「涙の理由」
※n番煎じの幼児退行ネタです。ただ書きたいものを書いただけなのでキャラ崩壊、誤字脱字等あるかと思いますがご容赦ください。
時系列としては珀鉛キャンディ舐めさせられ始めてしばらくたった頃、まだ捕まって日は浅いと思っています。
今日も硬い鳥籠の中で目を覚ます。既に見慣れてしまった真っ白な部屋、カツンカツンと恐怖の足音が近づいてくるのもいつも通りだった。
「お目覚めかロー?」
ピンクの悪魔が笑みを浮かべながらねっとりと自分の名前を呼ぶ。思わず不快感を表せば頬に鋭い痛みが走った。
「うっ……ケホッ」
「随分な挨拶だなぁロー?今日もお前の喜ぶ物を持ってきてやったってのに」
ピンクの悪魔ドフラミンゴが懐から小瓶を出す。その中では蠱惑的に輝く飴玉がカラコロと音を立てていた。
「あっ……」
「フッフッフッこれが欲しくて堪らねぇだろう?大好きな故郷の味だもんな」
欲しい。素直にそう思ってしまった。口の中が唾液でいっぱいになる。誘われるように左手を伸ばしハッとした。
「ちっ違う!俺はそんな物欲しがってなんか居ない!」
「嘘は良くないぞローほら好きなだけ食べていいからな」
ドフラミンゴはニタニタと笑いながら俺の左手を引っ張り飴を握りこませる。手が震える……投げつけてやればいいそう思う頭とは裏腹に俺の体は飴玉を口へと運ぼうとする。
「違う……いやだもう食べたくない」
「そんなに握りこんでると溶けちまうぞ?手伝ってやろう」
ドフラミンゴが指を動かす。その瞬間俺の意志を無視して俺の左手は飴玉を口へと押し込んだ
カラコロ……カラコロ俺の口の中で飴の転がる軽い音がする。
(またやってしまった)
あいつが用意した誘惑にすら勝てずこうして飴を舐めていることに酷く情けなくなる。こんな情けない俺だから何もかも失ってしまうのだ
「ごめん……ごめんなさい……」
謝った所で許してくれる相手はもう居ない。戻りたい。戻れる場所なんてない。それでも………父様や母様と過ごした日々が……妹と笑いあったあの頃が……未来への希望で輝いていたあの白い街が懐かしい……
故郷の味を舐めながらそこで俺は意識を手放した。
(ドフラミンゴ視点)
「そろそろか」
時計を見てニヤリとする。そろそろ“鳥”が餌を求めて鳴く時間だ。シーザーに作らせたあの飴を鳥はいたく気に入っている。涙を流しいやだと喚きながら飴を頬張るローの姿はとても滑稽で俺の心を癒す数少ないものだった。
「ロー、今日も大好きな餌を持ってきてやったぞ」
いつものように名前を呼び飴の瓶を揺らしながら籠の中の鳥を見る。しかしその日の反応はいつもとは違う物だった
「だぁれ?」
「あ?」
帰ってきたのは舌っ足らずな声、怯えた顔でも怒りを孕んだ顔でもなくキョトンとした顔でローが俺を見つめる
「巫山戯てんのかロー?」
俺を忘れた振りをするなんていい度胸だと思いながら仕置の為ローの頭を床に押さえ付ける。
「ひっいたい。やだよぉはなして。ふっグスッこわいよぉだれなの?なんでいたいことするの?」
それでもローは幼子のような話し方を辞めなかった。怖い嫌だとぐすぐす泣いて怯える姿に演技の類ではないと思い至る
「あーなるほどなァローお前……子供に戻っちまったのか。フッフッフッアハハハハ」
ついつい笑いが零れる。これはいい。今ならこいつを俺好みに作り変えられるかもしれない
「痛い思いをさせて悪かったな。お前が誰なんて言うから取り乱しちまった」
頭から手を離し努めて優しく籠の中のローに声をかけてやる
「俺はお前の“兄”だ。ドフィ兄様だよ」
「ドフィにいさま?」
「あぁそうさ」
くりくりと目を丸くしながらローが俺の名を呼ぶ。それだけで満足感が湧いてきた
「なんで俺は兄様のことを忘れちゃったの?」
「お前は悪い海賊に誑かされちまったのさ。それで怖い思いをしたから記憶が飛んじまってるんだろう。大丈夫悪い奴らは兄様がやっつけてやったからな?」
「ドフィ兄様はつよいんだね!すごい」
すごいすごいと顔を輝かせるローをヨシヨシと撫でてやる。その途端ローの目からはポロポロと透明な雫が零れ落ちた
「どうしたロー?なんで泣いている?」
「あれ?えへへなんでだろ?ドフィ兄様がやさしくなでてくれてうれしくて……ほっとしたのかなぁ?」
「フッそうか」
そっと雫を零す目元にキスをして涙を舐め取ってやる。ようやく“弟”を手に入れたことに自然と笑みが零れた
(嫌だ嫌だ嫌だ。あいつの“弟”になんてなりたくない。辞めろ俺に触るな!)
涙に隠された本当の理由は誰にも気付かれず雫と共に流れ落ちていった。