消えない地獄の記憶
───それは、恐らく私が生きていく上で一生付きあっていかないといけない醜悪で陰惨で、そして恐怖の象徴なのだろう。
『あ゛あ゛あ゛ぁ゛、ぁ゛ぅ………』
『ハッ、ずいぶん痛めつけたがまだいい声で鳴くじゃねぇかこの餓鬼』
あの地獄の日々の痛みも、恥辱も、恐怖も、私は一瞬たりとも忘れた事は無い。
今だってほら
『痛い痛い痛い痛い痛いいだいいだあぁい』
記憶の中の私はこうして全裸で縛られて大の大人数人掛かりでありとあらゆる痛みを与えられている。その痛みの一つ一つを私は全て記憶しているし鮮明にその苦痛に恐怖が蘇っていく。
今されたのは、右手の最後の爪を剥がされたあたりだろう。もう痛みで逆に感覚すらボヤけてきたけどそれで済ませるような優しい大人達では無い。
ほら…あの熱した針で剥がした爪の肉を───
『あ゛っ、……………』
ショオオオォォォォ
『あーあーあーまーた漏らしたよこの餓鬼』
『これがあの五条の坊の姪とか笑えてきますね、こんな情けない娘っこが』
……指から伝わる耐え難い激痛と股座から迸る情けない屈伏の証を見て醜悪な大人達に笑われる惨めな私。
あぁ、こんなに殺してやりたいのに無力で無様な過去の私では何も出来ない。
そのまま小便で濡れた股間もいやらしく馬鹿にするような拭かれ方をしたあと、また、無限に続く地獄の続きが……………
─────
「はっ!?!!」
ガバっ、と飛び上がるように起きた私は、全身汗でびしょ濡れのまま、さっきまで剥がされて焼かれていた指を確かめるように触って無事を確かめると情けなくも涙目で安堵に浸る事しか出来なかった。
そうして数十秒程経った時に、ようやく自らの下半身と布団の中の異常事態に気づいて、またか、と自らの惨めさに吐き気と苛立ちを覚えた。
そして数瞬躊躇った後に意を決して布団をどけるとそこには自らの吐き出した寝小便で股間周りを中心に肌に張り付いたパジャマのズボンに、皮肉にも見事な世界地図を描いたシーツ。
「……最っ悪」
深く眠りにつくといつもこうだ。
あの地獄の痛みと恐怖を鮮明に追体験させられて、こうして敗北と屈従の証を盛大に残してしまう。
こんな惨めで情けない私を私は大嫌いだし、私をこんな目に遭わせた連中全員ぶっ殺してやりたい。
───とりあえずは、この人に見られたら一発で社会的に終わりそうな情けない様をどうにかしないと……