無題

無題


『ええ〜〜〜!!なんだよ特別教官って!いくらゼファー先生からのお願いでもおれやりたくねェよ!』

『最近お前が新兵達を気遣ってるのは知ってる。それにお前達のお陰で何年海軍への入隊希望者が増えてる。教官の数が足りないんだ。』

『だからっておれじゃなくていいだろ。教官なんてしてたらウタと一緒に居られる時間が減っちまう。それにおれ教えるの下手くそだしよ。』

『予定なら上層部の方で調整する。そんなに一緒に居たいなら共に教官でもやればいい。それになおれはお前の指導能力を評価してる。たのむ。』

『頭あげてくれよ。わかった。先生の頼みならしょうがねェ。受けるよ。それ。』

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「おれが今日からお前らに戦い方を教えるルフィだ。座学は無理だ。他の教官を頼ってくれ。」

 ルフィは訓練所の1つで台の上に立ち自身に当てがわれた生徒達を見渡す。恩師の1人であるゼファー先生が自ら選んで分けてくれた面々だ。それなりの理由があるのだろう。ルフィにしては珍しくこの日の前までに全員の顔と名前、出身と境遇を暗記している。戦闘術を教えるだけだがその為のプランも夜中にウタと頭を捻らせ考えて来ている。ざわついている生徒達を無視し当初の予定通りに進めるルフィ。

「お前らにはまず模擬戦をしてもらう。ここにあるのは実際に持たされる剣と銃をほぼ完璧に真似したやつだ。当たってもいたくねェ。これを使う。」

 ルフィは実際の訓練でも使われるペイント剣とペイント銃を生徒達に見せる。その後もう一つ用意してたアイテムを自身の腕につける。

「そして相手はおれだ。この腕輪には純度の低い海楼石が使われてる。これで弱体化したおれに一度でも攻撃が当たればお前らの勝ちだ。」


 動揺した新兵達など相手になる筈もなくわずか5分後には全員地面に伏していた。弱体化してもルフィ相手に5分もった新兵達を褒めるべきか。5分も立つほど手加減できたルフィを誉めるべきか遠くから眺めてたウタは思う。

「いいか。これが今のお前らの限界だ。これならすぐ死んじまう。おれはお前らに死んでほしくねェ。少し休憩したら早速訓練を始めるぞ。」

 その後、体力からして少ない者には体力作りを。技術から足りない者には技術を。覚悟が足りない者には明確な夢の方向性を。最初の一戦で生徒1人1人の個性を見極めたのか普段のおちゃらけた態度とは大違いに1人1人指南していくルフィ。いくら教官として新人だからと教える生徒数が少なくてもそのやり方は異質だった。時間が経ちルフィは全員を元いた場所に集合させる。

「さて、今日の所はこれで終わりだな。あとは」

 生徒達が息を呑む。今日一日でルフィの優しさとスパルタを嫌というほど同時に食らった彼らは終わりと言うルフィの言葉に反してどんな無理難題が飛び出してくるのかと固唾を飲んで待つ。その緊張を解いたのは突然ルフィに後ろから抱きつくウタだった。

「ルフィ〜!お疲れ様。どう。時間ピッタリでしょ。」

「おう。完璧だ!よーーし!宴だーー!!!」

 そのやり取りに生徒達が茫然としてる間にもウタとルフィの指示で途轍もない速度で宴会場が出来上がっていく。わずか数秒で先程まで訓練をしてた場所は1つの会場になっていた。もはやどうしていいのかわからない生徒達はルフィの勢いに押され流されるままに席につかされジュースを持たされる。

「それじゃァお前らとおれの出会いを祝ってカンパーーイ!!」

 流されるままに宴に巻き込まれた新兵達はそのまま流されるままに宴を楽しむ。最初の方に流れていた硬い空気は数刻の内になくなり和やかな空気が会場を包み込む。

 その後、元帥に呼び出されたルフィは大目玉をくらい、ゼファーとガープのとりなしで今後の生徒達の出来次第という観察処分をくらう事になる。

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