激突!ヒカルvsアクア!!
「食らえ、父さん!!オーロラ!エクス!キュー…ション!!!」
氷を纏う弾丸の如きスマッシュがコートに突き刺さる。
だが…
「なんの!!!廬山、昇竜波ァァァ!!」
そのスマッシュを受け止め、龍の気を纏った玉を相手のコートへ打ち返す。
ドガァン!
ボールが刺さったとは思えない音がコートに響く。
11-11
勝負がつかず、また先に二点を制するか、の死闘が続く。
「がんばれー!お兄ちゃーん!!」
「ファイトー!ヒカルー!!」
相対する2人に対してオーディエンスである2人の声が華やかに響く。
「やるな…父さん。腰は大丈夫?もう限界じゃない?」
少年…星野アクアは不敵に笑いながら眼前の父を挑発する。
「いやいや、舞台役者舐めちゃいけないよアクア。僕らのトレーニングは伊達じゃないんだ…君こそ腕は大丈夫?僕の昇龍波を受けて立っているのは君が始めてだ」
男…カミキヒカルは挑発を受け流し息子を讃える。
それは自身の現れか…
「すぐにその口を閉じさせてやるよ…父さん!!」
コートの空気を一変させる闘気。あまりの気迫に周りの木々から鳥が飛び立っていく。
「汚いお口だね、アクア。僕の高みに君はまだまだだということを示してあげよう」
闘気に対して覇気がカミキヒカルから発っさられていく。
覇気に当てられた見物客(有馬かな、MEMちょ、黒川あかね)が息を呑む。
ーーーーあれ?ただの星野家家族旅行に同行しただけなのになんでテニヌでワンピで小宇宙(コスモ)を燃やす親子バトルを観ているのだろう?と
時は数週間前に遡る……
苺プロ
「社長、アイとアクア、ルビー、僕で纏めて有給申請して良いですか?4日ほど家族旅行に行きたくて」
「おー良いぞー。業界人向けで秘密の秘匿性も高いところ押さえといてやる。
ま、今のところ大口の案件終わってるしな。ただあっちで羽目を外して撮られんなよ?」
その日、私MEMちょは憧れのアイさんとラジオ収録から戻って来ると彼女の夫でチームメイトのルビーの父であるヒカルさんと社長が話をしているのが見えた。
話を聞く限り家族旅行のために有給を申請していた様だ。
どこに行くのか気になったので隣のアイさんに聞いてみることにした。
「旅行行かれるんですか?アイさん達」
「うん、ルビーやアクアが中学くらいまでは時間見つけて小旅行は良くしていたけど最近行けてなかったから、久しぶりにね?
社長が良いところ知ってる、て言ってくれるから行こう!てね」
「良いですねー…私もご一緒したいなぁ〜」アハハ
美形一家の家族旅行かぁ…撮れ高良さそうだし絵になりそう。
「なら来ちゃう?社長に掛け合うよ。
ねーシャチョーにヒカルー」
「は?へ…ええええ!?悪いですし急ですってばぁ!!」
私の呟きを真正面から受け止めたアイさんがスタタタと私の止める間もなく2人のもとへ行ってしまった。
ま、まぁ、こんな急な話。OK出るはずが…
「MEMちゃーん、スケジュールの都合つくから良いよ、だって!!かなちゃんやあかねちゃんにも声かけて見ようよ!」
「ええええ!!?そんな奇跡あるんですねぇ!?」
OK、出ちゃいました。
………
「まさか事務所にCM収録から帰って来たら家族旅行に同行、いつの間にか纏めてのオフがそれに置き換わっててビックリしたわよ…」
「先輩これ見よがしにため息吐いてるけど凄く嬉しそうだったのに?」
「かなちゃん、私が言ったら速攻OKしたじゃん?」
そう。かなちゃんは星野家家族旅行に同行出来ると聞いて即OKしてカレンダーに可愛らしく花丸つけていたのを私たちは見逃さない。アイさんと仲良くショッピングに行ったりして準備していたことも。
…あかねの都合も付いて彼女が笑顔で報告に来るまでは。
「おだまり!!…宮崎以来だから嬉しかったのは本当よ?だけど…なんであの女(黒川あかね)がいるのよ⁉︎苺プロじゃないじゃない!」
「カミキさんとアイさんからお誘い受けたら断る理由無いよ?こんなに同年代の子達がいるなら私の事務所も安心だし」
あかねも勝ち誇ったように笑う。
けど私は知っている。アクたん達と一緒に行けることを喜んでもいたがかなちゃんも行く、と聞いた瞬間笑顔がすごかったことを。
「ま、まあ良いわ。それより!なんであの父子はとんでもテニスバトルしてる訳?私の目がイカれてなければ分身したり、全身から気を発したりしてない?」
遂に触れてしまった。ならばかなちゃん、、
「「かなちゃん」」
「先輩」
「な、何よ…?目が怖いんだけど…?」
「「「私達はただのテニスを観ている。OK?」」」
「えー……無理があるわよ…ビックリ人間グランプリに出れるって…」
相変わらず強情なかなちゃんだ。
買収するかぁ…
「ね、ルビー。例のやつ」
「はーい。ね、先輩。私達に合わしてくれたらお兄ちゃんの幼少期から今に至るまでのオフショット中のオフショット4まい、贈呈しちゃうよ?」
「!?」「⁉︎!!」
「あかねも良い反応するねー」
目がくわってなってて女の子がしたらダメな表情してる。東ブレの鬼よりも鬼らしい表情だから怖い。
「どうする?せ・ん・ぱ・い?」
「ええ!ただの凄いテニスね!!世界狙えるわ!」
かなちゃんは陥落した。そりゃもう、綺麗な落ち方だった。
「良い顔で写真抱きしめてるねー」
「ルビーちゃん…私にも…」
「あかねちゃんにも当然あるよー」
「ルビーちゃん大好き!!」
こちらはこちらで美しき義姉妹愛…?だった。
「そういえばなんであんなテニスしてるの?」
「私が2人に『2人ともスポーツ得意そうだけどどっちが強いの?教えてくれない?』て言ったらああなった感じ
凄いよねー」
「ああ…なるほど。アイさんに良いとこ見せるために意地が暴走したんだ…男の子って変わらないんだなぁ…」
あんなクールな2人が1人の女性を巡ってキャラじゃない高笑いしたり、空中でラケットを打ち合ったりするんだ…
星野アイ…傾国の美女、ファムファタール…彼女のカリスマ力、扇動力。時代や場所が場所ならその力を振るったかもしれない。
私は1人身震いした。
「「喰らえ!!衝撃のぉぉぉぉ!」」
…早く終わらないかなー
…………
「うーーん…テニスが…かなちゃんがぁ…爆発がぁ…」
「なんか凄い夢見てるね。先輩、MEMちょの夢の中で爆発したみたいだよ?」
「なんでよ?!」
「ははは、君たちそろそろ旅館に着くからMEMちゃん起こしてね?」
「みんなで遊び尽くすよー!」
「「「「おーー!」」」」
「…ハッ!?MEMちゃんの寝言で脚本書けそう!!」
「父さん、血迷うのは舞台上だけにしてくれ」