深き闇の夢から覚めて

深き闇の夢から覚めて

無敵ロイヤルキャンディ

黒い霧に辺り一面が包まれた世界に、拓海…ブラックペッパーはいた。ミノトンが作ったランボーグの攻撃を受けたところまでは記憶があるが、こんな所に来た覚えはない。不測の事態に拓海は少々混乱していた。

「ここは…?俺は死んだのか…?」

「ここは精神が彷徨う闇の世界…らしいわよ?だからあんたはまだ死んではいないわ」

「誰だ!?」

いつでも迎撃に入れるように腕に力を入れて振り向くと、そこにはゴスロリを装った少女の姿が崖の上にあった。少女は飛び降りるとブラックペッパーを一瞥してまた距離を取る。

「私?私はそうね…ダークドリームって呼ばれていたわ」

「俺はブラックペッパー、お前はプリキュア…なのか?」

「あなた、プリキュアを知っているの?私は違うわ、私はそのプリキュアを倒す為に生まれたコピー。…でもそんな私を、あの娘は友達と呼んでくれた」

「そうか…」

コピーと言われて拓海が思い出すのはあまねとジェントルーの姿。あの2人とは経緯が違うだろうがダークドリームもまた何者かによって作り出された存在なのだろう。拓海はそう結論づけた。

「多分あなたは生きてるだろうから、その内元の世界に帰れるわよ」

「本当か!?」

「ええ、良かったわね。久々に人と話せて私も悪くはなかったわ」

「お前は帰らないのか?」

「帰らないんじゃなくて、帰れないのよ。私はシャドウ様が鏡の国のクリスタルに闇の力を注ぎ込む事で生まれた存在。もし同じ事をしても別の何かが生まれるだけよ」

「そんな…そんな事ってあるかよ…!」

「あなた優しいのね、まるであの娘みたい。でも意外と悪い気分ではないのよ?シャドウ様に逆らって、大好きなあの娘を庇う事が出来た。コピーにしてはいい経験が出来たと…?」

「ザケンナァァァ!!」

「「!?」」

真っ暗な世界に突如轟く雄叫び。そこにいたのは紫色の巨人…かつて光の国のプリキュアが戦ったザケンナーの初期状態なのだが残念ながら2人にそんな知識はなかった。

「おいダークドリーム、あれは一体!?」

「たまにいるのよ、あんなヘンテコな怪物が。私は蹴散らしにいくけどあなたはどうする?」

「俺も行く。怪物が暴れているのを黙って見てる趣味はない」

「そう、…なら精々足手まといにはならないでよね!」

ダークドリームは変身して、ブラックペッパーと共にザケンナーに向かっていった。




「ザケンナァァァ!!」

「「はぁぁぁぁぁ!!」」

ザケンナーとブラックペッパー&ダークドリームの即席タッグがぶつかり合う。時に打撃、時に光弾を使い分けて戦う2人は初めてにしては息の合った連携が取れていた。

「ペッパーミルスピンキーック!」

「はぁぁぁぁぁ!」

2人の連携により吹き飛ばされるザケンナー。このままなら勝てる…そう思っていたその時だった。ザケンナーの右腕はジェットコースター、左腕は掃除機、頭はドラゴン、そして身体は甲冑を被った熊という摩訶不思議な姿へと変貌を遂げたのだ。

「ザケンナァァァ!!」

「何よあれ、頭おかしいんじゃないの!?」

「愚痴ってる場合か!来るぞ!」

左右からの予測不能な軌道の攻撃に頭からはブレス。胴体に攻撃を入れようとも甲冑に阻まれる。波状攻撃により2人は一気に劣勢に持ち込まれた。

「少しまずいが…大丈夫か?」

「ええ、問題ないわ。けど…」

「ザケンナァァァ!!ザケン!?」

突如放たれた光弾によりザケンナーが一瞬たじろぐ。その光弾を放ったのはブラックペッパーでもダークドリームでもなく……どこからか現れた、手のひらサイズのましろだった。蝶のような羽を背中に生やしたましろは、華麗に一回転してみせる。

「……虹ヶ丘!?というかその姿は…」

「」フルフル

小さなましろは説明は後とばかりにブラックペッパーとダークドリームの指を掴むと身体から放つ光が段々強く、輝き始める。ブラックペッパーはあまりの光の強さに思わず目を瞑ると、そのまま意識を手放した。




「……くみ!……拓海!」

拓海が目を覚ますと、自室のベッドで寝かされていた。周りにはゆいとここねとらん、そしてあまねが目を赤くして涙を溜めている。

「良かった〜!拓海もう起きないかと思っちゃったよ〜!」

「拓海先輩!ゆいをこんなに悲しませるなんて…あなたは最低です!」

「でも拓海先輩が目を覚ましてよかったよ〜!ねぇあまねん?」 

「ああ。どうやら打ちどころが悪かっただけみたいだが…無事で何よりだ。頭は痛くないか?」

「いや、それは大丈夫だ。みんな、心配かけて悪かった」

さっきまでのは夢だったのかと1人考え込む拓海。夢にしては妙にリアルなところがあったがあれは何だったのか疑問がつきないが、それよりもゆい達を悲しませてしまった自分が許せなかったのが大きい。もっと強くならなくてはと決意を新たにした。

「安心したら腹ペコった〜。拓海、今からうどん作るからちょっと待っててね。スープは出来てるし後はうどんを煮れば完全だから」

「すまない、何か連絡来てるみたいだ。…菓彩だ」

あまねのハートフルーツペンダントに着信が入る。相手はどこか慌てた様子のソラのようだ。

『あまねさん!拓海さんの様子はいかがですか!?』

「ああ、今丁度目が覚めたところだ。心配をかけて済まなかったな」

『いえ、こちらこそ拓海さんと皆さんに迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした!…って話はそれだけじゃないんです!さっきましろさんの部屋に小さなましろさんと知らない女の子が出てきたんです!』

「はにゃ!?小さいましろんと、知らない女の子!?」

「…まさか!?ソラ、そいつと変わってくれるか!?」

『は、はい!分かりました!』

慌ただしいソラに変わって現れたのは拓海が先程まで共に戦っていたダークドリーム。服装は変身前のゴスロリだが、そのメイクは若干ナチュラル寄りに見える。

『髪色とか違うけどあんたがブラックペッパー…で合ってるわよね?…どうなってるのこれ?』

「…そんなの俺が聞きたいよ…」

どうやらまた一波乱あるなと、拓海はため息をついた。

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