泥中の花 ー夢の二層目ー

泥中の花 ー夢の二層目ー



【ドゥリーヨダナがビーマを川に落とした辺りの記憶だったのかな。大地の女神様、大分入れ込んでるみたい…】

「彼女にとっては彼は世界を変えてくれる光だったのかもしれないな。」

「神様はお気に入りが出来ると手元に置きたがるものですが、大地の女神という性質上見守ることしかできなかったのかもしれませんね。」

階段を降りきってから言葉を呟くと、苦笑しながら言ったフィンの言葉を補足するようにトネリコが言葉を繋げる。

「…上の層から思ったが、仲が良いのだな貴様ら。違う時代の人間なのだろう?喧嘩とかしたりしないのか?」

【カルデアは色んな英雄が居るから、どうしても分かりあえない鯖同士もいるよ?でも、それでも、皆世界を救うために協力してくれてるんだ】

「それにこのマスターがお人好だからね。私達はもとの平和な日常に少しでも早く戻って欲しいと思っているんだ」

「…そう、か…。…そうか。……良い、仲間なのだな…。」

先を歩いていたドゥリーヨダナが振り返り首を傾げながら聞いてくる。今まで起きた色んなトラブルを思い起こしながらも笑って答えると、苦笑しながらフィンが言葉を紡いだ。

ドゥリーヨダナは大きく目を見開いたかと思えば、複雑そうなー眩しいものを見るような、苦しそうな・泣き出しそうなー表情をして此方を見つめてくる。

何を言うべきか分からずに思わず無言になってしまったが、ゆらりと体が振れるような感覚を感じたため慌てて周りを見渡す。直ぐにドンと大きな音を立てて、まるで大地震が起きたのでは無いかと思うほどにグラグラと大きく長い衝撃に襲われた。

【止まった…?】

「マスター!良かった。無事だったのか」

【ジーク!】

安堵するようにため息を吐くと、キョロキョロと洞窟内を見渡しながら此方に走ってくるジークがやってくるのが見えた。その姿は雨に濡れているものの、何処かが傷ついている様子は見られなかった。

「あぁ。良かった無事だったのだね。安心したよ。彼も一緒にレイシフトしたメンバーの1人だ。この世界は酸性雨が降っている怪我を負っているかと思ったが…。そうでは、ないようだね…?」

「酸性雨……?雨は降っていたが痛みを感じなかったぞ?」

「……は?」

【ドゥリーヨダナ!?どうしたの!?】

安堵するように言葉をかけるフィンに対して、不思議そうにジークは首を傾げた。その言葉を聞いてあり得ないものを聞いたとでも言うような表情をしたかと思えばスコンと無表情になり、ドゥリーヨダナが急にジークが来た方角へと走り始める。急なことだったため反応できなかったが、慌てて後を追いかけた。

追いついた先でドゥリーヨダナは洞窟の外に出て、ざぁざぁと今までと同じように雨が降っているその場所に無防備に立っていた。だが、その雨は体を濡らすだけで何かが溶け落ちるような音をたてていない。

【……ドゥリーヨダナ……?】

「………。」

顔の大部分を手で覆いながら俯き、こちらに背を向けたまま雨に当たり続けるドゥリーヨダナに呼びかける。

手をだらりと下げて無言で此方を振り向いた彼の顔を見て思わず目を見開いてしまう。口は笑みを浮かべようとして失敗したのか歪にひしゃげ、瞳は痛みを湛えたような色を宿し雨に濡れているせいか泣いているように見えた。

「…さぁ、仲間を探すのであろう…?先に進もうではないか…。」

「…マスター。事情が込み入っているのはなんとなく分かるが、ここは取りあえず彼の言葉に従った方がいいと思うぞ。」

【……ジークの勘ってよく当たるもんね。わかったよ。…引き続き宜しくね、ドゥリーヨダナ。】

誰が見ても平静ではないと分かる表情をしているにも関わらず、彼は立ち入って欲しくないのか線を引くようにして話しかけてくる。それを聞いたジークは小声で彼が感じたことを伝えてくる。ジークの勘は結構当てになるため、ドゥリーヨダナがどうしてそんな表情をしているのかを問いかけたい気持ちを抑えて小声で了承した。ドゥリーヨダナに聞こえるように先導を頼むと彼はぐっと目を瞑りくるりと背を向けてゆっくりとした速度で歩を進めて行った。

