無題
あああ※後半部分にややセンシティブな描写があります。閲覧注意。
「ひゃああ~、冷たいっ!!」
急いで玄関に飛び込むと、ぶるぶるっと子犬みたいに身を震わせた。
「うわ、濡れちゃったなぁ…うぅ、寒いっ…」
季節外れの通り雨に降られ、体中が冷え切っている。
バッグに入れていた折り畳み傘が壊れていたのは不運だったと思う。ちゃんと確かめておくんだったなぁ。
今年の冬は暖かいとはいえ、雨に濡れた身体はすっかり冷たくなっている。このままじゃ風邪ひいちゃう。
荷物を適当に放り投げ、お風呂場に直行する。
帰る途中で操作しておいたので、そう間を置かずにお風呂は沸くはずだ。
それまではシャワーで我慢しようと思い、濡れた服をさっさと脱いでカゴに突っ込む。
脱衣所も温まり切ってなくて、ヒュゥッと冷たい空気が肌に触れて体が震える。
早く熱いシャワーを浴びたいなぁ…と思って下着に手をかけた、その瞬間。
ガラッ!
「きゃっ」
「えっ」
突然脱衣所の扉が開き、アクアが飛び込んできた。思わず小さく悲鳴をあげてしまう。
アクアは半裸の私を見て一瞬硬直した後、
「ごめん、アイ!」
そう言って、すぐに出ていこうとするけれど。
「待って!」
私はアクアの手を掴んでそれを止める。
「ご、ごめんって! 明かりついてないから誰もいないと思ったんだ、怒るなら後で聞くから!」
「そうじゃないよ! アクア、お風呂入りに来たんでしょ?」
「そうだけど、でもアイが入ってるなら俺はいいから!」
「ダメだよ! アクアもそんなに濡れてるじゃない!」
よく見れば、アクアの服も髪もすっかり濡れている。アクアも私と同じように、通り雨に降られてしまったようだ。
「アクアだってそのままじゃ風邪ひいちゃうよ。ね、一緒に入ろう?」
「そ、そうはいかないだろ! 俺は後からでいい、それよりアイが寒いだろ!?」
確かに寒い。正直、さっきから震えがきている。
「やだ! アクアが入らないなら私も入らない!」
でも、アクアだって寒いはずなのだ。アクアに風邪をひかせるなんて、母としてあってはならない。
「わがまま言わないで、早く入ってくれよ!」
「イヤ! アクアだって寒いのに、私だけなんてイヤだよ! いいじゃない、家族なんだし!」
家族。そう、私とアクアは家族なんだから。
だから、家族が体を冷やして風邪をひくのを黙って見てなんていられないのだ。
「…っ! わかった! 俺も入るから、先に入っててくれ!」
どうしても引かない私に業を煮やしたのか、とうとうアクアが折れた。
それを聞いて、掴んでいた手を離す。
「ホント? 嘘つかないでね?」
「ああ、嘘じゃない。ちゃんと入るから、だから早く温まってくれ」
「…わかった。待ってるからね、お願いだからね」
そう言って、私は脱衣所に戻った。
ザーーーー………
いつもより少し熱めの飛沫が体を打つ。
冷え切った肌には最初だけ少し痛いようにも感じられて、でもそれはすぐに火照るような温かさに変わる。
ようやく人心地ついたように感じられて、大きくため息を一つ。
アクアは入ってきてくれるだろうか。ううん、きっと入ってきてくれるはず。
だって、私はちょっとズルをしたから。アクアは…センセは、私のお願いを断ったことがない。
私がお願いをした以上、センセは来てくれるとわかっている。わかってて言った私はズルいけど、これもアクアのためだもん。許してね。
一頻り体が温まってから、シャワーを止める。そして、鏡に映る自分の体を見る。
…うん。大丈夫。どこもたるんでないし、肌も汚れてない、処理も完璧。女優として胸を張れる体であることを確かめる。
これなら、センセに見られても、恥ずかしくない。
嘘、恥ずかしい。めっちゃ恥ずかしい。
さっきはつい、アクアの体を心配して無理を言っちゃったけど。センセとお風呂入るのなんて、一体いつ以来だろうか。
少なくとも、アクアがセンセだってわかってからは全然一緒に入ってくれなくなった。
