灼熱と後悔のバンテリン
「なるほど、ギャルさんぽで行き先をカラオケにするとスカートが捲れるのか…後で試すか」
ゴールデンウィークだと言うのに外出もせずウマカテを見ていた俺。
カテ一覧を眺めていた時に一つのスレが目に入った。
『お前ら助けて!!!!』
何やら伸びていたので見てみたところ、不注意なスレ主が保湿クリームと間違ってバンテリンクリームを股間に塗って悶絶しているバカスレだった。
「ヒー、ヒー……腹いってぇ…。>>1はまだしも>>32はバカすぎだろ!」
と呟いてはみたが、ちょっとだけ気になってしまった。
薬箱を探すと運がいいのか悪いのか、バンテリンクリームが目についた。
流石にここまで騒ぐほどのものではないのではないだろうか?
『どうせ今日は外に出る予定もないし試しちまえ』
そんな悪魔の囁きに流され、ついついバンテリンクリームを手に取った。
最初は極微量をつけてみたものの、そこまで変化はなく、
「こんなもんか」
調子に乗ってたっぷりとクリームを追加した。これがまずかった。
「お゛ぁ゛っ゛!?」
眼の前に火花が飛ぶような感覚に、チケゾーのように濁音混じりの声が漏れる。
「あ゛あ゛ぁ゛っ゛!く゛あ゛ぁ゛ぁ゛…」
アパートの隣の部屋から壁ドンされたが、デリケートゾーンを焼畑農業されてしまっては声を止めることができない。
転げ回る俺の視界に、見覚えのない物体が入った。
『ウマ娘になれる代わりにあにまん民と強制的にエッチさせられるボタン』
ここ数週間話題になっている例のボタンを目にして、俺は閃いた。
(このボタンを押せばバンテリン地獄から逃れられるのでは?)
正直ウマ娘化にはちょっとだけ興味があるし、今の責め苦から逃れられるなら押すしかない!
そして俺はボタンに手を伸ばした……
「こいつらバカだなぁ……」
うっかり股間にバンテリンを塗る奴、何を思ったかそれを真似る奴、「このスレ結構シコれる」とか言い出す奴…
鬼ドッヂイベントのポイント稼ぎを進めながらあまりにもアホすぎるスレを見ていたオレ。
家にあったバンテリンを探して来て注意事項を読み、やはりバカすぎると再認識していると、背後から夜中の工事現場のような強い光を感じ、声も出せず振り返ると…
「あ゛ぁ゛ぁ゛な゛ん゛でぇ゛ぇ゛!な゛ん゛でな゛お゛っ゛て゛な゛い゛の゛お゛ぉ゛ぉ゛!!」
トレセン学園の制服を着たウマ娘がのた打ち回っていた。
金髪ロングにバンテリンカラーな緑のカチューシャ、胸も大きいし好みのタイプだった。絶叫しながら悶えてなければ。
うわー、スカートの中パンツはいてないよ……。
本来なら眼福なはずなんだが状況が酷すぎてそんな気分にはならなかった。
この時、オレの脳内にフラッシュバックしたのは、さっき見たスレの「パンツ履けなくなりました」の一文。
まさか。
『ウマ娘になれる代わりにあにまん民と強制的にエッチさせられるボタン』
こいつバンテリン塗った状態であのボタン押したのか!?
「た゛し゛ゅ゛け゛て゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛」
とりあえずこのまま騒がれても近所迷惑なので、スレのレスを参考にローションでバンテリンを洗い流してあげた。
女性のデリケートゾーンに初めて触れる機会が、こんなシチュエーションだなんて。もう笑うしかなかった。
「ふぅ…ふぅ…とりあえずありがとうと言いたいところだけど、なんでそんなに笑ってるのよ!」
一通りバンテリンを落としたあと、感謝していると言いながらも睨んでくる彼女。
「いやだってさぁ…ブッ、本当に股間にバンテリン塗るバカなんて…クッ、見るとは思わなかったから……」
その先は、もう笑いにしかならなかった。
「そこまで笑わなくてもいいでしょ!?もうアッタマきた!!」
そう言うと彼女はバンテリンクリームを握りしめ、オレににじり寄って来る。
「おいお前、まさか…!」
「アンタも同じ目に遭えばいいのよ!!」
「おま、やめろ!」
必死に逃げようとしてもウマ娘の腕力から逃れられるはずもなく脱がされてしまう。
「ほーら、これで笑ったことを後悔しなさい!」
無造作に手に取ったバンテリンを勢いよく股間に塗られてしまい万事休す。
「やばいしぬしぬしぬ!!」
「これでわかったで…しょ…」
オレがもんどり打っていると、彼女の方にも異変が起きたようだ。
「ウソでしょ、このタイミングでボタンの副作用!?」
彼女の意思は拒絶していたようだが、本能がボタンの強制力に押されてしまっているようだ。
しかも運悪く、スカートの下は何も履いていないのである意味臨戦態勢だ。
「ちょっと待って、今は、今だけはだめぇぇぇ!!」
そんな彼女の思いも虚しく二人の体は近づいていった。
二人で悶絶しながらもできるだけ刺激しないようにゆっくりと、ローションでクリームを流しつつポリネシアンな行為を終えた頃、時刻はもう夕方になっていた。
ゴールデンウィークということもあり隣の部屋の住民は外出していたようで、怒鳴り込まれなかったのが救いだったかもしれない。
「ちゃんと罰はあったのね……」
彼女の第一声はそれだった。
「頭の中で『そうだバ鹿。お前が、塗った』とか『これは、お前が塗ったバンテリンだろ』みたいなセリフが頭の中をぐるぐるしてたわ……衝動的に塗っちゃってごめんなさい……」
「いや……オレも笑いを我慢できなくて悪かった……」
「申し訳ないついでに頼みなんだけど、行くあてもないし住ませてもらえないかしら?」
急にしおらしくなった彼女が急に可愛らしく思えてしまったオレは、
「お互いあんな姿を見せ合っちゃったんだし、今更かしこまらなくてもいいよ」
と受け入れることにした。
「ありがとう…お礼ってわけじゃないけど、もう1回する?」
「そうしようか」
こうして、1回目の灼熱の記憶を洗い流すために2回戦が始まったのだった。