炎は嵐を越えて来たる
ラウンド・ナイツ、よもやここまで力をつけていたか───!
眷属による波状攻撃で疲弊させ、手の内を見た上で確実に仕留めようとした時にまさかアヴィケブロンの巨大兵器──ラウンド・キャメロットが届くとは。
アーサー、ガヴェイン、モードレッドの宝具によって怯んでしまったせいで搭乗させる隙を作ってしまった。
これによって戦況は互角に。しかもある程度手の内を見せてしまったが故に時折見切られ、ラウンド・ナイツの攻撃は初見であるため読めずに傷を増やすことも。
……総帥の言葉は正しかった。
確実に仕留めるなら最初から眷属と共に前に出れば良かった。
だがそれを言っても後の祭り。テオドリックは己の自覚無き傲慢を反省し、ここを死に場所と定めた。
誰一人としてその存在を拒み、その力しか望まれなかった嵐の王を受け入れてくれたアヴェスターのために土産を送ろう。
(総帥。命令を守れずに散ることを許せ)
ラウンド・キャメロットから放たれようとする巨大光線を前に覚悟を決めたテオドリック。
「やっちまいなさい!ゴルゴーン!」
だが、それを阻んだ連中がいた。
真横から放たれた黒い光線を受けて倒れるラウンド・キャメロットをよそに驚愕する。
「貴様ら、何故!?」
テオドリックを守ったのは包帯が巻かれ、まだ傷が完治していない巨大化したゴルゴーンだった。
いや彼女だけでない。
ゴルゴーンの肩にジャンヌ、サリエリ、ニトクリス、ブリトマート、アシュタレトが乗っていた。
全員がゴルゴーンと同じように包帯やらギプスやら付けており、ほとんど重傷者と変わりない。
「なんでって決まってるじゃない。総帥の命令よ!それに嵐の王だかなんだか知らないけど仲間を見殺しにするわけないじゃない!
あと!言っておきますけど!──全員来てるから」
「……ごめんね、テオドリック。でも君が悪いからね?」
遠くから映る激闘を、ゴルゴーンを確認した総帥ヴェルグ・ウィスタリアは虚空に向かって喋る。
「俺は玉砕を命じた覚えはないよ」
しばらくすると巨大な雷撃が戦場に降ったと同時に現れた神使。間違いなくその主も、そこに乗っている彼らもボロボロだろうけど。
だが役者は揃った。
「俺たちの恩讐を甘く見たら駄目だよ、マシュ?」