熱い風と僕ら
「あー、クソ、またお前に勝てへんかった」
「……ちょっとスタート失敗しただろ」
「バレとったか」
「それが無かったらお前ともっといい勝負になってたかもな~」
「勝っとったかもしれへんで、俺が」
「どうだろうな~?」
お互い泥だらけのままシャワールームに飛び込んだ。仕切り越しの会話なのにどんな顔をしているのかいくらでも思い浮かぶ。
「……で?次は?」
「かしわ記念や」
「奇遇だな、俺もかしわ記念だよ」
「じゃあ今度こそは勝ったる」
「いーや俺が勝つ」
勝ちを譲ってやるつもりなんてない。でもお互いに燃えるような勝負がしたい。多分そういう相手がいるから走るのが止められないんだと思う。
「……そう言えば、お前レモンポップってヤツと戦ったことあるんか?」
「ない」
「中央おるくせにないんか!?」
「だって俺地方ばっか行ってるし」
「は~……何やお前」
「どうせ最終的にはJBC目指すつもりだろ、俺もお前もあいつも」
「そうかも知れへんな」
「じゃ、俺先に上がるから、また今度な」
「……おん」
濡れた髪をぎゅっと絞ってシャワールームを出る。まだ口の中に残っていたらしい砂が今更じゃり、と鳴った。