浴衣簪エース概念
日に日に夜が長くなる今日、この頃。
今週末、学園近くで秋祭りが行われる。
浴衣でデート。お揃いの浴衣。
早速、あの人を誘って買いに行こう。
そう思っていた矢先、ある物が届いた。
久しぶりの、母ちゃんからの贈り物。
荷解きすると・・・中身は、浴衣。
そして、一緒に入っていた走り書きのメモには、こう書かれていた。
"二人で着な!"
離れてても、あたしのことよく見てくれてんなあ。
母ちゃんに感謝しつつ、浴衣を見てみる。
男物の方は、黒の生地に白と浅黄色の矢絣。
女物の方は、浅黄色の生地に白とピンクの矢絣。
お揃いの模様、そして二人で着ればあたしの勝負服と同じ。
あの人の浴衣姿を想像し、思わず赤面してしまう。
「秋祭りか!いいね、行こう!」
「浴衣、ありがとう!」
あの人に浴衣を渡し、無事にデートの約束を取り付ける。
まぶしい笑顔を見てしまうと、今から待ち遠しい。
早く、週末にならないかな。
そう考えていると、不意打ちが飛んできた。
「これ、エースに似合いそうだから買って来たんだ!」
「祭りの時、付けてきてくれないかな?」
あの人は、少し赤面しながら、プレゼントをくれた。
それは、簪だった。
彼岸花をモチーフにした簪。
―楽しみにしててくれよな!
少し、上ずった声で答える。
早く、あの人に見せたい。
そして、祭り当日。
パーマーに着付けを手伝ってもらい、簪に合わせたネイルをジョーダン達に
してもらう。
そして、簪。
いつもはしないアップスタイル。
かわいいって言ってくれるかな?
不安と喜びを胸に、あの人と落ち合う。
目に入ってくる、あの人の浴衣姿。
思わず、見惚れてしまう。
あたしは、恥ずかしさをごまかすため、同じくあたしに見惚れているあの人を
からかう。
―なんだよ、見惚れてんのか~?
「ああ見惚れてる。流石、俺の愛バだ。簪、付けてくれてありがとう!」
本当にずるいんだよな、この人。
そんなまっすぐできれいな瞳で言われちゃ敵わない。
―手、繋ごうか。
あの人が、あたしをエスコートしてくれる。
しかも、恋人繋ぎ。
もう、これだけで幸せになってしまう。
出店で買った食べ物を一緒に食べる。
金魚すくいや、ヨーヨー釣りで一緒に一喜一憂する。
浴衣も二人で一つのデザイン。
一緒にいるだけで幸せ。
祭りの様相を眺めながら、近くのベンチに二人で腰掛ける。
あの人の肩に頭を預け、甘える。
あの人は、あたしを抱き寄せ甘やかしてくれる。
クラシックの時、世間から無視されていた悲しい思い出。
でも、あの人のおかげで前を向くことが出来た。
あの人の情熱に支えられた。
あたしの愛しい人。
こんな日がいつまでも続けばいいのに。