渋谷事変 ―天変― 続き
今までの作者じゃないよ『核熱術式』
それは術者自身を「核」、呪力を「仮想原子」とした融合炉で核融合反応を起こすことにより理論上呪力を無限に生み出すことができる術式。
そのため一度でも稼働してしまえば術式を停止するまで呪力は際限なく生み出される。
これにより術式を発動した際の黒川蘇我には呪力切れの概念は存在しない!
「フハハハ!フハハハハハハハハッ!アッハハハハハハッ!」
夜の渋谷に響き渡る"呪いの王"両面宿儺の笑い声。宿儺は吹き荒れる暴風の中、目の前で拳を交えている食材(黒川)に興奮していた。
(術式を発動してから呪力を一切消費していない……いや、消費した先から呪力が補充されているのか)
先程までの戦闘で消耗していた黒川の呪力は今は完全に回復している。さらには宿儺の斬撃を防御するために身体強化や風のバリアを発動しているにも関わらず黒川の呪力総量は一向に減っていなかった。
(呪力を生成する術式、そういえば1000年程前にも似たような術士がいたな)
それは1000年以上前、かつて呪術全盛の時代。呪いの王たる両面宿儺を討伐せんと当時の術士が総力を上げて宿儺に挑んだ際のこと。その中に黒川と同じ核熱術式の使い手がいたことを宿儺は思い出した。
(術式の生み出す呪力に耐えきれずに最後は自爆したのを見た時はとんだ欠陥術式だと思ったが)
宿儺が思っていた通り『核熱術式』は呪力を用いて核融合反応を起こすことでより膨大な呪力を生み出しつづけることができる。
だが少しでも操作を誤ると最終的には術者もろとも大爆発するという敵味方問わずはた迷惑な術式だった。
しかしそれは核融合という概念すらなかった1000年以上昔の話。
『投射呪法』が現代に近づくにつれてブラッシュアップされていったように、黒川はこの術式を元々高い自身のフィジカル(ゴリラ力)の強化に使用することにより自爆の危険を犯すことなく、天与呪縛によるフィジカルギフデットと同等の身体能力を手に入れることに成功した!
「逕庭拳!!」
呪力により強化された黒川の拳が宿儺の胸板に突き刺さる。宿儺もお返しとばかりに斬撃を飛ばすが遅れてやってくる衝撃に吹き飛ばされビルの壁面に叩きつけられる。黒川も近距離で宿儺の斬撃を受けたことにより全身から鮮血が噴き出す。
(あの欠陥術式をここまで昇華させるか!)
「魅せてくれたな!黒川蘇我!!」
宿儺が叫びながら飛び出したのと同時に反転術式で傷を治した黒川が追撃の為に飛び出した瞬間、轟音が鳴り響く。
「ンヌヌヌヌ!!うがあああああああああああぁぁぁ!!!」
吹き出した2本のマグマの柱が巨大な腕の形になりながらビルを握り潰す、そのままビルの残骸ごと黒川と宿儺を押し潰そうと迫ってきた。しかし……
それを宿儺は圧倒的な密度の斬撃で
黒川は風を纏った拳で吹き飛ばす
「ぬがあぁぁ!?」
その余りの斬撃と風圧により両手両足を切り落とされ空中に身を投げ出してしまう漏瑚。そこに迫る呪いの王、漏瑚も手足を再生させ迎撃しようとするがそれよりも速く宿儺にビルの窓に投げ飛ばされる。
「ぬおおぉぉ!?」
そのままビルの窓を突き破りさらにそこからまるでサッカーボールのように宿儺に蹴り上げられビルの屋上を突き破りまた空中に投げ出される。
(力の差など分かっていた!!)
紫の血反吐を吐きながら夏油と同胞から言われたことを思い出す。
(夏油、儂は宿儺の指何本分の強さだ?)
(甘く見積もって8.9本分てとこかな。)
(花御、黒川蘇我はどうだった?)
(私の術式による防御をものともしない圧倒的な力、素速さに関しても恐らく貴方以上。まさに規格外、五条悟に次ぐ術士と言われているのも頷けます。)
(だがここまで……!!)
「!?」
空中に打ち上げられた漏瑚に黒川が迫りその拳が白く光輝く。
──術式順転「蜂起星」
太陽の如き光が大地の呪霊を飲み込んだ