浪漫の祝福、夢の呪い
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数年前、宙の外に存在する特異点『冠位時間神殿ソロモン』。
「ドクター…」
藤丸は、自らの先生ロマニ・アーキマンの消滅を見届け、遺志を受け取り、ゲーティアと対峙する。
2年前、アビドスの砂漠。
「ここにいたんですね。先輩」
ホシノは、砂漠の中探し回った果て、衰弱死した自らの先輩ユメの死体を発見し、項垂れた。
「俺は」
藤丸は、時間神殿を脱出し、快晴の空を見上げ、晴れた気持ちで
「私は」
ホシノは、絶望の中、校舎に帰り、今更降っても遅い雨に打たれながら
「ドクター/先輩の遺志を継ぐ。」
かつての男/女の遺志を継ぐと決めた。
時は流れ、数年後…アビドスの地。
プレナパテスとの戦いから数ヶ月たったアビドスの廃墟。
そこでは二人の男女が対峙していた。
「ホシノ、どこにいくつもりなの? 」
藤丸は、シャーレ指定の制服ではなく決戦礼装を着てホシノの前に立ち塞がる。
ホシノは、昔纏っていた装備を身に纏い、立ち塞がる自らの先生『藤丸立香』と対峙する。
お互いが本気の装備。
藤丸は、ホシノを止める為に決戦礼装を解放し、
ホシノは、たった一人で問題を解決する為に昔纏っていた装備を解放した。
「うへ、私を止めに来たのなら、先生、大人のカードを使いなよ。
魔力…だっけ? そういう不思議な力だけを消費すればあの黒い影を使役できるんでしょ?
同じ大人のカードを使っていたプレナパテスもあの黒いシロコちゃんも戸惑っていた未知の力。
それを使えば私を止められるんじゃない?」
あの時のプレナパテスは、明らかに戸惑っていた。
自分の知らない大人のカードの機能、否、自分の知らない『自分』の力。
自分の過去である筈の『自分』がキヴォトスの外の外、根源の一端を用いる。
『色彩』よりも深く遠く高いキヴォトスにおける理外の力。
この世界の先生『藤丸立香』は、大人のカードを使い、6騎のキャスターを召喚し、この世界の『砂狼シロコ』を強化し、プレナパテスの大人のカードによって強化されたシロコ*テラーを圧倒した。
「それともプレナパテスを撃ったあの禍々しい銃を使って止める?」
藤丸が背中に背負った巨大な黒い銃ブラックバレル・レプリカ。
かつて人理修復の旅にて崇高の更にその先たる神々の真体を殺す為に使用していた黒い死。
アンチマテリアルライフルの形状を持つ兵器。
通常兵器として用いるならば最大火力の場合、アンチマテリアルライフル並の反動と連射速度で列車砲シェマタの主砲を超えるエネルギーを放出する非実弾銃。
概念兵器として用いるならば大人のカードと同じ代償を支払い、オリュンポスの機神すらも破壊する威力を持つ光を放つ。
これが携行可能な銃として使用可能で、ホシノが破壊しようとしている列車砲シェマタよりも遥かに危険な代物だ。
しかしホシノはその銃を破壊対象とはしていない。
何故なら大人である藤丸が所持し、管理しているからだ。
「まぁ、無理だよね。先生は生徒を撃てないし、そのカードは生徒を傷つける為には使わない。
なら、たった一人で何しに来たの?」
「ホシノがたった一人で行くのなら私も連れて行ってと言ってるんだ。それにアビドスのみんなもホシノの事を助けたがってる。」
「無理だよ。先生、これは私とユメ先輩だけの問題なんだ。先生もそうでしょ? 先生は、誰かを…失った誰を想って先生を続けられているんでしょ?」
ホシノは藤丸が別人のような誰かを真似るような仕草をする事を指摘する。
それはロマニ、藤丸が先生としての骨子となる存在。
彼の存在が藤丸が先生たらしめる存在。
否、先生という役割を補強する存在となっている。
彼には元より先生の心構えや覚悟が備わっていた。
だが、人理修復によりそれが深く堅く補強されており、その中でも最も支えとなっているのがロマニの存在だ。
「きっと先生は、その人から祝福として受け継いだんだろうね。けれど私は呪いとして受け継いだ。この呪いは私だけで終わらせなければならない。」
ホシノはそう言って藤丸の頭上を飛び越え、その場を立ち去ろうとする。
「私は止まらない。この呪いは大好きな後輩達に引き継がれちゃダメなんだ。」
(そして私が愛している先生にも背負わせちゃダメなんだ。)
そう言い残し、そしてホシノは心の中で藤丸に対して愛を向け、その場を去っていった。