だから、成長したセンセの体を見るのも初めてだし、今の私の体を見られるのも初めてだ。
自分のスタイルにはもちろん自信があるけれど。でも、それがセンセの好みに合っているかどうかはわからない。
もしかしたらセンセはもっとこう、スラリと背が高いとか、例えばミヤコさんみたいなグラマラスなのが好みだったりするのだろうか。
昔に比べればだいぶ肉付きは良くなっているとは思うけれど…それでも、届かないものは届かない。
でも、まぁ大丈夫だろう。きっとセンセはどんな私だって好きになってくれるよね。
とりあえず…温泉の素を取り出して、すっかり温まった浴槽に入れる。にごり湯の、中が見えなくなるやつをたっぷりと。
乳白色のお湯に体を沈めるのと、同時に。
カラリ…
「……入る、ぞ」
「う、うん」
センセが、お風呂場に入ってきた。自分が呼びこんだとはいえ、いざこうして入ってこられると緊張してしまう。
少し視界を遮る湯気の向こうに、裸のセンセがいる。ふわぁ、遠目で見ても肌キレイ…さすが、私の子だね!
私から目を逸らしながら、おずおずと入ってくるセンセ。その腰にはタオルが……あ、あれ?
「ちょっとセンセ、それはズルくない?」
「ズルくない。嘘はついてないからな」
「むぅ…」
センセってば、ちゃっかり水着を着てる。確かに、裸でなんて言わなかったけど…。遅いなぁと思ったら、もう。
水着だから肌を隠すのは最低限とはいえ、やっぱり着ているのと着ていないのとでは、なんというか心持ちが全然違う。
こうなると私だけが裸になっていることになる。うわぁ、なんか凄く恥ずかしくなってきちゃった。
真っ白いお湯の中で一人でモジモジしている私を余所に、センセはシャワーで体を洗いはじめる。
無防備な背中。むー、私は恥ずかしい思いしてるのに。…そうだ!
「センセ、背中流してあげるね!」
浴槽から上がり、センセの後ろに回り込む。
「うぇっ!? い、いやいいから!」
慌ててこちらを向いて、すぐにまた前を向いちゃうセンセ。もう、見たっていいのに。
「いいじゃない、我が子の成長を感じさせてよ。それともセンセが私の背中流してくれる?」
「いやいや、それは…」
「どっちがいい?」
「ど、どっちって……」
少しセンセは悩んでたけど、結局ため息をついて、私に背中を向けた。
そんな哀愁漂わせなくてもいいじゃない? なんて思いながら、私はボディソープをしみ込ませたスポンジをセンセの背中に当てる。
「どう? センセ、痛くない?」
「ああ、大丈夫…」
ゴシゴシとセンセの背中をこすり上げる。
こうやって触れてみると、やっぱり男の人の体だなぁって思う。
そんなに鍛えてる風でもないのに、私やルビーのと違って硬さを感じさせる体。
これからまだまだ、しっかりした体になっていくんだよね。元気に育ってくれたことが本当に嬉しく思える。
「そういえばセンセ、小さい頃からお風呂一緒に入っても目つぶってたり、逸らしたりしてたよね」
「…そりゃな、さすがに見る訳にはいかなかったし」
「見たっていいのに。っていうか、センセだったら見て欲しかったのに」
「あのな…」
「あ、それともあの頃の私じゃ魅力なかった?」
あの頃は今よりずっと肉付きも悪くて、あちこち細かったし薄かったし。
「そんなことはないぞ」
「ふ~ん。じゃあセンセは、あの頃の私と今の私、どっちが好き?」
「どっちなんてないよ。いつのアイだって、俺はずっと好きだ」
「……ずるいなぁ、センセは」
ずるい。ホント、ずるい。そうやってすぐに、私を幸せにさせてくれちゃう。
むずむずする気持ちが、ふわぁって胸の中から湧き出てくる。それは、お風呂とは違う形で私を温かくさせてくれる。
「~~♪」
ついつい、歌なんて口ずさんでみちゃったりして。
どう? 元アイドルの歌声を聞きながら背中流して貰えるなんて、こんなのセンセだけの特別サービスだよ?
