点旗さんが金色旅程に念押し(※脅し)する話

点旗さんが金色旅程に念押し(※脅し)する話






ラブリーシップ「地方から地道に宝塚記念への道を歩もうかなあって」

ムーランドール「中央にいれば自動的に宝塚への道にエスコートされるんだけどねー、あーあ、世知辛い世の中。」

ダイメイコリーダ「中距離捨てて短距離いこっかな......いやでも折角2000のG1で2着になったのにいささか勿体ない気も.....でももうおれはあの頃のおれじゃないし....いやでも.....うーむ、難儀.....。」

ミラクルフラッグ「この世界を栗毛で埋め尽くしたい。」






「私の娘や孫に金輪際、近づかないで頂けるかしら。」

金色がかった美しい芦毛。170cmは有にある背丈をピンと伸ばして、少しも姿勢を崩さず座していたその姿は、ある種の迫力があった。

「.........へ?」

露骨すぎる程に自分を嫌っている彼女、ポイントフラッグ。名門「下総御料牧場」の由緒正しい血統を継ぐ彼女は、見るからに上品なお嬢様という感じだった。純真無垢さは感じられないが、威圧感や傲慢なそれがある訳でもない。

ジッと見つめられ、思わずステイゴールドはすごんだ。だが、彼にもG1馬なりの誇りがある。理由も聞かずにそう易々とYESと答える訳には行かないのだ。

「な、なんでだよ?俺はアンタに、アンタの孫にも娘にも変な事をしでかした覚えはないぞ?!理由を説明してくれなきゃ、どれだけアンタが俺にすごもうが、縦にも横にも首は振らんぞ。」

「私があなたをすごんでいる?随分と人聞きの悪い.....。でも、そうね......というのも、近頃貴方は性的な目的で利用するラブホテルなるものを経営していらっしゃると聞き及んでいるわ。」

「は..........、な、なんのことだか......」

「とぼけなくて結構。私は怒っている訳ではないの。そもそもラブホテルというのは私には縁遠い場所ですから.....。」

「そりゃアンタみたいなお嬢様育ちの人ならラブホなんか行ってヤらなくてもホテルなり旅館なり貸切れるだろうからな....」

彼女が縁遠い場所というのならば余計話の本筋が分からない。何故わざわざ縁遠い世界の話をこちらに持ちだして、しかも「孫や娘達に近づかないで欲しい」というのだ?話せば話す程、ポイントフラッグという人間が分からなくなってくる。

つとめて優雅にお茶を啜る彼女の顔を、頬杖をついて眺める。所作がどことなく荒々しいオリエンタルアートとは対極的な存在だ。

「旅館?ホテル?利用者に迷惑をかける事なんてしたくない主義なの。それに、そういった事をするならばこの屋敷の___」

白く嫋やかな長い指が窓の外の、離れの様な和風建築の家を指差す。一軒家とさして変わらない広さだが、距離があるせいで小さく見える。

「__あそこの離れでできますので。シップは夜な夜なあそこに友人を連れ込んでいるんです。あそこは部屋が9部屋あるのですが、うちリビングと風呂場を除いた7部屋は全て寝室ですのよ。蚊帳や御簾、菜種油の行燈が灯せる和室だったり、豪華絢爛なフィレンツェ風の天蓋付きベッドだったり....色々なシチュエーションで楽しめてばっちぐう!とお母様は仰っていたんですの。」

「えっ、あれって離れ.....?別荘とかではなく?....っていうか、下手したらうちのラブホよりバリエーション豊かじゃねえか....」

「話がそれましたわ。本題は.....いえ、単刀直入に言わせて頂くわ。.....私の可愛い孫娘たちが、貴方がラブホテルとやらを経営しているのを知ってしまったのよ。まだ幼い事もあって、どういう事をする場かは理解していないのだけど....。どうも、ラブホテルという響きが気に入ったのか、少女の夢がつまったテーマーパークか何かだと勘違いして「ムー、ラブホテルに行きたい!」「ラブもラブホテルにいきたい!ラブだけに!」「あたちおほんよむ!おばあたまおほんよんで!」と......。」

「おっ、おおぅ.......その...心中お察しします......最後のは関係ないのでは?」

「お察しします......?よくもそのような言葉が口に出来たわね......その産まれ備わった天性の無神経さだけは褒めて差し上げるわ.......。」

地雷を踏んだのか、彼女の表情は毎秒事に険しくなっていく。怒りをむき出しにはせずとも、ひっそりと怒り狂う般若の様な形相だった。

「あっ、あっ......ああ、分かった!!分かったよ!!金輪際、俺はお前....じゃない、アンタ.....でもない、貴女の娘と孫たちには近づかない!けど.....けど、連絡するぐらいなら別にいいだろ?」

「...............まあ、そうね。貴方のそのラブホテルの件を一切明かさないなら、連絡程度ならばよしとしましょう。けど、仮に約束を破った暁には.......」

「暁には............どひゃっ!?」

突然立ち上がったポイントフラッグが、無理矢理ステイの尻を持って体を浮かせ、中指を穴の位置にあてがって耳元で囁いた。

「貴方のホテルの利用客がしている様に、貴方の「ここ」もいじって差し上げますわ。......よろしくって?」

「.........!!!!!!よ、よろ、よろしぃです......あの、ほんとにマジで勘弁してください.......俺別に拡張してる訳じゃ.......」

「知ってるわ。だからよ。」

「はひぇ............」

ストンと解放され、椅子から崩れ落ちてへなへなと地べたに座り込む。下から見上げたポイントフラッグの顔は、恐ろしく整っていた。


「.......さて、話も済んだ事ですし、いい加減三日三晩あそこで寝食をしているシップたちを叱りにいかなければ。」

「......え?シップが?」

「ええ。.....友人らを連れ込んで昼も夜も姦しく......。それはそれはお元気に。けど、アイル君(※アイルハヴアナザー)までも彼の元にいるのはどうにも許せないので....。ミラクル(※ミラクルフラッグ)とキセキ(※ポイントキセキ)からも「私のアイルさん返してよ!」と苦情が入っていて......。」

「あの栗毛の坊ちゃん、アンタのお気に入りなのかよ.....。」

「さ、貴方もついてらっしゃい。」

「へーへー.....。」

彼女やその娘達に気に入られているアイルハヴアナザーの得体が気になるが、ひとまずは面白いもの見たさにポイントフラッグについて行く事にした。

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