 

〜銅素材が比較的多めにドロップするボスは牛若、銀素材が比較的多めにドロップするボスはシグルド。取り巻きはカウラヴァの一般兵。〜

 

「ほら、また見えてきたぞ。」

【ベディヴィエール!?どうしてここに?】

「……私はこの世界の管理者のようなものだと名乗る人物から、ここを守護してほしいと願われて召喚に応じました。申し訳ありませんが、ここから先に進みたいのなら私を倒してください。」

ドゥリーヨダナが指差した先には今まで通りに岩山とそれに設置してある重そうな扉が存在していた。ただ、今までと違うのは実態を持ったサーヴァント ー ベディヴィエール ー が居たことである。

彼がここに居る理由が分からずに驚いて声を上げてしまう。

ベディヴィエールは困ったような顔をしながらも、剣から手を離さず先へと通してくれそうにない。

「彼を説得するのは無理です。戦って無力化するしかありません。」

「マスター、指示を!」

「円卓の騎士の一人、ベディヴィエール。参る!!」

彼の人となりを知っているのか、トネリコは彼に力を示す事を提案する。フィンも戦闘準備をし始めたのを見届けてベディヴィエールは名乗りをあげて剣を手にこちらへと立ち向かってきた。

 

BATTLE 3/3

敵は取り巻きの兵士3体・3体・2体とベディヴィエール(追加で2ゲージ)。

パーティーは自由に編成が可能。


「…申し訳ありません。負けてしまいました。」

【ベディヴィエール、もしかしてこの精神世界って誰のものなのか知ってるの?】

「私から教えられることは何もありません。ですが、もうお気づきなのでは?」

「…円卓の騎士、ベディヴィエール。良い剣筋でした。」

「…ふふふ…。貴方に褒められるなんて、なんだか、とても…不思議な…気持ちに…」

キラキラと退去する光を纏いながらベディヴィエールは言葉を紡ぐ。召喚した主を教えてくれるのでは無いかと思い、ここの精神世界の主が誰か問いかけるが彼は口を割ろうとはしなかった。

トネリコがベディヴィエールを称えると彼は驚いたように目を見開いた後、眩しいものを見るような顔をしながらも言葉を全て言い切ることなくその場から姿を消していった。そしてその場所には今までと同じように髪飾りが出現する。

「最後の2人はアンデルセンとアレキサンダーだ。アンデルセンは戦闘を苦手としているからもしかしたら合流して一緒に居るかもしれない。だから後少しだとも。」

【…うん。そうだね。先に進もう。】

静けさを吹き飛ばす為かフィンは明るく言葉をかけてくる。それにほんの少しだけ救われながらも口を開いた扉の先へと歩を進めて行った。


 ~人物設定~

◯ドゥリーヨダナ

いいなぁ・・・。うらやましいなぁ・・・。そんな表情をしながらカルデア一行を眺めていた。降っている雨が酸性雨で無くなってしまったことにショックを受けているものの、どこか納得もしている。

あと数回大きな地震が起きればこの世界は崩壊することをただひとり知っている。


〇トネリコ

円卓の騎士であるベディヴィエールが味方をしてもいいと考える相手がいるのが分かってしまい物凄く複雑。感じたことをそのまま言っただけなのに嬉しそうな顔をされたのでちょっとびっくりしている。

彼は私を知っているのでしょうか・・・。


〇フィン・マックール

空気を読んで敢えて茶化すような会話をした。一緒にレイシフトしたジークと怪我無く合流できたことに安堵している。

この世界へとレイシフトできる適正メンバーは他にもおり、彼がマスター救援部隊の第1陣メンバーといて選ばれたのは恐らく偶然である。


〇ジーク

カルデアからの救援メンバーその2。

夢の奥深くにマスターが囚われたとしても、その翼で何もかもを振り払うようにして空を飛び目覚めさせることが出来るだろうという理由からマスター救援部隊の第1陣として彼だけはメンバーとして確定していた。

