無題ss

無題ss



・正規√

・パンクハザード→ドレスローザの途中、ローがドフラミンゴへの電話が終えた辺り

・弟くんがヴェルゴ戦後ルフィたちとの合流前に獣型に戻っていて、人の姿を明かさないまま出発していたら、という前提のSS

・何スレ目か思い出せないけどウソップが弟くんにツッコミしてたやり取りが好きなのでお借りしました。わかる人がいたら何スレ目か教えてほしい










海坂の中、岩礁を器用に避けて進むサニー号の上。ルフィの一声で皆が集合し、ローの作戦の説明を待っていた。


「作戦を説明する前に、俺の仲間を一人紹介しておく」


仲間、つまり彼が率いるハートの海賊団の船員のことだろうか。だが、彼が今このサニー号に乗っている通り、自身の船や船員から離れ単身このパンクハザードにいたはず。


「紹介って……ドレスローザで合流するの?」

「いや、もうここにいる」


期待と異なりローが口にした言葉に、皆が首を傾げる中、ナミが代表するように疑問を口にした。この場にいるのは、麦わらの一味、近右衛門、モモノスケ、捕まえたシーザー、そしてローと


「もしかして、おにぎりのこと?」


ローの足元、荒波に揺れる船の上にも関わらず気持ち良さげに寝そべる可愛いらしい名の三毛猫。この場で唯一ローが仲間と言うのに当てはまるのは、ルフィたちがローと出会ったときから彼の腕の中にいたその猫だけだ。

パンクハザードでは人の言葉を理解するそぶりすら見せていたが、今はよほど芝生が心地よいのか、全員から注目されていることにも気づかずゴロゴロと喉を鳴らして寝続けている。


「飼い猫を改めて紹介って……あんた可愛いことするわね」

「まだ秘密でもあるのか?」

「喋れるとか?」

「ビームだせるのか!?」


「……おいルカ。寝てないで挨拶しろ」


ローは外野の声は無視して、寝そべる三毛猫の首根っこを持ち上げる。そして、そのまま放り投げた。突然の乱暴な扱いに、思わず諌める誰かの声があがるが、猫は動じる様子もない。そして空中でくるりと宙返りを披露したかと思えば、そこには青色のコート着て茶髪と瞳を持った青年が現れた。


「ええーーー!!!おにぎりがヒトになった!!」


「こいつはルカ。さっきまでの姿は悪魔の実の能力によるもので、歴とした人間だ」



紹介された青年は、取り出したノートに何やら書いてローの目の前に掲げている。やれ妖怪だと騒ぐ周りのことよりも、飼い主のぞんざいな扱いに不満があったらしい。当の飼い主には「いい加減起きろ寝過ぎなんだ」と、にべもない態度を取られている。

と、ルフィが思い出したとばかりに手を打って叫んだ。


「あーーー!!お前あの時の無口か!!あの時はありがとな!」


ルフィは猫からヒトに姿を変えた青年の姿に覚えがあった。2年前の頂上戦争、そこで深手を負ったルフィの命を救ったのはトラファルガー・ロー率いるハートの海賊団であった。そのクルーたちの中に確かに彼はいて、後から聞いた話ではあるが、暴れ回る自分を抑えようと尽力してくれたらしい。


「改めてよろしくな!おにぎり!!」

【おにぎりじゃない】

「ん?おにぎりじゃねェのか?」

【おにぎりは偽名。僕はルカ】

「おう、わかった!じゃあネコ男な!」


名乗り直したルカの努力も虚しく、ルフィの中ではローと同様あだ名が決まったらしい。ルフィはネコ男の手を取りブンブンと握手をした、はずだったが、ルカによってその手は呆気なく振り解かれてしまった。

ルフィはきょとんとしているだけだが、隣で見ていたウソップは戦々恐々だ。

中性的な顔立ちで優しげな雰囲気もあるが、あのロー率いるハートの海賊団の一人なのだ。【そんなあだ名で呼ぶな】【ぬるいやり取りはしない】と冷めた目で言い放ってきて、ついでとばかりに真っ二つにしてくるかも……。

しかし、ルフィの前に取り出されたのは得物ではなくノートであった。


【よろしくね】


顔を隠すようにしながら掲げており、顔は少し赤い。つまり、


「ただの照れ屋か!!!」



この後、ロビンによって青年が賞金首「"猫魔" トラファルガー・ルカ」であること、そしてローの実の弟であることがわかり、船上はまた盛り上がるのだった。


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