無題2

無題2


第三戦術試験区域、地球の荒野を模したフィールドに土煙が舞い上がる。土煙は地表すれすれを飛行する、ペイル社製MSザウォートが巻き上げるものと、それを追う3機のダイゴウ社製MSクリバーリが放つビームによるものだ。

ザウォートにはエランが、クリバーリにはダイゴウ寮生が搭乗している。当人同士の同意があれば、一対多の変則戦も認められるのだ。

クリバーリがホバー走行でザウォートの周りを囲むように動く。同時にビームライフルを構える3機、ザウォートは回避するために直上に飛び上がる。

飛行するザウォートを撃ち落とさんと、2機のクリバーリが両肩のビーム砲を連射する。迫りくるビームの弾幕は、強烈な光を放ちコクピット内のエランの顔を照らす。そこに焦りは一つもなかった。

「景気いいじゃないか、でも!」

冷静に弾幕が薄い部分を見極めて、最小限の動きでかわしていく。

「やる事が雑なんだよ」

もう1機のクリバーリが、回避行動中のザウォートに狙いを定めてビーム砲を放つ。が、ツバメのようなひらひらとした動きでかわされ、掠りもしない。

空中に留まるザウォートに向けて、クリバーリの腕部から誘導ミサイルが放たれる。ザウォートを追跡するが、なかなか追いつくことができない。

1機のクリバーリがザウォートの動きを牽制するように、ビーム砲を放った。ザウォートは背面の大型推進ユニットを噴射させ、更に速度を上げていく。高速飛行でビームをかわし、距離があいたミサイルを空中で宙返りしながら撃ち落としていく。

地上をホバー走行する3機のクリバーリの腕部から、ミサイルが全弾発射される。ザウォートはスラスターを吹かせて、上へ上へと飛び上がっていく。上昇する間、コクピット内でエランは投影された太陽の位置を確認しながら、計器類を弄っている。やがて信管が作動して続けざまにミサイルが爆発、ザウォートは爆炎に包まれ地上からは見えなくなった。

ミサイルが爆発すると同時に、操縦桿を強く握りパーメットリンクを切断する。一瞬ガクッと機体がバランスを崩したが、すぐに持ち直し、メインモニターでクリバーリの位置を目視で確認して太陽を背にする位置へと飛ぶ。

「地球の空だと雲に隠れながら飛べるんだけど、これだからフロントの空は」

エランが上空で文句を言っている間、地上ではダイゴウ寮生が慌てふためいていた。

「みんな!レーダーに反応はあるか!?」

『何もない!』『こっちもだ!』

ザウォートが爆炎に包まれ、クリバーリのセンサーが見失ってからずっと、反応が消失しているのだ。

パーメットリンクを用いてMSを制御することが当たり前の状況で、MSを探知するレーダーも適応した性能となっている。パーメットリンクを形成した際に生じる電磁波を探知するものへと変化していた。精度が高く、登録されている機体であれば、パーメット識別コードによって特定することも出来る。それでも、本来であれば無視しても問題ない弱点は存在していた。それが今の状況を引き起こしている。

「計器にばかり頼るから」

上空から右往左往するクリバーリを見下ろしつぶやくエラン。そしてパーメットリンクを繋ぎながら、真っ逆さまに急下降する。メインモニターに映る景色が目まぐるしく変わり、強烈なGを受けながらビームガンを構える。

「レーダーに反応!位置は……直上だと!?」

再びパーメットリンクを使った操縦に切り替えて、レーダーでも捉えられるようになった。しかし気付いたときには勝負は決していた。

太陽を背に急襲をかけるザウォート。位置を確認しようとクリバーリは空を見上げるが、モニター越しでも眩い光に一瞬目がくらんでしまった。一瞬の隙だがエランは逃さない。詳しい位置は分からないが対応しようと、ビームサーベルを抜いたクリバーリのアンテナをビームガンで撃ち抜き、急下降の勢いそのままに蹴り飛ばし後方に一回転しながら再び飛び上がる。蹴られたクリバーリは体勢を崩し、そばにいた仲間のブレードアンテナを切り落としてしまう。