あ、センセがすっごいニヤついてる。ふふふ、サービスのし甲斐があるなぁ。
「ア・ナ・タのアイドル~♪」
いい感じにノッてきたところで、シャワーでセンセの体の泡を流して。
「サインはB♪」
チュッ☆
決めゼリフのところで、センセにギュッと抱き着いて、背中にキスをした。
「!! ア、アイ!!」
わ、センセすっごい反応。ビクンって音が聞こえそうなくらい驚いてる。
「ふふ、かーわいい☆」
「勘弁してくれ…心臓がもたない…」
センセ、顔真っ赤。お風呂に入る前からのぼせてるみたい。
私に恥ずかしい思いさせたんだから、これくらいのお返しはしてもいいよね?
「ふ~~……」
体もキレイになって、改めて浴槽に体を沈める。
じわぁっと温かさが体の奥までしみ込んでくるような感覚。やっぱり最高だよねぇ…。ね、センセ?
「こら、あまり体を押し付けるんじゃない」
「しょーがないじゃん、狭いんだから、しょーがない」
部屋を決める時にそれなりにこだわったお風呂は結構広めだけど、私とアクアの二人となるとさすがに狭い。
ルビーとは時々一緒に入ってるんだけどね。やっぱり違うんだなぁ。
だから今は、センセの膝の間に私が入って、後ろから抱きかかえられるような感じで入ってる。
「ふふっ、気持ちいいねセンセ。また一緒に入ろう?」
「ダメだ。今回が特別なだけだ、もうしないぞ」
「えー、いじわる。センセの温もりのないお風呂なんて寂しくなっちゃうなー」
「ああもう、だから体を押し付けるなって…」
そう言いながら、センセもお風呂の中では力を抜いてリラックスしてる。
体が温まると心も緩やかになるのかな? さっきはあんなに緊張してたのにね。
背中に感じるセンセの温もり。センセに全身包まれてるみたいで、ちょっと恥ずかしくて、とっても幸せ。
「あーあ、アクアもすっかり大きくなっちゃったねぇ。もうすぐ18歳だもんね」
「…そうだよな。早いんだか、遅いんだか」
アクアもルビーも、もうすぐ18歳を迎える。ホント、こんな時が来るなんて思わなかったなぁ。
「昔は私が抱いて入ってたのにな。これじゃ私の方が赤ちゃんみたい」
「怖いこと言わないでくれ」
「あ、でもそうなるとセンセがパパになるのかな。パパー、アイは可愛いでちゅかー?」
「………や、めろ」
あっ、センセが照れてる。これは効果てきめん? ふむふむ、いい事知ったぞ。どんなセンセでも、私は好きだからね!
