無自覚に視えすぎる潔と知覚している凪
(ライバルリーで潔と凪が2人だった頃)
旅行先でも現地の絶品グルメを食べるのを面倒臭がって夕飯をお手軽栄養ゼリーで済ませそうな男ランキングがあれば1位は確実な男、凪誠士郎。
パートナーである御影玲王には俺の宝物と溺愛され、それ以外の者達にも人間性はともかく天才性は保証されている彼だが、実は自由であけすけな彼にも1つだけ秘密があった。
というのも、凪は母親のお腹の中にいる時に母胎ごと自分もUFOに誘拐されてそこで羊水の中に浮かんだまま遠隔手術を受けたのだ。
恐らくそんな記憶力を生まれ持ったというよりは、当時施術されたその何かの影響で脳味噌が発達してしまったのだろう。
それからは自分が臍の緒を経由して酸素や栄養を受け取っていたこと、皮と肉の向こうからエコーで性別を確認されたこと、狭苦しい産道を経由してこの世に生まれ落ちたこと、とりあえず息を吸うために自らの意思で泣いたことまでしっかり覚えていた。
別に己の立場に関して嫌悪は無いが、これは伏せておかないと最悪モルモットとして国に体弄られたりするなと思ったので誰にも出生を明かしたことは無い。
母も記憶操作を受けたのかUFOに連れ込まれたことは忘れているみたいなので、宇宙人が干渉してこない限りは誰も自分がアブダクションの被害者だとは知らない。……筈だった。
「そういや凪。お前体に隕石とか埋めてる?」
「…………は?」
「違う? じゃあUFOに誘拐されたとか? 昔見た流星群と似たようなオーラなんだよな。だったら宇宙由来のもんだと思うんだけど」
寝巻きからボディスーツに着替えながら、明日の天気のような軽々しさで、そのつもりもなく急所に切り込んでくる。
潔世一。コートの外では大人しい男だと思っていたが、それは間違いだったらしい。
「視えてる、ってどういうコト?」
「? どういうも何も、普通に視えてんだよ。視力に異常ねぇし」
自らの目が極端に良い自覚が無いのか、こいつ変なコト言ってるなぁ、みたいな眼差しを向けてくる姿に苛立ちが込み上げる。
馬鹿言え。そこまで視えることが普通であるものか。今までの人生で幽霊が見えるという人間にならいくらか出会ったこともあるが、そんな彼ら彼女らにだって、自分と宇宙人との縁がバレたこと等無かったのに。
こいつの目は異常だ。