「くそぉっ!こうなったら……!」

一気に二機を落とされあせる残されたクリバーリのパイロットだが、覚悟を決めたのかビームライフルを捨てビームサーベルを構える。近接戦闘に持ち込もうとザウォート目掛けて勢いをつけて走行する。

「突っ込んできてさあ、やられにきたのかよ」

正面から向かってくるクリバーリを見てエランは一人ごちる。向こうは近接戦闘を仕掛けてきているが、エランとしては別に受けて立つつもりはない。だが、浮かび上がろうとしたところに、クリバーリが跳ね上がって追いかけてきた。空中でザウォートのブレードアンテナを狙ってビームサーベルを振りかぶる、しかしあっけなくかわされ背面を蹴られ地表に叩きつけられてしまった。大きな隙を晒しているところに、ビームガンから一発ビームが放たれクリバーリのブレードアンテナが落とされた。直後、戦術試験区域の壁面にエランの勝利が表示された。


決闘の後、エランは宇宙港プラットフォームに来ていた。生徒手帳を手に取り、新しくペイル社から送られてきたメールの文面に目を通す。連絡艇を待っている間、これを数度繰り返していた。繰り返すたびに表情が険しくなっていく、グエルほどではないが眉間にしわができてしまいそうだ。

「彼女のこと探れって、本当に好き勝手言ってくれるよ」

エランの独り言を聞く者は誰もいない。何故こうも不満を漏らしているのかというと、ペイル社からスレッタ・マーキュリーとエアリアルについて調べろと指令が下ったからである。エラン自身は学園生活にさして愛着は持っていないが、ガンダムに乗せられて自由に生きられない、けれど学校に行くのを楽しみにしていたスレッタにせめて楽しい学園生活を送って欲しいと思っている。

そうは言っても、指令を無視することもできなかった。ある事柄以外は手を尽くして任務を遂行する、しなければならない理由があった。複雑な気分ではあるが連絡先のスレッタのページを開き、彼女の生徒手帳にコールする。しばらくして、どたどたと慌ただしい気配を感じるがスレッタが電話にでた。

『も、もももももも、もしもし!』

「こんにちは、スレッタ。ちょっと君に手伝ってもらいたいことがあるんだけど、聞いてくれる?」

『は、はい!大丈夫、です!!』

「ありがとう。今度の休日に戦術試験区域のチェックをするんだけど、MSを使わないとできないんだ。でも、僕のザウォートはしばらく整備で使えなくて、君とエアリアルの力を貸して欲しい」

これは半分本当で半分ウソだ。ザウォートが使えないのは事実だが、チェック自体は理由を申請してデミトレーナーを借りれば一人でも行える。しかし学園の事情にまだ疎く、何やら舞い上がっているスレッタは簡単に騙されてくれた。

『分かりました!』

「うん、今度の休日の朝9時にペイル寮の地下区画で待ち合わせね」

『はい。えっと、これってその……』

「ごめん、もう電話切るね」

『えっ?あっ!ちょ……』

スレッタが何かを言いかけていたが通話を切った。待っていた連絡艇がやっと到着したのだ。スレッタが何を言おうとしたのか少し気になるが、浮ついた思考を切り替える。行先はペイル社のラボ、しばらく帰ってこれないかもしれないが、今度の休みまでには帰れるだろう。


ペイル社のラボでは、薄暗い部屋でエアリアルとダリルバルデの戦闘が映し出されていた。モニターを見つめるのは、ペイル社所属の技術研究員、ベルメリア・ウィンストンと患者衣のようなものをまとったエランである。コクピットのような椅子にもたれかかり足を組んでいる。学園では王子のように振舞っているエランだが、今の荒々しい所作は普通の青年のようだ。

