消防士 ルフィ

消防士 ルフィ


消防士というのは命懸けの職業だ。

Fire Fighter の英名の通り

燃え上がる炎に身を投じ

生存者を救出しなければならない。

当然、自身の命も守らなければ

意味が無い。

無いのだが…

「ルフィ!

お前また無茶しやがったのか!?」

「いやあ…だってよお…」

「まあ生きてたし良かったじゃねえか」

消防署の一室で対面する3人。

怒鳴る者と叱られる者と

困り顔で場を宥めようと笑う者。

叱られるルフィはべそをかきながらも

弱々しく反論に出る。

「だってよお、ケムリン…

閉じ込められてたんだぞ?

助けてえじゃねえか…」

馬鹿野郎!と叱る男の怒号が飛ぶ。

しゅんとするルフィに

スモーカーはまくし立てた。

「炎に囲まれた現場での人命救助は

確かに俺たちの使命の1つだ…

だからと言って

穴の開いた状態の防火服で

突っ込んで助けろ、とは

教えてねえだろ!?」

「そうだけどよお…」

「近くにはティーチが居たって

言うじゃねえか!?

まずはティーチに報告して指示を

仰ぎやがれ!

そうでなくても、引き返して予備の

防火服にさっさと着替えろってんだ!」

炎のように怒りが燃えるスモーカーに

言葉が出ないルフィ。

頃合を見てティーチは助け舟を出す。

「まあスモーカー…落ち着けよ」

怒りの表情で振り向くスモーカーだが

ティーチは怯まず続ける。

「火の手の回りが

想像以上に早かったんだ。

崩落の危険も当然ある。

そんな時に子どもの泣き声を

ルフィだけ聞き取れた。

おれも近くに居たが

別の被害者の救助中で手が

離せなかったんだ…

こいつは子どもを放って置けなかったのさ。

心意気は立派じゃねえか!」

-良くやったと思うぜ!

そう言いながらゼハハと笑い

ルフィの肩を叩くティーチ。

怒り心頭なのは変わらない

スモーカーだったが

葉巻を咥え火を付け始める。

煙をくゆらせ、ゆっくりと吐き出すのを

繰り返した。

暫く時間を置き

改めてルフィと向き合い神妙に言い放った。

「…誰も気が付かなかった

被害者を助けたのは見事だ」

それを聞いてニカっ、と笑うルフィ。

「だけどな」

スモーカーにギロリと睨まれ

一瞬怯むルフィ。

「無茶ばかりするな…

軽い火傷で済んで今回は

運が良かったと思え…

そろそろ消防車点検の時間だろう?

もう行け」

再び笑顔を見せながらルフィは答える。

「ケムリンがピンチになったら

いつでもおれを呼んでくれ!

必ず助ける!

おれ、ケムリン嫌いじゃねえからよ」

ししし、と笑うルフィに

早く行けと退室を促すスモーカー。

ルフィが去ったのを見て

ティーチは声を掛けた。

「…ルフィのやつ、無事で良かったですね」

ふん、と息を鳴らし流す。

もう一本葉巻を咥え

深く吸い込み吐き出す。

「…まあ良かったぜ。

おれもアイツは…嫌いじゃねえ」

「…おれもです」

消え入りそうな声で答える男達。

笑い合う2人の部屋に

コンコンとノック音が響く。

「スモーカーさんは居ますか!?」

「どうした、入れ」

「失礼します!」

息を切らせたコビーが入室し報告する。

「報告します!ルフィさんが

消防車の運転を誤りティーチさんの

自家用車と衝突!

その後、操作ミスなのか何故かホースが

飛び出し水を放射し

スモーカーさんの

バイクがびしょびしょです!」

「今すぐあの馬鹿を止めて来やがれ!」

怒鳴るスモーカーに慌てて走り出す

ティーチとコビー。

スモーカーは頭を抱えながら

葉巻を吸い終わると

2人の後を追い初めた。

署の1日はまだ続く。

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