激録・S-Force密着24時(バレンタイン編)

激録・S-Force密着24時(バレンタイン編)


裏通りの奥深く、廃墟となったビルの1フロアにて乱破小夜丸は一人、自分を呼び出した人物が現れるのを待っていた。


「…………」


視界に映るのは古びたコンクリートの壁とひび割れだらけの床だけ。

おおよそ誰かが使っている痕跡というものが感じられない部屋だった。


(なぜ、I:Pマスカレーナさんは私をこんな場所に…?)


小夜丸は懐から先日届いた便箋を取り出して確認する。


『親愛なる S-Forceの乱破小夜丸ちゃんへ♡


ハッピーバレンタイン!

って事でプレゼントを用意したから下記の場所に一人で来てね♡


I:Pマスカレーナより』


手紙には地図と一緒に住所も書かれていた。

どうやらこの場所で間違いないらしい。

しかし、なぜこの場所なのか? なぜ彼女を捕らえようとしている私を呼び出したのか?

小夜丸の頭に浮かぶ疑問は尽きないが彼女を捕らえるチャンスでも有るため、こうして罠かもしれないと思いながらもここまでやって来たのだ。


「あははっ、ホントに1人で来てくれたんだ?アンタってホント生真面目だよね~♪」

「私1人で十分です!今日こそ貴方を捕らえて……っ⁉︎」


背後からの声に振り返った小夜丸だったがその言葉を言い終える前に驚愕で言葉を失ってしまう。


「な、なな、ななな、なんて格好をしてるんですかっ!」


小夜丸の視界に映り込んだのは裸にリボンを巻いただけの格好で挑発的な笑みを浮かべているマスカレーナの姿だった。


「んふふっ、似合ってる?」

「に、似合うとかそういう問題じゃないですよ!どうしてそんな恰好なんですかっ!」


思わず顔を真っ赤にして叫ぶ小夜丸に対して彼女は悪戯っぽい表情で答える。


「折角のバレンタインだし?プレゼントはア・タ・シ♡みたいな?」

「破廉恥ですよっ!」


スラリとした肢体、形の整った胸とお尻、そして引き締まった腰回り…完璧なプロポーションを誇る彼女が裸同然の格好をしている姿は非常に目の毒であった。


「とか言ってさっきから顔赤くしてチラチラアタシの身体見てるじゃん♪」

「うぐっ。」


図星を突かれた小夜丸は言葉を詰まらせる。

確かに彼女の言う通り、何度も視線が吸い寄せられてしまったのは事実であるからだ。


「こっ、これは!その…えっと……いやらしい意味じゃなくてですね……」


必死になって言い訳を始める小夜丸だがその様子は完全に自爆であり、かえって相手の嗜虐心を煽ってしまう結果となってしまった。


「ぷっ、あははっ!あ〜笑った笑った、ごめんごめん、冗談よ冗談。ホントのプレゼントはこっち。」


そう言ってマスカレーナは笑いながら後ろ手に持っていたものを小夜丸に放り投げた。


「わっ、とと……。」

突然投げられたそれをなんとかキャッチした小夜丸。

それは可愛くラッピングされた小さな箱だった。


「チョコレート?」

「そ、手紙にも書いてたでしょ?『プレゼントを用意した』って。」


マスカレーナの方に目を戻すといつの間にかいつもの格好に戻っており、先ほどまでの光景が夢だったのではないだろうかという錯覚すら覚えてしまう。

まぁしかし、どうやら本当に彼女はただ贈り物を渡したかっただけらしい。


(全く……相変わらず掴めない人ですね…。)


内心で苦笑しながらも素直に感謝の言葉を告げようと口を開きかけた時だった。


「ま、でも天下のS-Forceさまはアタシの身体をご所望だったみたいだけど♡」

「なっ!?ち、違いますっ!私は別に……」

「違う?ホントかなぁ~?あんなに熱い目で見られちゃったら流石のアタシも照れちゃうんだけど?」


再びニヤニヤしながら詰め寄ってくる彼女に小夜丸は慌てて弁明をするも聞く耳持たずといった状態で揶揄われ続け、小夜丸の脳内でプツンと何かが切れた音がした。


「今日という今日は逃がしませんよ!絶対に捕まえてやりますからね!」


完全に頭に血が上った小夜丸は声を荒げて宣言する。


「へぇ、面白いじゃん。やって見せてよ。」

「言われなくても!」


小夜丸はチョコの入った箱を懐に仕舞うと、マスカレーナを捕まえるべく駆け出すのだった……。

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