女ヶ島編中編
軍艦から離れゆく九蛇の船の中でルフィ大佐はモモンガ中将からの言葉と海兵達の歓声を聞く。無様にも手と足を拘束され床に転がされてるルフィ大佐の表情は愛用の麦わら帽子が隠していた。
「開門ーっ!!!蛇姫様がお帰りにー!!!」
女ヶ島の門が開き九蛇の船を島に招き入れる。檻に入れられて拘束されたルフィはその歓声を遠くから聞く。やがて積荷をおろす事になったのか檻ごと動く感覚がし、光と声がルフィを向い入れる。ハンコックの指示で檻ごと運ばれるルフィ。その様はまるで罪を犯した罪人のようだった。いや、実際にそうなのだろう。この島、この国において女王たるハンコックに逆のは大罪なのだから。
「さて罪人よ。これから主を処刑する。何か言い残す事はあるか?」
「おまえなんかにおれは殺せねェよ。」
付近に集まる島民達の前でハンコックは堂々と宣言しルフィは不適に返す。その瞳は明確な怒りと反逆。その瞳がハンコックの神経を逆撫でする。本来ならそのまま処刑に進むのだろう。けれどもそれを遮る者はいる。
「待て蛇姫!!!彼は海軍の英雄ルフィじゃありませんかニョ。それに沖に中枢の者達の船が停泊しておりますな。こニョまま彼を処刑すれば戦争にニャりますぞ!」
「あれが海軍の英雄?」
「アラバスタで蛇姫様と同格の七武海を破ったっていう?」
「だからか。それならばあの強さも納得出来る。」
ニョン婆の一言で周囲がざわめき出す。いくら外界から隔離された島であろうと九蛇海賊団が定期的に持ってくる新聞がある。島の者達の中で1番話題になったのは海軍の若き英雄の話。殆どの新聞で大々的取り上げられてるそれは必然と女ヶ島の女性達の目を引いた。
「静まれ!そなた一体何様のつもりじゃ…そなたの時代はとうに終わったのじゃ…アマゾン・リリー先々々代皇帝グロリオーサ!!わらわの気まぐれで国が滅びようとも…みな許してくれる。なぜなら…そうよ。わらわが美しいから!!」
「美しいから国が滅んでも許してくれる?それが一国を収める王の在り方かよ!!」
「そうだ!この国に置いてわらわは1番偉い!なぜなら美しいから!!」
「おまえは美しくなんてねェよ。ワニと一緒だ。自分の為に国を無茶苦茶にしやがる。」
ハンコックの主張にルフィが反論する。その議論は平行線だ。当然だろう。お互いに自身に引いたルールが違うのだから。
「やはり我慢ならぬ!この無礼物を即刻「待つのじゃ!」…今わらわの言葉を遮ったのか?ニョン婆。」
「武々じゃ!海軍の英雄をただ処刑したとあれば確実に戦争にニョる。」
「武々?」
「断る!わらわにはこの男の存在が我慢ならぬ。即刻処刑する!」
「へェ。逃げんのか。」
ニョン婆の話を聞きルフィはハンコックを挑発する。
「怖いよな。こんな所で引きこもってたんじゃ。ワニに勝てる自信もないだろ。お前。」
「わらわがあ奴以下だと、貴様はそう言いたいのか?」
「おれに負けるのが怖いんだろ?よくわかんねェがそんな能力が有れば早々負けねェだろ。だからそれが効かないおれが怖いんだ。だから他の奴を人質にしてまで強引におれを連れて来たんだろ?ハッ。素直に言えよ。」
ルフィが喋るたびにハンコックの機嫌が悪くなるのを周囲の人間は肌で感じ取る。それでもルフィは喋るのをやめない。
「そこまで言うのなら良かろう!!武々にて、貴様をはかろうではないか!!」
先に動いたのは…やはりハンコックであった。
女ヶ島に用意されて闘技台の上にルフィは解放される。ルフィの前に立つのはサンダーソニアとマリーゴールド。
「なんだ。お前が戦うんじゃないのか。」
「なんじゃ。不服か。いきなり王は取れぬと思うが?」
「別にどっちでもいいよ。最後にお前をぶっ飛ばせばいいだけだ。」
闘技台に立つ2人は油断なく構える。体が蛇になっていきその姿は伝説に言われるメデューサと言っても過言ではないかもしれない。動物系の人獣形態。ルフィは冷静に考える。動物系はそのタフさが厄介だ。2人に飛ぶ黄色い声援と死刑と叫ぶ呼び声。その中でルフィは静かに戦闘態勢を整える。ギアはまだ温存だ。
「"蛇髪憑き八岐大蛇"!!」
「"蛇髪憑き炎の蛇神"!!」
2人の髪が蛇を形取りルフィを攻め立てる。その力を知ってるが故の油断も慢心もない完璧な連携。
「ゴムゴムのUFO嵐脚!!」
それに対しルフィは体を最大限捻りその反動で空を飛ぶ。だが、目的は飛ぶことではない。高速回転するルフィの脚から飛ばされる斬撃は完璧な連携で攻め立てる姉妹の手数を上回る。だがこの技の1番怖い所はそこではない。
「「グッ!?」」
「ゴムゴムの銃!!」
体制が崩れた瞬間をルフィは見逃さない。フリーの両腕を体制を崩した2人に同時に当てる。たったそれだけ。回避は間に合わない。その一撃で2人は場外に飛ばされる。
「そんな…サンダーソニア様が…」
「マリーゴールド様…」
「これが…海軍の英雄…」
「まさかここまで差があったとはな。」
「次はお前か?」
驚きに包まれる女ヶ島の面々を無視してルフィはハンコックを睨み付け、冷ややかに言う。けれどもその内には怒りの炎が燃えていた。