【洒落怖】幽霊の友達
去年の秋くらいの話
友人とサシ飲みしてたんだけど、その時のノリで廃ラブホに肝試しに行くことになった。
そのまま出発したら飲酒運転になっちゃうから酔いが覚めるまで待って、だいたい丑三つ時くらいになってた。
冷静な頭になってみると滅茶苦茶怖い。車の中でも滅茶苦茶後悔して、廃ラブホの前まで来て結局、車内で待っていることにした。
友人は
「つれないなー」
なんて言いながら足取り軽やかに入っていく。恐怖とかないのだろうか。
車内で暫く待っていると、ニコニコ笑いながら帰ってきた。そして開口一番
「幽霊の友達ができた」
なんて言ってくる。
「はあ?」
「いや本当なんだって」
とか言い合いながらその日は帰路についた。
その後、再び友人と夜遅く事があり、車を運転している友人が
「やっぱりお前も幽霊に会ってみないか?」
なんて言って以前行った廃ラブホまで向かっていく。
嫌がる俺に
「大丈夫だって~」
と、幽霊と遊んだエピソードを語り始めた。どうやらあの夜以降も何度も会っていたらしい。
廃ラブホ前に来て、やっぱり怖かったので、今回も車内で待っていることにした。友人は拗ねたような表情でぶつぶつ言いながら中へ入っていった。
一時間、二時間と待っても帰って来ない。いったい中で何をしているのだろうか。
三時間目には流石に痺れをきらして中に入ってみることにした。
スマホの光を頼りに恐る恐る入っていくと、中は所々腐っていて、カビの臭いがした。赤黒い塗料がぶちまけられていたり、不気味な人形なんかも散乱していて、勘弁してくれって感じだった。
一階、二階、と探すが辺りは真っ暗で友人の気配もない。
三階に上がった所でやっと友人の笑い声が聞こえた。それだけではない、若い女の子の声も聞こえる。
ビクビクしながら進んでいくと、一室だけ光が漏れている部屋があった。
そーっと中を覗いてみる。
友人が笑っていた。その目の前には幽霊。
透けるような白い肌、真っ黒な長髪、白い着物とコテコテの幽霊だ。しかも灯りの正体は火の玉だった。
恐怖で暫く動けずにいたが、友人が帰ろうとしたところで
「もうちょっと話そうよ~」
地面から伸びた真っ白な手が友人の肩を掴む。すると友人は、仕方ないなぁなんて言いながら笑顔で幽霊と話始めた。
喉から勝手に出てきそうな声を抑えて、腰が抜けてしまうのを堪えながら音を立てずに何とか廃ラブホから抜け出す。
そのまま車には戻らずに走って家に帰るのだった。
それ以降、怖くて友人とは会っていない。連絡先も変えて別の場所に引っ越した。
友人と会えば再びあの廃ラブホに連れ込まれそうだったからだ。
今でも友人はあの場所で幽霊の友達と話しているのだろうか。