無題

無題


ーモブAー

 海軍に入隊して、あの訓練から1週間が経った。憧れてたルフィさんは思ったより真面目で硬くるしくて、けれども時々死んでほしくないとかふとした拍子に子供っぽい所を見せたりとか、入隊早々訓練終わりに宴したりと常識に囚われていないように見えた。同期の友人と話しながら廊下を歩いていると向かいからその先生が来た。

「「おはようございます!ルフィ先生!」」

「せ、先生かぁ…おう!ルフィ先生だ!おはよう!モブA、モブA'」

 え?今照れた?何あの笑顔。太陽かよ。先生と呼ばれたルフィ先生は少し照れた後、嬉しそうにルフィ先生と繰り返し挨拶する。普段の訓練でもいつかの宴でもこんな笑顔は見た事ない。朝から良いものが見えたかも知れない。この笑顔は心のアルバムに仕舞っておこう。

ーモブBー

「失礼します。」

「おう、モブBか。入れ。」

 挨拶をして教官の部屋に入る。扉を開けると訓練の時の生徒にしか見せない笑顔でこちらを迎えてくれるルフィ教官。海軍本部にも慣れ定期的に開かれるルフィグッズを集めてる身としてはこの笑顔が自分達にしか見せない優越感が体を通り抜ける。

「戦う理由に関してか?」

 こちらが本題を切り出す前に相談内容について言われてビックリする。この事に関しては誰にも話してない。ルフィ教官は知る筈もない事だ。

「モブBはなんで海兵になったんだ。」

「…友達が海賊に殺されて。復讐の為に…」

「なら別にそれで良いじゃねェか。」

 あっけらかんとこの人は言う。けれども事はそう簡単じゃ無いのだ。

「良いわけないじゃ無いですか!海軍ってのは守る存在なんですよ!なのに復讐の為なんて…」

「なら守る為に戦えば良いだろ。復讐終わった後にでも。空っぽになった目標にみんなを守るって入れればいい。」

 こちらの問いに端的に、けれどもしっかり返す。教官モードのルフィ教官。簡単に言ってくれるその姿に悩んでたのが馬鹿みたいになってくる。

「俺は…そんな強く無いですよ…」

「そんなんみんなそうだ。おれも弱かった。だからおれが強くしてやる。復讐を成し遂げられるように。みんなを守れるように。」

 俯き涙を流すこちらの頭を優しく撫でて言ってくれる教官殿。きっと強くなる。そう誓った。

ーモブCチームー

「連携が甘い。攻撃の密度が低い。そんなんじゃ対処出来ないぞ。そこ。無駄な動きが多い。もっと視野を広く取れ。テンポが一定すぎる。連携しやすいだろうがリズムが乗ったら簡単に躱されるぞ。」

 厳しい言葉が戦場に飛ぶ。何回繰り返してるのかわからない。多段攻撃を目の前の教官は海楼石の手錠をつけたまま軽々しく躱す。

「もう終わりだな。タイムアップだ。」

 結局一撃も与えられる事なく今日の模擬戦が終わる。こんな事を繰り返して本当に強くなれるのだろうか…

「おうモブC。前回よりキレが良くなってたぞ。他の教官に話をつけてやるから誰か希望は居るか?おれは剣が使えないからよ。話を通すぐらいしか出来ないんだ。モブDはちょっとチームに気を使い過ぎだ。飛び道具は仲間に当たるのは怖いだろうが今は訓練中で痛みもない。それにお前の射撃は正確だ。今のうちに怖がらずに撃つ練習をしようか。何度もチームでやればその内相方がどう動きたいのか手に取るようにわかるようになるんだ。本当だぞ?それと、モブE。その武器はやっぱり体に合わないか?そっか。また後で色々武器を試してみようか。それとおれの先生に話通してあるから後でそっちにも相談しよう。」

 朗らかな笑顔で褒められて次は頑張ってみようとなる。その少し無理してる表情がこの恐ろしい強さを持つ教官が年下だと思い出させる。もっと頼ってくれれば良いのになんて言えない。彼には頼る人はもう居るし、きっと私たちの前では教官として振る舞いたいだろうから。

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