深夜の悔恨
神永 side in
今家ではライダーが全身に包帯を巻いてかつ治療用礼装をフル動員して治療されている。
エーテル体とはいえ人間の構造と同じなのだ、内蔵へのダメージは大きなものとなる。無論魔力を十全に送ることが出来れば幾分か治癒はできる、だがそれ以上の傷はどうしようもない。
「───ライダー」
美作達が一旦帰り今は治療を受け眠っているライダーと俺しかこの家にはいない。
「悪かった…俺が、俺が不甲斐ないせいで…!」
そもそも俺が工房の罠に引っかからなければ無駄にライダーが傷つくことも、美作に令呪を切らせることもなかったのだ。
「クソッ…」
未だライダーは眠っており目を覚まさない。
───本当に、俺はロクデナシだ
その声は、夜の闇に吸い込まれていった。
神永 side out
ライダー side in
目を覚ます、傷の痛みが未だ残っているためか体を起こすのは少々厳しい。
「ぁ…ある、じどの」
「っ!?ライダー!目を覚ましたのか!」
隣で船を漕いでいた主殿が私の声を聞きはっと目を覚ます
「すこし…声が大きいです」
「っ!悪い…、でも、良かった無事で…」
「いえ…私の方こそ、油断をしてしまいました」
横になりながら拳を強く握る。あの大英雄を相手に読み易い等と、自惚れていた。主殿に仕えるものとして不甲斐ない…
「ライダー、気にするな何とか逃げられたんだ」
「主殿はお優しいですね」
「いや、そもそも俺が罠に引っかからなければ良かったんだライダーの責任じゃない、俺の責任だ」
「主殿…」
悔しそうに歯を食いしばる主殿、今ここで慰めの言葉など必要は無い今彼に必要なのは
「自惚れないでください、明らかにセイバーのマスターが上手だったからあの結果になったのです。主殿の実力は関係ありません」
故に、仕えるサーヴァントではなく1人の将として進言をする。
「あの場での主殿のミスはありませんでした。単純に我々の力不足です」
「…だが、ライダーだけならセイバー相手にあそこまで」
「それこそ驕りです、かの大英雄の実力は私を上回ります」
これは純然たる事実だ、たとえ防御の宝具がなかったとしてもかの大英雄は私を上回っているだろう
「そうか…いやすまなかった」
「いえ、切り替えて行きましょう少なくとも私達だけではセイバー陣営に勝てないとわかっただけでも収穫です」
「だな…そのライダーの真名もわかったし」
「…その、出来れば真名は2人の時だけでお願いしますね」
「わかった…あ〜、どう呼べばいい?」
「そうですね、今の私の霊基は若い未熟な時のものですので"牛若丸"と」
「わかった、改めて宜しく頼むよ牛若丸」
「ッ!はいっ!ってイタタタ」
ついつい嬉しくて上半身を上げてしまったが傷が癒えきってないため痛みが走る
「嗚呼もう!寝てろって、良いな?」
「はい…」
全くこんなことになるのは寺にいた時以来か…
「あら、もうライダーが起きたのね」
「美作、もう来たのか」
「ええ、バーサーカー傷の確認とかも終えたし」
美作殿がバーサーカー…金時殿を連れて来たようだ
2人もこちらへ来て話をするようで
「さて、ライダー貴方の真名は源義経、それでいいわね?」
「ええ、今は若い時のものなので牛若丸が正確ですが」
「成程ね、確かにそれならバーサーカーの真名に気づけたのも納得」
「兄上からお話を聞いたことがありまして」
そんな他愛も無い話をしていると
「で、どうするんだ?セイバー倒すにゃ確実に俺たち2人をぶつけねぇとキツイぜ?」
金時殿が厳しい現実を突きつけてきた。
「バーサーカー、貴方戦った感想は?」
「力だけなら俺のが上だ、だが下手な攻撃は届かねぇわとんでもない技量だわで生前なら兎も角この霊基じゃあ勝ち目はねぇ」
頼光四天王随一の剛力を持ち赤龍を親に持つという比類なき英雄である坂田金時にそれを言わせるとは…
「ライダー、貴方は?」
「私だけではひっくり返っても勝てません」
「でしょうね…勝つには2人がかりで戦うしかないわね」
「そうなるとあの工房が厄介ね、分断されたら話にならないし…」
「…ひとつ案があるんだが」
「何よ、どんな案?」
主殿が何かを思いついたように声を上げる、しかし乗り気では無いようで
「ぶっちゃけ神秘の隠匿的にはギリギリなんだよ」
「わかったわ、じゃあ話して」
「わかった…あのホテルの最上階フロア、全部壁をぶち抜くってのはどうだ?」
思ったよりも力技の案が出てきた。
「あの工房、ざっと確認した感じだと役割は3つだ
1つは結界による壁の強化、防音防振の効果もあるな
1つは俺が食らった罠
そんで最後がゴーレム生成の効果だな
最後のは核になる炉心がある可能性が高いな」
そう言って指を3本立てる
「で結界の方は壁を起点に作られてる、壁さえぶっ壊せば結界は壊せるしついでにセイバーのマスターを引き摺り出すことも出来る」
「ライダー、戦略的にアリかしら?」
正直な話1番いいのは相手方を此方の有利な陣地に引き摺り出すのが最善手だがあの陣営が工房から出てくることは基本ないだろう、そう考えると有利な陣地そのものを破壊するというのは良い判断ではある
「そうですね、やり方次第でしょうか」
「壊す役はオレだろ?」
「そうなるわね」
「じゃあライダーの傷が癒えてすぐ突撃だ、いいな?」
「「「異議なし」」」
さて、そうなれば早く傷を癒さねば…
そう思い眠りにつくことにした。
ライダー side out