温泉開発は計画的に

温泉開発は計画的に

カスミ、ヒナちゃんに怒られる

メグ「よ〜し!次はここだよ!」

部員A「了解!行くぞみんなー!」

「「「おーっ!」」」


今日も今日とて開発日和!

砂漠の日光であろうと、我らの温泉開発は止まる事を知らない!

砂糖を生み出す最高の砂の下には、まだ見ぬ温泉…秘湯が隠されているはず!

このアビドスに、最大最高の砂糖温泉郷を築いてみせようじゃないか!


カルテル首脳陣も見直すに違いない!


「ねーねー部長〜。こことここ掘ったら次の目的地はどこかな?」

メグが地図を見せながら尋ねて来た


カスミ「そうだな…今感じ取るから少し待っててくれ」

搭乗中の砂漠仕様ジャイアントヒール・クラッシャーから飛び降り、しゃがんで砂に手を当て目を閉じる

こうすると、私の中にある勘が砂糖温泉の場所を示してくれるのだ

「………見えてきたぞ…!」

おお、おお!この周囲の地形が手に取るように分かってくる!

間違いない、この辺りは重要ポイントだ

しかしあと一歩、正確な場所がぼやけているように見えない…

こんな時は…そう!

「メグ!ここの砂を炙ってくれ!」

「おっけ〜!甘くな〜れ!」


メグは火炎放射器で私の近くの砂を砂糖に変える

火傷しないように特殊な手袋を装着してその場の砂糖を少量口に含む

「もむもむ…」


ああ…!脳が晴れ渡る!

温泉の真理に近づいている!!

我が温泉開発部史上最高の温泉郷が瞼の裏に浮かんでいる!!!


「ヒャハハハハハハーッ!!!」

思わず高らかに笑った

瞬間、脳内地図の“ある地点”が光る

ここだ!

「メグ!地図を!」

「は〜い!」

現在地の座標から計算するに…

「ここだーッ!」

地図にペンで印をつけた




「…おや?」

待てよ

この位置、まさか…


「新アビドス商店街の西口か〜!」

「な、なるほどそうか…!」

まさかの商店街西口とは

アビドスの中心部近くにある商店街で、風紀委員も一定数目を光らせている場所じゃあないか


「あれ?部長急にどうしたの?今の作業が終わったら次はここなんだよね?」

「あ、ああそうだ…」

脳裏に浮かぶ風紀委員長の姿

彼女の目と威圧感を思い出してしまう


「ひ、ひぇ…」

思わず背筋が震えた

こんな熱気の中、寒気がしてしまう…


いいや!怖気付くわけにはいかない!

部員の手前、メグの手前、砂糖を摂取し得た勘を見逃すわけにはいかない!

我ら温泉開発部はゲヘナに居た頃も同じだったじゃあないか!

怯むな!鬼怒川カスミ!

ここで退いては部長の名が泣くぞ!