「あまりからかうとな…」
「はいはい、わかってまーす」
ちょっとセンセの声が低くなる。でも、これは怒るフリ。センセが私やルビーに本当に怒った事なんて一度もない。
私も聞くフリをする。これが、センセなりの一線だってことがわかってるから。
「…でも、ね」
だけど。いつもは手前で止まってるその一線に、今日はちょっとだけ踏み込む。踏み越えない程度に、少しだけ。
「センセとだったら、いつだって何だって一緒にしたいよ。これは、嘘じゃない。
またお風呂も入りたいし、一緒に寝るのだってしたいし。キスだって、…エッチなことだって、本当はしたいの」
「…アイ」
「センセが私のこと、本当に愛してくれてるのはわかってる。でも、こうやって一線引いてることもわかってる。
私もそこは越えるつもりはないよ。センセが嫌なことはしたいなんて思わない。
ただ…私も、いつまでも若くはないから、さ」
アクアとルビーが歳を取るのなら、当然私も同じように歳を取る。こればっかりは、いくら私でもどうしようもないことだ。
16で双子を産むなんて無茶をした私も、20になり、30になり。もう、アラフォーなんて呼ばれる域に入り始めている。
今の自分が若い頃の自分に劣っているとは思わない。むしろ、今の方があの頃の自分よりも可愛く、綺麗になれている自信はある。
けれど、それも"今"の話。これから先、自分がもっと綺麗になっていけるかはわからない。
それに…何よりも。ルビーがいるのだ。
ルビー。私の大事なもう一人の子。そして、その心は私よりも前からセンセの事が好きなさりなちゃん。
私の子だけあって、ルビーは私に似てどんどん可愛くなっている。あ、もちろん生まれた瞬間から可愛かったのは言うまでもないけど。
きっと今のルビーと私を並べてみても、ルビーは決して私に劣りはしないだろう。多分、51対49で私が勝つくらい。
そしてルビーはこれからもっと綺麗になっていく。きっと私よりも。そしてその時、私は…。
「今はセンセは私にそういう気持ちにならないかもしれないけど。もしもいつか、センセもそういう気持ちになってくれた時。
その時に、自分に自信が持てない私になってたら…ちょっと嫌だなぁって、そんなことも思っちゃうの」
センセはいつだって、どんな私だって愛してくれる。その確信はある。
でも、これからセンセはどんどん素敵な男の人になっていくだろう。
その時に、釣り合う私で居たいという、女の私としてのプライドもあるのだ。だから…"その時"が来るのなら、それは私が綺麗な時がいいとは、思っている。
「アイ、俺は」
「センセを困らせるつもりはないの。これはただの、私の勝手な思いだから。
私は、アクアのお母さんだから…お母さんにはそういう気持ちになれないっていうのもわかるんだ。
だから、本当にセンセの思う通りにして欲しいの。私のことじゃなくて、センセが自分の気持ちで考えて欲しいんだ」
あーあ、カッコ悪いなぁ、私。
こんなこと言ったら、またセンセを困らせちゃうってわかってるのに。
でもね、センセ。
本当に、好きなんだ。大好きなの。大好きだよ、センセ。
想うことだけ、願うことだけ、それだけはどうか、許して欲しいと思う。
「………」
私の背中で、じっと黙ってるセンセ。
どんな顔してるんだろう。きっと、困った顔だよね。私がさせてるんだよね。申し訳なくて、顔を合わせられない。
そのまま、二人とも黙ったままで。ポタ、ポタと雫が湯船に落ちる音だけが響く。
沈黙を破ったのは、センセの方だった。
「…先に謝る」
「えっ?」
「ごめん、アイ」
そう言って、私の手を掴むセンセ。
どうしたのって思っていると、センセは真っ白なお湯の中で、私の手を私の背中…ううん、お尻の方に回していく。
そして、私の手が何かに触れる。
…わ、固っ……えっ、あっ、これ、って……?
「…セ、ンセ?」
今、センセの手に導かれて私の手が触れたもの。これって、その、センセの…。
何を言ったらいいのかわからないうちに、手が離される。
でも、今の感触が忘れられない。それが何だったのかを考えると、急に顔が熱くなってきた。
「ねえ、センセ、今のって、きゃっ」
言葉を探しているうちに、後ろからセンセに抱きしめられる。
「…ごめん、こんなことして。でも、アイにわかって欲しくて。
俺が…俺だって、そういう気持ちがあるってこと」
"そういう気持ち"。今までの会話と、さっきの感触から考えて、それはやっぱり…。
「俺だって、アイが欲しい。こうやってもっと触れたいし、その…そういうことだって、したいんだ。いつも、思ってる」
「う、うん」
「でも…今、アイを抱いちゃったら、きっと俺は止まれない。我慢できない。いつだって、毎日だって、アイが欲しくてたまらなくなる」
「…わ、私は、…それでも…」
「けど、俺は。アクアはまだ未成年だ。何の責任も取れない。アイを、こんなに大切なアイを何一つ守れない。こんな状態で、アイに溺れる訳にはいかないんだ」
「センセ…」
「だからもう少しだけ。俺が大人になるまで、もう少しだけ…待っていてくれないか。俺が、一人の人間としてアイと並べるまで、もう少しだけ」
私を強く抱いたままで、センセが言う。その声は辛そうで、申し訳なさそうで。
…ドキンドキンと、心臓の音が耳に届く。これはセンセの心臓かな。それとも…私の心臓かな。
体が熱い。お風呂に入ってるからじゃない。…これは、これは私の体の奥から来る、熱だ。
「………いいの?」
「アイ?」
ゆっくりと、センセの方へ振り返る。
息が触れるような距離に、センセの赤く染まった顔があった。きっと私も、同じように真っ赤になってると思う。
「私、待ってていいの? 思ってていいの?