「まさに人機一体ってところかしら。重心の軌道グラフが姿勢制御パターンのどれとも一致しない。反応性も駆動システムのそれに比べて有機的すぎる」

「それって身体拡張制御のこと?」

「ガンドフォーマットの理想形ね。もっとも、このタスクレベルじゃ膨大なパーメットの流入でパイロットは即死だけど」

「呪いをクリアしているのはスレッタの方、かな」

機体側がとも一瞬考えたが、もし本当にそんなものがあるのであれば、身体を弄り回されてモルモットにはなっていない。浅ましい考えだがこれはそうであって欲しい、という願いや祈りにも似ていた。

「ガンダムに乗せるために生み出された、もしくは作り変えられた人間。僕みたいにね」

「恨み言はやめて」

ベルメリアがまるで自分は全面的に被害者とでも言うように静かに目を閉じる。普段であればまたいつもの発作かと無視を決め込めたが、今日は無性に苛立ちが募った。

「全部事実だし、あんたがやったことだろ!」

ベルメリアの瞳が揺れる。彼女が口を開く前に言葉を重ねた。

「スレッタとエアリアルについては指令通り調べるさ。検査が済んだなら、早く学園に戻らせてもらう」

前からだがエランはこの場所が嫌いだった。出来れば一刻も早く立ち去りたい。調整椅子から立ち上がり、去ろうとしていると背後からベルメリアに呼び止められた。

「エアリアルと戦う前にファラクトのテストがしたいわ。もう1回、決闘を取り付けておいて」

舌打ちを返事代わりに部屋を出た。ファラクトには乗るし決闘もするが、ずっとパーメットスコアを上げながら戦う気は毛頭無かった。


約束の日の朝、待ち合わせ時間の10分前にエランはペイル寮の地下区画に来ていた。あたりを見回してみたが、スレッタはまだ来ていないようだ。

地下区画ではペイル寮学園艦の整備でメカニック科の生徒が慌ただしく動いている。邪魔にならないように端の方に移動していると、整備をしている生徒に声をかけられた。

「おはようございます、エラン先輩。何してるんですか?」

「おはよう。決闘委員会の仕事の準備だよ」

「でも、先輩のザウォート整備中で使えませんよ」

「うん、だから助っ人を頼んでるんだ」

少し怪訝な顔をされたが、話題を変えると誤魔化せた。話題はこの前の決闘がすごかったということや、無茶な動きをするから整備が大変というメカニック科らしい愚痴、パイロット科の友達のために模擬戦をやって欲しいなど多岐にわたった。いつの間にか周りに生徒が増えていて、待ち合わせの時間はすぐそこまで迫ってきた。

コンテナ到着をしらせるブザーがハンガーに響いた。

「待ち人来るかな」

周りに集まっている生徒はとまどいながらコンテナを眺めている。コンテナの前に移動しながらエランは生徒たちに声をかける。

「整備がんばってね。サボりはダメだよ」

コンテナ搭乗口の扉が開き、スレッタが降り立った。

「おっ、おはよう、ございます」

スレッタの挨拶は緊張しているのかうわずっている。

「おはよう。時間ぴったりだね。じゃあ、行こう」

「はい!」

整備のために集まっていた生徒たちは、エランがコンテナに乗り込んで去っていくのを見て唖然とするしかなかった。

エランは人当りはいいけれど、浮ついた話を聞いたことは一回もなかった。なのに、これはまるで——

「もしかすると、デート……?」

一人が口に出すと、それは瞬く間に広まっていく。エラン先輩と水星女がデートをしているとペイル寮に広まり、休日にもかかわらず他の寮にも広まることとなる。


スレッタとエランを乗せたMSコンテナは戦術試験区域11番に到着した。ここは一面に灰色の岩盤がひろがる月面状のフィールドとなっている。エランがコンテナ内のコンソールを操作すると、コンテナのハッチが開いた。