「メグ!次に商店街での作業の準備を、今のうちに済ませておくんだ!」

「りょ〜か〜い!じゃあちょっと行ってくるね〜!」


動揺を悟られぬようメグに指示を出して立ち去らせる

私はさっき焼いてもらった辺りの砂糖を口に頬張る

「もぐ、もぐ…」

不安が溶けて消えていく感覚

やはり砂糖は素晴らしい

これさえあれば、私は大丈夫だ



──────────────────────────

カスミ「よし!準備は整ったな!」

やっていた作業が終わり、私は砂漠仕様ジャイアントヒール・クラッシャーの上から部員達に呼びかける

メグ「だいじょ〜ぶ!」

部員A「いつでも行けます!」

B「次の目的地はどこですかー!?」

「次の目標は…新アビドス商店街、その西口エリアだ!行くぞーっ!」

「「「「「おーーーっ!!」」」」」


我々は目標地点へ向かった

なぁに、あのエリアは出入りする生徒もかなり少ない。大半の生徒は、東口から入って西口に出ず引き返す事が多い

開発したところで風紀委員長は咎めないだろう

中心部に近い場所ではあれど、あの辺りは実質大砂漠の一角も同然だ


…大丈夫なはずだと自分に言い聞かせた




とまあ西口エリアに到着したのだが…

思った以上に生徒達がいた

どうやら今日は商店街のイベントか何かがあるらしい


D「ぶ、部長、思ったより人いるんですけど…大丈夫ですかねアレ?」

「参ったな…風紀委員も結構いるぞ…」

別に風紀委員自体はどうでもいい

いざとなれば楽に蹴散らせるからな

問題はカルテル首脳陣だ

風紀委員長は勿論、補習授業室長と対策委員長もかなり恐ろしい



選択肢は2つ


1:天啓とも言うべき勘を捨てるか

2:カルテルの心象を優先するか

どうするべきだ…



「ハーッハッハッハッハ!」

「「「「「!?」」」」」

「ええいままよ!構うことはない!我ら温泉開発部は止まらないぞ!」

「「「「「お、おおーっ!!」」」」」


私は1を選んだ!

この志は誰にも邪魔させない!

このチャンスを逃せば、砂糖温泉郷の夢がまた遠のくかもしれないのだ!


「行けーっ!!!」

部員達に砂漠仕様ジャイアントヒール・クラッシャーの上から指示を出して突撃する

「温泉開発開始ぃーっ!!!」

この時内心思ったが

我ながら半ばヤケクソ気味な指示の出し方だったな…




結論から言おう

風紀委員長は文字通り“飛んできた”


ヒナ「………」

彼女が地面に降り立った瞬間、逃げ惑う人々と我々は、時が止まったかのように静止した

「…鬼怒川カスミ」

鋭い目が砂漠仕様ジャイアントヒール・クラッシャーの上に搭乗している私の目を射抜く

「ヒュッ…!?」

思わず漏れ出た声にならない悲鳴

「これは、何?」

地の底から響いてきたような恐ろしい声

「ヒ、ヒナ委員長…こ、これはだな…」

ダメだ、完全に調子が狂った

彼女の前ではいつもこうなる

弁舌で回避するのが困難になる

「はぁ…貴女の目は節穴なの?今ここで商店街のお祭りをやっている事さえ見れないというの?」

「ぎゅくンッ…!?」

自分でもどんな声か分からない声が漏れ出る

ど、どうすればいいんだ…

「もういいわ、面倒」

あ──

「全員しょっ引く」

風紀委員長の銃口が此方を向いた


「ひ、ひええぇぇぇーーーっ!」

私の悲鳴と共に、我々温泉開発部は砂に倒れ伏したのだった──






──────────────────────────

彼女の宣言通り、我々はしょっ引かれた

だが幸いにも兵器は壊されず、罰も割と簡単な形式で済ませてくれるそうだ

それをアビドス監獄内で聞いた私は…


カスミ「遂行こそ出来なかったが…罰が簡単に済むのであれば、1を選んだ意味もあったというもの…2を選んでいた場合、不完全燃焼になっていて尚且つ温泉開発の志をも失っていた可能性は高かった…結果的に私の判断は間違っていなかったというわけさ!」

メグ「流石部長だね!」

部員達「カスミ部長ばんざーい!」

「ハーッハッハッハ!」

ヒナ「随分楽しそうね」

「ああもちろ…ほわああぁっ!?」

「反省の様子はまるで無いと。それなら私も遠慮なく頼める」

「…え?」

「ハナコ、当初の予定より濃度を高めた塩水を浴びさせて」


風紀委員長の声と共に監獄へ入って来るは…補習授業室の“浦和ハナコ”室長

ハナコ「ええ、承りました♡」

「」

「ふぇ…?ねえねえ部長、これから何が起こるの?」

部員A「塩水って言ってたけど…」

B「塩水…」

C「ま、まさか…!?」

「悪い子達には大人し〜くなれるようにお・仕・置・き♡しちゃいます♡」

「そういうわけよ。反省しなさい」


「…………ひ…」



「ひえええええええぇぇぇぇー…!」




──────────────────────────

ハナコによる「塩水シャワー刑」の効果は覿面だったらしく、温泉開発部の面々はこの後数週間ほど大人しくしていた

だが塩が抜けた後は、懲りずにまた砂糖温泉開発を再続行するのであった…


ヒナはまた問題を起こさないか心配して頭を抱え

ハナコは次のお仕置きプランをウキウキで練り

ホシノはそんな2人を労った


カスミの砂糖温泉郷計画実現というユメは、果たして叶うのだろうか

それは誰にも分からない…

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