俺なりに頑張るぞ、マスター。この翼でどこへでも飛んで見せよう。


〇マスター

階段を降りるたびに頭の中で見える映像の内容とこの精神世界を探索するうちに映し出されるその世界がどこであるのかを気が付き始めている。もしかしたら・・・という特異点の候補が絞り込まれているものの、できれば当たっていて欲しくないと思っている。



黄金の杯が急に出現した。これは一体何だろうか。早く消えてなくなって欲しい。

ー消えろ、消えろ。お前を使うものなんてここには現れないー

睨みをきかせるが黄金の杯は変わらずそこにある。変質せずにそこにある。

誰にでも触れられるようにそこにある。

ーやめろ、やめろ。触れるな、触るな、願うな!ー

粘ついた気配の纏ったヒトが聖杯を見つけてしまった。ニタニタ嗤って黄金の杯を掬い上げる。ケラケラ笑って抱え上げる。黄金の杯はそのヒトの願いを叶えてしまっていた。

ーあぁ、あぁ。あぁ!どうしよう、どうしよう、どうしたら。ー

何にも出来ないと分かっているのにあの子の居る場所に目を向ける。既に異変は成っていた。よりによって半神が最初に影響を受けていた。

ーヒトとして生きるのを楽しんでいたくせに。あの子が居たからヒトとして留まれているくせに!ー

次に影響を受けたのは無辜の民達だった。ヒトというのは恩を仇で返す生き物が居ると知っていたから、これに関しては何とも思わなかった。ただ、あの子が徐々に萎れていくのが心配だった。

3番目に影響を受けたのは棍棒術を教える師範だった。もう、笑うしか出来なかった。今すぐにでも何もかも放り出して全てを気にせず逃げてほしかった。

4番目に影響を受けたのはあの子が友と呼んでいた存在だった。ガラガラとあの子の中にある何かが崩れ去るような音が聞こえてくる、そんな顔をするようになってしまった。

最後に影響を受けたのはあの子の家族だった。独りになってしまったと諦めのような心持ちをしていたのに、あの子の妻だけは隣に居た。絶望の淵にいるあの子の事をずっとずっと支え続けていてくれていた。

ーいいの、いいの。もう、いいの。私のことを気にしてくれてありがとう。何もかもから逃げ出して何もかもが終わるその時まで生きていてくれば、それでいいの。ー




●すべての元凶である黒幕

マハーバーラタに名前が載っている悪人。何かしらの影響で自分の行きつく先がビーマセーナによるタヒであることを知ってしまう。タヒにたくない・・・どうすれば・・・と思い悩んでいたところ聖杯を見つけてしまう。

どうしようもない屑である自身の事を棚に上げ、自分が未来でタヒんだのはドゥリーヨダナが原因の1つであると思い込み、カリの化身たる化け物は排除されるべきだと考え聖杯を使用。

宿敵に力を認められるなんて間違っている。部下が多く付いてくるなんて間違ってる。朋に恵まれるなんて間違っている。家族に愛されるなんて間違っている。

全てを滅ぼす凶兆ならば、全てを失った上で惨たらしくタヒんでしまえ!!

完全なる逆恨みである。

聖杯を使いマハーバーラタ関係者に対する感情操作の術を発動させた後は隠れてドゥリーヨダナから身内が居なくなるのをニヤニヤ見ており、聖仙たるヴィヤーサには聖杯の呪いが効かないのではと考え、彼が干渉できないように結界を作るなど妨害工作を行い徹底して表に出てこなかった。

ドゥリーヨダナがボロボロにされバーヌマティーの前に突き出される場面に至り、誰も邪魔はしないだろうと慢心してずっと待ち望んだ彼にとって最高()の催し物を直で見るために観客の1人として紛れ込んでいた。聖杯は念には念を入れて隠れていた拠点に置いてきたため、彼自身を守る術はどこにもなかった。

因果応報・自業自得とはまさに彼に送られるべき言葉であろう。

ドゥリーヨダナ(プリトヴィー)に多くの人間と一緒にぐちゃぐちゃにされた。

生き残った者たちで遺体の見聞をした際、聖杯の残り香を感じるため今回の元凶であると分かったものの誰であるかは判別不明になってしまった。

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