無題
.
.
.
.
.
勇気を振り絞ってキラーの家を訪ねる。平日の昼間、いないと思ってダメ元で訪ねたつもりが思いがけずキラーいた。
「お前か。珍しいなこんな時間に」
「キラーこそ。仕事はどうした?」
「いや…ちょっとな…まあ入れよ」
中に案内され、リビングのソファに腰を下ろす。
「…実はな、おれ警察クビになっちまったんだ」
「なんだって?なぜ??」
「さァな……ある日おれのバイクに見覚えのない拳銃が放り込まれててよ。それをおれが盗ったってことにされちまった」
「そんな……」
「出てくる証言がぜんぶおれの不利なことばかりで…何が起こったかわからないままこのザマだ」
キラーは乾いた声で笑い、そのままうなだれた。
「キッドの……」
「えっ…」
「キッドのカタキ、打てなくなっちまった……」
その言葉を聞いて、思わず涙が溢れ、止めることができなくなった。
「おいお前!どうした?」
「じ、実は……」
涙と洟水が流れるのも構わず、今までのことを全て洗いざらいキラーに打ち明けた。
キッドが持っていたもの、言い争って殺してしまったこと。怖くて何日も自首することを決断できなかったことも。
キラーはずっと最後まで黙って聞いていた。
「そうだったのか…よく話してくれた。……お前も辛かったな」
話し終えると、そういって肩に手を置いてくれた。
「すまねェ……おれもう辞めちまったからお前の力になれなくて」
キラーの声も辛そうだった。
ふたりはしばらく声を押し殺したまま、じっと座っていた。
「でもちゃんと信頼できる人に話しておくから、大丈夫だからな……」
キラーが気遣ってくれる声が遠い。
これからは見えない明日を手探りで探していくことになるのだろう。
襲い来る不安に、再び涙が頬を濡らした。
Fin.