無題
草木も眠る丑三つ時。
そんな時間帯であるにも拘わらず、ルフィは玄関で靴を履いていた。
その理由はもちろん、愛犬のウタを散歩に連れていくためだ。
「準備は良いか、ウタ」
靴を履き終えたルフィは、背後に控えるウタに声をかける。
ウタは「わんっ♥」と調子よく返事をした。
ともすればいつも通りの見慣れた風景だが、今日な散歩はいつもとはまるで異なる様相を呈している。
首輪を外行きではなく家用のまま付け替えず、更にリードを付けている。
そして更に、いつもは身に着けている外出の服も今日は着ておらず、家にいる時と同じ生まれたままの姿だった。
今日は予てより計画していた、初めての『夜の散歩』を行う日である。
ルフィはもちろんウタもまた、もう待ちきれないという様子でソワソワしていた。
「そんじゃ行くか!」
「わおんっ♥️」
ルフィがにこやかに言うと、ウタも心から幸せそうな笑みを浮かべて応じた。
飼い主がリードを引き、飼い犬は従順にそれに付き従う。
一人と一匹は夜の町へと繰り出していく。
煌々たる月明かりが降り注いでいた。
まるでスポットライトのようなそれを浴びながら、ルフィは愛犬のリードを引っ張って歩く。
「今日が良い天気で良かったよなぁ。絶好の散歩日和ってやつだ。なぁウタ?」
何でもない調子で後ろを着いてくるウタに話しかけるルフィ。
一方、ウタは何やら落ち着かない様子で身体をもじもじさせていた。
それも仕方ないだろう。
何しろ、今日は彼女がルフィの犬になって以来初めての、生まれたままの姿での散歩なのだから。
いつも見慣れた町並みが、今日はまるで別のものに見えてくる。
こんなところ誰かに見られたらどうしよう。
中途半端に残った羞恥心の残滓が、ウタの心をざわつかせていた。
ああ、だけど。
首輪から伸びるリードが、ルフィの手にしっかり握られているのを確認した瞬間。
そんな微かな恥じらいすらも、快感を貪るためのスパイスへと成り果てた。
絶対的上位者の飼い主に屈服し、自分のくだらない羞恥心など易々と握り潰され、支配される恍惚。
それでいて尚、優しく思いやりのある手つきで自分を守ってくれているのが伝わってくる安堵。
何より、いけないことをしている背徳感も合わさって、爆発的な悦楽がウタの胸の内を満たしていく。
その証拠に、何も身に着けていない彼女の秘部からは愛液が洪水のように滴り落ちて、路面に点々と染みを作っていた。
「何だウタ、お漏らしか? 赤ちゃんみてえだなあ」
それに気づいたルフィが、ケラケラと意地の悪い笑い声を上げる。
ウタは顔に熱が集まるのを感じた。
でも決して嫌じゃない。
それどころか、もっと罵ってほしい気持ちにすらさせられてしまう。
躾けてほしい。こんな粗相をしてしまう駄犬を。たっぷりお仕置きしてほしい。
「ダメだ」
ルフィはそんなウタの内心を全て見透かしたように、笑みを深くして言った。
「それじゃご褒美にしかなんねえからな。今は我慢しろ。それがお仕置きだ」
「くぅ~ん……」
ウタはしょんぼりと眉を下げる。
愛しのご主人様はいつもはとても優しいが、たまにこうして意地悪なところがある。
もちろんそんなところも含めて大好きなのだが、痒いところに手が届かないこの感覚はもどかしい。
「その代わり、ちゃんと言うこと聞いて我慢できたらご褒美やるぞ! ちょっとだけ辛抱しような!」
しかし、続くルフィの言葉を聞いて、ウタの表情がパッと明るくなった。
ルフィからのご褒美。何て甘やかな響きだろうか。
想像するだけで涎が止まらなくなる。
「納得してくれたみてえだな」
「キャン! ワンワン!!」
「よしよし。それじゃあ、おれ行きてえところあるから、ちゃんとついて来いよ」
「わふんっ♥️」
ルフィはもう一度、軽くリードを引っ張った。
ウタはだらしなく舌を垂らして、先を行くルフィの後に続く。