…センセに、愛してもらえるって、期待してても、いいの?」
「ああ。約束する」
「…嘘じゃない?」
返事は、言葉じゃなくて。唇を塞がれることで、返された。
私からねだるんじゃなくて、センセの方からキスをしてくれるのは初めて。それは、少しのぼせた私の頭には、あまりにも強烈で。
「―――ん――っ―――」
ぶるりと、体が震えた。私の奥の奥から、悦びが溢れてくる。
すっと、離されるセンセの唇。それがとてもとても淋しくて、でも、全身の力が抜けて蕩けてしまった私には、それを追うこともできなくて。
そのまま湯船の縁にもたれかかっていると、センセが湯船から立ち上がった。
「俺、先に出るよ」
「…うん」
「無茶してごめん。でも、今の言葉は嘘じゃないから」
「…うん」
「……じゃあ」
「…うん」
生返事しか返せない。まだ、夢見心地から抜けられなれていないまま。
それでも、これだけは言いたくて。
「センセ」
扉に手をかけたままで、センセが動きを止める。
「私、待ってるね」
「…ああ」
それだけ言って、センセはお風呂場を後にした。
一人になったお風呂の中で、私は天井を見つめて、ぼーっとしていた。
まだ、ふわふわしたままの頭は戻り切れていない。
夢だったのかな。ううん、夢じゃない。重ねた唇の熱さは、はっきりと残っている。
つまり、さっきの言葉も夢じゃない。
「……ふ、ふふふ、うふふふっ」
待ってていいんだ。その日は、来るんだ。
センセに会ったあの日から、センセに恋してるって気づいたあの日から、センセにまた会えたあの日から。
ずっと夢に見ていたその日が…もうすぐ、来るんだ。
どうしよう。嬉しい。ちょっと恥ずかしいけど、そんなの気にならないくらい嬉しい。心臓が飛び出てしまいそう。
顔が戻らない。鏡見られない、きっと気持ち悪いくらいニヤけてる。
「あー、もー、んーーー!!!」
言葉にならない変なうめき声を上げながら、お湯をバシャバシャ叩く私。
胸の中で、体の奥で、膨れ上がった想いをどうしたらいいのか、自分でも全然わからない。
もう完全に、火がついちゃってる。もうすぐ来るその日が、心から待ち遠しくなってる。
大丈夫かな。待てるかな、私。うん、待てる。だってセンセが待っててくれって言ったんだもん。
センセのためだから、我慢できるよ。そしてね、そしてその日が来たらね…。
「……!!!!」
変な声を上げそうになって、思わずお湯の中に顔を突っ込む。
ブクブクと、奇声になるところだった息が泡となって消えていく。
うーん、私大丈夫かな。気を付けてないと変な行動ばかりしちゃいそう。
でも、でも、しょうがないじゃん。だって、だってさぁ…。ふふふ…。
頭のネジが綺麗に飛んだ私は、結局そのままのぼせてしまって。
ちょうど帰宅したルビーに発見され、助けられたのだった。
「もう、どうしたのママ? お風呂でのぼせるなんて…」
「うぅ…ごめんねルビー…うふ、ふふふ…」
「…………せんせ?」
(ギクッ)
「何があったのか、
「聞かせてくれるよね?☆
「せーんせ?★