渋谷事変
22:45 渋谷クロスタワー前
遭遇した呪詛師3名との交戦が終わった
でも、まだ目的を果たせた訳じゃない
五条先生が封印されて、もう1時間近くが過ぎている
それに、まだ渋谷から逃げられていない一般の方もいるかもしれない
「……急がなきゃ…」
お兄ちゃんを治療して、私は渋谷駅へ向かった
22:50 渋谷駅構内
逃げ遅れた方がいないか探しつつ、五条先生がいる地下5階を目指す
「────さい…」
近くで声が聞こえた。誰かいるのだろうか
声がした方へ向かう
私は目を疑った
少女が2人 女性が1人、その先には───
圧倒的な邪悪を身に纏い、呪いの王 両面宿儺がそこにいた
動きたいのに恐怖で体が縛られる、ダメだ、動かなきゃ、助けなきゃ
黒髪の少女の頭が、私の眼前で飛んだ
次の一瞬で、金髪の少女の体が爆ぜた
腹の底から恐怖が込み上げてくるような惨状を背に、呪いの王は何処かへ消えた
脱力感と同時に、果てしない無力感が襲う
助けられなかった、すぐ目の前にいたのに
絶望に浸る間もなく、足音が聞こえる
さっきの少女達と共にいた女性だ
『玉犬』
声と同時に式神が私を襲う
『羂索からの頼みだ。すまないけど死んでもらうよ』
突然の事で、頭が回らない
今の攻撃は?伏黒くんの?何でこの人が?羂索って誰?
いや、そんなことより
「…どういうつもりですか…?」
『どう言うつもりか、はさっき言ったはずだけど…とある奴から呪術師は殺すよう頼まれてるの。貴方呪術師でしょう?』
「……人が…死んでるんですよ?…それに…まだ渋谷に残ってる非術師の方達だって…」
『そうね、だから?』
「………は?」
その時、私の中で何かが切れた
『話は終わり?なら────…!?』
言葉が途切れる前に、拳を叩き込む
内から無尽蔵に怒りが溢れてくる
この人は、この人だけは
「…許さない…!」
『このっ…クソガキ…!』
間髪入れず次を撃ち込む
黒い火花が、拳の先で爆ぜる
『なっ…黒閃…!?』
『マズい……布瑠部────』
「次」
もう一度、撃ち込む
黒い火花が、再び爆ぜる
もう一度、もう一度、もう一度
黒い火花が6度爆ぜた時、私は目の前の敵を見下ろしていた
22:55 渋谷駅構内
時間はそんなに経っていない
早く地下5階に……
…いや、今頃七海さんや禪院さんや日下部さん達が地下5階へ向かっているだろう
なら私は地上に出て渋谷に残っている方達の避難を最優先にすべきだ
それに、虎杖くんの安否も気になる
少女の遺体に黙祷して、地上を目指した