無題
アト「お姉ちゃん、この電伝虫を拾ったんだけど・・・」
配信を始めて一年ごろ、妹が電伝虫を拾ってきた。どうやら通話ではなく映像を録画するタイプのものみたいだった。
ウタ「じゃあ一緒にみよっか。なんか面白いものがあるかも!」
アト「うん!」
『あの子の歌は世界を滅ぼす!!』
それは12年前の真実を、私の罪を映し出したものだった。シャンクスはあの化け物を退治しようとした。そして私の罪を被って私たちを島に置き去りにしたのだった
アト「あ、あ、あれ、わたし、がく、ふを・・・おね、ちゃんに・・・え、え・・・?」
あの楽譜を歌ったからあの化け物が出てきた。あの楽譜を持ってきたのは・・・
バチンっ!!!!
衝動的だった。今でも後悔している。気づけば右手が動いていた。
アトは何が起こったのか分からず呆然としている。
ウタ「アンタのせいで!!あんな変な曲を持ってきたから、わたしは!シャンクスに・・・」
アト「おねえちゃん・・・?」
ウタ「私の12年はなんだったんだ・・・!!海賊を、アイツを恨んで・・・お門違いに・・・
アンタなんか、アンタなんか・・・!!生まれてこな」
ハッとした時にはもう遅かった。アトの目に光は一切なかった。ただ涙が浮かぶだけ、全てに絶望し切った顔。
私は今自分が何を言おうとしたのか、どれだけ残酷な事を言おうとしたのか自覚し吐き気を抑えながら
ウタ「ごめんアト・・・言い過ぎた。ちょっと一旦落ち着
アト「ごめんねお姉ちゃん、鈍臭くてトロイ私がいて。私の面倒を見てずっと自由じゃなかったよね。私がいてごめんね」
アトはそう言って部屋を出て行った。
歌は、言葉は人を救う力がある。
逆に言葉で人を殺すこともできる。
私は今、たった一つ残されたものを失った。
2人でも広かった部屋が、更に広く感じた