「せっかくの休日なのに、付き合わせてごめんね」

「いえ!お手伝いできて、嬉しいです。えっと、その……がんばります!」

両手をぐっと持ち上げて笑うスレッタに、モニターに映された巡回先をしめす。

「この順番でエアリアルに乗って回って欲しいんだ。何か異常があったら知らせてね」

「わかりました!」

元気よく答えたスレッタは、エアリアルを試験区域に降り立たせ、歩きだした。

狭いコクピットの中にはエランも乗り込んでいる。サブシートがないため、スレッタに身を寄せる形でコクピットシートの側面に立っている。結果的に物理的な距離がとても縮まってしまった。

「丁寧な操縦だね。揺れも少ない」

操縦桿を緩く握る手元を見ながら、スレッタのうなじごしに声をかける。スレッタはじっと見られているのを感じ取って、もじもじしてしまった。

「えっと、ありがとうございます……」

「いつからエアリアルに乗ってるの?」

「え?」

「君のこともっと知りたいから、教えて欲しいな」

バイザーごしに微笑みながら自分のことを聞いてくるエランに、スレッタは赤面してしまう。

「小さいころから。ずっと、です」

「ずっと?」

エランはそれを聞いて内心絶句して、思わず聞き返してしまった。

スレッタはガンダムについての知識がないし、エアリアルがガンダムだという認識もないように見える。自分が乗っているものがガンダムだと知らされず、幼いころから水星の極限環境の中で乗らされているのは、とても酷い話だと思う。

「つらかったり、苦しかったりしないの?逃げ出したいと思ったことは?」

スレッタにエランが考えることが分かるはずもなく、自分が考えることを答える。

「そんなこと、ないです。むしろ安心します」

「本当に?」

ガンダムに乗って安心するなんて、信じられない言葉だった。スレッタが嘘をついていないことは分かりきっているのに、本当かどうか確かめてしまう。

「本当、ですよ。エアリアルは子どものころからずっと一緒で、私の大切な友達で、家族……なんです。おかしい、です、よね」

不安な気持ちを誤魔化すように、へらっと笑うスレッタをぼんやりと見つめる。彼女には悪いが、確かにおかしいと思う。MSましてガンダムが友達や家族なんて、理解の埒外にある。

スレッタがこちらに振り向き目が合う。今の自分は相当間抜けな顔をしているからか、彼女はサッと顔をそらし前を向いてしまった。

しばらく無言が続き、スレッタの様子を窺っていると、彼女は何かを決意したようだ。

「エランさん!たたた、誕生日、教えてくださいっ!」

誕生日?何故?今までの話とどこか繋がりがあるだろうか。しかし、理由はよく分からないがスレッタは誕生日を知りたがっているらしい、であるならば交換条件として使えるのではないか。

「いいけど、その前に僕のお願いを聞いて欲しいな」

「は、はいっ!なんでしょうか?」

「エアリアルに、僕だけで乗ってみたいんだ」

「え!?」

それはスレッタにとって、簡単に頷けないお願いだった。迷うスレッタをエランが真剣な表情で見つめる。いつもにこやかなエランの珍しい表情は、断り切れない何かを感じさせる。

