無題

無題

あああ


「…ん…アクア? どうしたの、こんな夜、っ」

「…アイ、ごめん。少しこうさせてくれ…」

「……どうしたの、ゴローせんせ」

「……………死んだ時のことを、夢に見た」

「っ、」

「突然後ろから押されて、ぐるりと回って、強い衝撃があって」

「せ、せんせ」

「痛みは一瞬しかなくて、それもすぐに冷たさに変わって、寒さだけが全てを支配していって、それも段々感じなくなって」

「やめてせんせー、無理しないで! せんせが辛くなっちゃうよ!」

「そんな中で、アイの事だけを考えていた」

「…!」

「アイとの約束を守らなきゃって、君の子をこの手で取り上げてあげなきゃって。それが、俺の最後の記憶だった」

「…せんせ」

「もしかしたら俺がこうして生まれ変わってしまったのは、そんな俺の情けない未練のせいだったのかもしれない。

そのせいで…俺は、星野アクアとして生まれてくるはずだった子の未来を奪ってしまった」

「……」

「すまない、アイ。俺なんかが、この体に生まれ変わってしまって…。俺は取り返しのつかないことを…」

「…バカだなぁ、せんせは」

「え…?」

「そういうとこはホント、バカだよね。私よりバカ。相当だよ?」

「アイ?」

「私は、せんせのこと愛してるよ」

「っ」

「もちろんアクアも愛してる。せんせとアクアで二倍愛してる。二倍だよ二倍、お得だよね」

「アイ…」

「だから謝らないで。私の方がお礼言いたいくらいなんだから。

アクアとして生まれてきてくれたことも、また私に会いに来てくれたことも、私に愛を教えてくれたのも。全部、ありがとうだよ。

ありがとう、アクア。ありがとう、せんせ。愛してるよ、嘘じゃない」

「そんな、俺はそんなこと言われるような」

「せんせはどう?」

「っ!」

「どんな言葉でもいいよ。本当の気持ちを、言葉にして聞かせて。せんせの気持ちも、アクアの気持ちも」

「っ、俺は」

「……」

「…………愛してる。俺も愛してる。アイのこと、愛してる」

「……」

「…?」

「……グス」

「ア、アイ?」

「嬉しい。うれ、しいよせんせー。嘘じゃ、ないよね?」

「嘘なもんか。何にだって誓う、これは絶対嘘じゃない。俺は、アイを愛してる」

「うん、うんっ…せんせぇ…私も、私もっ」

「アイ…」

「…ね、せんせ。今日はこのまま抱いてて欲しいな」

「っ、でも」

「お願い。今日だけでいいの。…離れたくないよ」

「……俺も」

「?」

「俺も、離したく…ない」

「…ふふ。一緒だね、せんせ…」


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