばす。
「へへ、そんなものよりもっとデケェものを挟んでやる…ぐほぉッ⁉︎」
ゴォ〜ンッ!!
男が下劣なセリフを言いながら手を伸ばしてマキノの胸を鷲掴みしようとした瞬間、男は頭に大きな衝撃を受け、二つの大きなたんこぶを作りながら地面にキスをすることになった。
「大丈夫だったかマキノさん?」
「心配してたんだぞ?」
3人でルフィがいる浜辺に戻りながらマキノから受け取ったコーラを飲みながらエースとサボは心配して後ろのマキノさんに声をかける。
「うん大丈夫よ。ありがとう二人とも。ごめんなさいね心配かけて…」
胸を掴まれそうになって怖くなって目を閉じたマキノが目を開けると、地面に突っ伏した男に蹴りを入れてる石を持ったサボとエースの二人が目に映り、安心してその場にへたり込んでしまった。
一向に戻ってこないのを心配してルフィに留守番を任せ二人で探していたところで男に絡まれているマキノを見つけたのだそうだ。
その後近くの監視員に男を引き渡した後、ルフィのための瓶コーラを持ちながらエースとサボと共に戻っている途中であった。
保護者なのに子供達に保護されるなんて…保護者失格ね…
マキノがそんなことを考えていると、エースとサボが声をかけた。
「心配するなよマキノさん!またあんなことあっても俺たちが絶対守るから!」
「ああ!約束するよ!」
本気で守ると言う二人の言葉に目元に目を潤ませながら後ろから両手で二人の肩を引き寄せ抱きついた。
「フフ、ありがとう二人とも約束よ?」
ムニュッギュムッ
抱きつかれたと同時に頭の上に重みのある柔らかいものが乗っかるのを感じ、二人はそれがなんなのか理解した瞬間、口からコーラを噴き出すのだった。
「お、みんなおかえり〜!あれ?どうしたエース?サボ?顔から湯気出てんぞ〜?」
「あら、熱中症かしら…?大丈夫二人とも?」
真っ赤な顔から鼻血と湯気を出しながらエースとサボは心配するマキノとルフィに向かって親指を立てて無言でサムズアップをするのだった。