「君の家族のことは大切にする。だから、ダメかな?」

「あ……」

スレッタが瞳を揺らす。迷いは晴れていないが、それでも受け入れてもいいかもしれないと思えた。


スレッタにエアリアルを降りてもらい、エラン一人でコクピットに残る。確かめるようにスラスターを噴かせ飛んでいく。どうやらパーメットリンクでの操縦も出来るようだ。

でこぼこしたクレーターに着陸して、操縦桿をもてあそびながらつぶやく。

その目は凪いで冷ややかですらあった。

「あまりやりたくないんだけどね……おまえの正体は僕も気になるから」

ガンドフォーマットのレベルを上げていく。

「パーメットスコア——2」

エアリアルのシェルユニットが赤く輝き、エランの視界がぐにゃりと歪む。

電子回路のような光が幾筋も走る闇の中を大きな光に向かって走る。光が満ちたかと思うと、ガンダムとのリンクは完了した。

「この感覚は、ガンドフォーマットか……。でも、脳をいじくられる不快さも、心臓を締め付けられる痛みもない」

袖をめくって皮膚を確認するが、ガンドフォーマット使用時に浮かぶ特徴的な赤いあざも見えない。

「パーメットが反応していない……。ああ、そういうことだったのか」

可能性を考えていたが、信じたくなくて認めたくなくて除外していたもの。呪いをクリアしているのは機体側だという事実、それを真正面からぶつけられた。生き延びるために、名前も顔も人としての尊厳すら捨てた。その選択をする前からこんなものが存在していたとは、今まで受けた痛みは何だったのだろうか。脱力してシートに身を投げ出し、目を閉じる。

「スレッタ、君は……」

呪いを知らないまっさらな女。ガンダムをそれと知らず友達や家族と信じている無垢な子ども。あるいは呪いに冒された自分とは違う気味の悪いなにか。

だが、エアリアルが特別なのであってスレッタはそうでもない。あくまで、彼女はエアリアルを与えられた子どもにすぎない。であるならば、やりようはあるのではないか。

「エアリアル、おまえのことが欲しくなったよ」

シェルユニットが赤く輝く。それはエアリアルの感情の揺らめきか、開かれた翠の目の輝きのようだった。


エアリアルが戻り、膝をついて着陸する。ワイヤーアンカーを使い降りてくるエランにスレッタが駆け寄る。

「エランさんっ、あ、あの……た、誕生日、教えて、くれますか?」

「誕生日?4月1日だったかな……」

エランは冷たく答える。だが、舞い上がっているスレッタは彼の変化には全く気付いていない。

「教えてくれて、ありがとうございます!あ、あのっ!また、今度の休日、で、出掛け、ませんか!」

エランはスレッタの横をすり抜け、横目でにらみつける。纏う空気は更に冷淡なものとなる。無言のエランにスレッタは違和感を覚えつつ、更に声をかける。

「あ、すいませんっ!つ、都合が悪ければ、私が、合わせます!」

今までであれば、眩しいと思っても嫌悪感を抱くことはなかった。だが、今の精神状態だとスレッタの何気ない言葉の全てが癇に障り、反吐が出そうだ。

「出掛けたい?そんなに出掛けたいなら決闘で懸けたら?」

「え?ど、どういう……」

「そのままの意味だよ。でも、君と決闘するのは僕が一回決闘してからだ」

どうにも抑えのきかないエランは冷淡に言い放った。スレッタは理由も分からず突き放されて、追い縋ろうとする。

「触るな。鬱陶しいね、君」

「あ……」

行き場を失ったスレッタの手が宙を掻く。エランはちらりとスレッタをかえりみて、追い打ちの言葉を投げかける。

「モビルスーツが家族なんて僕には理解できない。あんなものに関わりたいと思わない」

それきり、エランはスレッタを見ずに歩き去っていく。

明確に拒絶され、スレッタの目に涙がうかぶ。エランがどうしてこんなことを言うのか、まったく分からなかった。自分は酷いことを言われるような、悪いことを言ってしまったのだろうか?

ぐるぐると思考が堂々巡りをするなか、かすかにバイクの走行音が聞こえてくる。

「エラン!」

バイク型のモビルクラフトが急接近して、スレッタの目の前で止まった。

降りてきたのはグエルだ。エランは割り込んできたグエルに、冷ややかな視線を向ける。

「きさま、こいつに……」

エランは涙を流すスレッタを見て、奥歯をかみしめにらみつけてくるグエルと向き合う。

「……こいつに何をした。返答次第では……」

「僕が許せない?じゃあ、どうしたら手っ取り早いか分かるんじゃない?」

「あ?」

怒るグエルに、エランは挑発するように告げる。

「決闘だよ。御曹司サマ?」

普段より低い声には、いつもの水の君とは違う苛立ちが含まれていた。

Report Page