瀞霊廷にバカが一人
1
「はぐれてしまいましたわね...」
動乱の中の瀞霊廷にポツンと一人 虎屋翼
周りには十一番隊の隊士と思われる者が複数いるが霊圧や様子を見るに自分を捕まえる度量があるようには思えない
「まぁ適当に逃げ回りましょうか どこかでみんなとも合流しましょう」
お気にの木の棒をカランと鳴らして突き当りまで全速力で突き進んでいく
木の棒を鳴らすたびに気付かれはするが速度差があり過ぎて追い付かれることはない
そんな状態で数時間が過ぎた頃に声が聞こえた
「くそっ!追い付けねぇ!」
「しかしあの子供...少しずつだが朽木ルキアってヤツが幽閉されてる所に近づいてねぇか?」
「すでに場所を把握してるのか...?いやだったら木の棒で道は決めてねぇだろ」
不可解な行動を取り続けたからだろうか、隊士たちが疑問を口にした。
「...つまりルキアさんはこちらの方向におおよそ真っすぐ行けば辿りつけそうですわね 牢か何かでしょうしたぶんデカい建物なんでしょう たぶん!」
翼は隊士たちを置き去りにして屋根伝いに移動を始めた

「こりゃまた難儀な立ち位置の人が攻め込んできたねぇ」
僕が独り言をいっていると七緒ちゃんが質問を投げかけてきた
「それは...夜一元隊長の事ですか?それとも他の旅禍でしょうか」
「虎屋家...百年無いくらい前に護廷(うち)と一回やりあっちゃってるのよ こっちの不手際(涅隊長)でね」
「更に言えば過去に死神の撃ち漏らしによる被害を食い止めるために虎屋家に犠牲を強いてしまった事もあって相当仲が悪いんだよ 藍染君がかなり頑張って対処してくれたおかげで最近は少しずつだけど軟化はしたんだけどね」
今はその藍染君周りが随分ときな臭くなっているのは置いておいて。まさに今、目の前に現れた少女...アッ違う少年...でもないな まぁ虎屋家の者に声をかける
「どうかな一杯?」
すごく殺気立った目をしてるねぇ...怖い怖い。虎屋家って基本的に容赦とかしないし狡猾だから敵に回したくないんだよねぇ、涅隊長に泡を喰わせるくらいだから何をしてくるかわからない。
「いいですわよ 飲みましょうか 八番隊隊長の"京楽秋水さん" 副隊長の"伊勢七緒さん"もご一緒にどうですか?」
うん!自己紹介もしてないのにこっちのこと知ってるねぇ!藍染君頑張ってたけど虎屋家の仮想敵死神のままなんじゃないかなコレ...。
「あはは...まぁそう畏まらずに 日本酒は大丈夫?」
「まぁ多少は...こちらは現世のハイボールがありますわ 懐に入れていたので温くなっていますけれど」
「わざわざ現世から持ってくるとは...」
七緒ちゃんが呆れ半分脅威半分で足を止めているので氷を持ってきてもらうついでに離れてもらう。
「なるほどねぇ 今この状況では勝てないって判断をしたわけだ 七緒ちゃんを誘ったのは人質にして僕を恐喝したいからかい?」
「ご想像にお任せしますわ まぁ仮にそうしたとしても...貴方の実力なら人質を守り抜いて私を殺せるでしょうけど」
「過大評価だよ...まぁ呑もうか」
互いの杯に酒を注ぐ...お互いに刃を帯刀したままで
……………
「キュウ...」
「...狸寝入りじゃないよね?はぁ...生きた心地がしなかったよ」
何杯か飲んだところで虎屋家の子は意識を手放し頭から床に突っ込んだ
「でもまだ仕事は終わりじゃないんだよねぇ...」
霊圧を探ればもう一人旅禍と思しき者がこちらに向かっている
「ごめん七緒ちゃん その子介抱してあげて♥」
「わかりました」
「あっ ついでに今度は登場時にお花撒いていい感じにしたいからちょっと倉庫からお花を...」
「真面目にやってください隊長」