海風気まぐれ
前半モリア様もキャメルもゲッコー海賊団もなにもかも捏造されてる
若モリア様は既にカゲカゲを食ってる
カロリナのイメージは本スレ6の41
「モリア船長、次の島のことについて調べた結果面白いことが分かってね。」
「なんだ?」
次の目的地を決めるための船内会議を終え、船長室で一人くつろいでいた俺の元へ「報告がある」と尋ねて来た男は続ける。
「この島でしか取れない珍しいカカオで作られたチョコがとても美味しいらしいよ。一週間分⋯樽3個分くらいになるかな?それぐらいは買っておくべきだと思⋯」「買わんぞ!おれは買わん!」
ショコラという言葉に何か感じるんだ!食べたら記憶も戻りそうな気がする!と主張する男の表情は笑っていない。真剣そのものに見えるがこれは顔が硬く動かないだけなのを俺はもう知っている。好物であると言うキャラメルラテを飲ませても眉が少し上がるぐらいなのだ。
「大体なんだこの報告!重要事項みたいな雰囲気で言う事じゃねェ!」
「腹が減っては戦が出来ぬというだろう?」
「食料は今十分にあるしお前はもっとバランス良く食えキャメル!!」
えー!と駄々をこね始めた男の口を飴で塞ぎ昨日目を通し終えた机の上の手配書の山を持っていかせる。
持っていた鋏に彫られたcamel(キャメル)を仮の名前として呼ぶことに決めた時「キャラメルみたいで嬉しい!」とはしゃいでいた男の手配書はまだ見つからない。
一ヶ月前、買い出しに降りた島で海軍に取り囲まれたウチの部下を助けてくれたのがこの男、キャメルだ。あの人数は厳しいだろうとおれを呼びに来た部下とついて来たおれを出迎えたのはまだ温かい血溜まりと返り血一つ浴びてない男一人。
「おれの部下が世話になったな、礼を言うぜ。」
事切れた海兵達を眉一つ動かさず鋏で解体していた男がこちらに顔を向けた。瞳孔が横に長いその目はいつか見たヤギ頭の悪魔の絵を思い出させた。
「水兵服が気になっていてね⋯お礼は結構だよ。君達は海軍じゃないよね?」
「ああおれ達は海賊さ。おれは船長のゲッコーモリアだ。」
それを聞いて男は一つ聞いてもいいかいと続けた。
「私って君たちの仲間だったりしない?」
「「⋯は?」」
島に流れ着いたのがおれ達がくる五日前でそれ以前の記憶がない。名前、家族、自分に関することは何一つ思い出せないらしい。持っていたのは大きな鋏とメジャーだけ。
最初自分は仕立て屋だと思っていたが、島に来た海兵にいきなり撃たれ、自分は海賊ではないかと思い街に貼られてある手配書を漁るが手がかりは掴めない。ここまでくると何をすればいいのかわからない、まあ暇だし切るか⋯と島で鋏を振るっていたらしい。
恩人を見捨てるなんて⋯と部下に泣きつかれたおれは、この身元不明の通り魔の言い分を信じて条件付きで船に乗せることにした。
日中は影を切り取り夜はおれが監視するという条件を男は快く承諾した。もしもの事があってもおれならコイツを倒せるだろうという目論みだ。⋯⋯本人は「船長の服を間近で観察できる!」と喜んでいたが。
人を解体するときの手慣れた手つき、的確に急所を狙われた死体達、返り血すら浴びない早業⋯コイツは一体何者だろう。俺の服を模倣した自分用の服や他の船員の服を仕立てたときの心なしか嬉しそうな様子を見て余計分からなくなった。