泥中の花 ー地下1階(仮)編ー

泥中の花 ー地下1階(仮)編ー


【階段を通る時に見えた映像って、ヴィシュヌって単語があったから、インドの神様の視点だったのかな?】

「恐らく、インドの大地の女神プリトヴィーのものでしょう。彼女が関係している割にこの世界に神秘の気配がしないのが気になりますが、先に進めは分かるかもしれませんね。」

周りに誰もおらず一人っきりの感じがしたため、なんだか寂しく感じるような映像だった。疑問に思った事を聴くと、考え込むようにしながらもトネリコは質問に答えてくれた。言葉にしたこと以外にも何か気になることがあるのか考えこんているようだった。

「マスター、無事だったようだね。おや?そちらの麗しい淑女は初めてみる顔かな。初めまして、レディ。フィオナ騎士団が団長、フィン・マックール。どうぞ、お見知りおきを。」

「…雨の国の魔女、トネリコと申します。もしかして、カルデアからの救援ですか?」

【…救援ってフィンだけなの?そんなにここって安定してない感じ?】

階段から降りてしばらく歩くと洞窟の中を探索していたのか、キョロキョロと周りを見渡していたフィンの姿があった。足音に気が付いたのか此方を振り向きながら安心したように微笑みつつ此方の様子を眺めた後、隣に居たトネリコを見て驚いたように目を見張りカルデアで女性にのように微笑みかける。対するトネリコは眉を潜めるものの、普通に対応をしていた。

フィン以外のサーヴァントが周りに居ないため、レイシフト出来たのは彼だけなのかと驚きつつ問いかけてみる。

「私はカルデアからの援軍で間違い無いとも。第一陣として私を含めて4人のサーヴァントがレイシフトしたはずなのだが、見かけていないのかい?」

「マスターと一緒に居たのは私だけですし、初めて他のサーヴァントに会いましたね。」

【カルデアからの救援ってことは、この世界が何なのかわかってるよね?ここ何処なの?】

一緒にレイシフトしたメンバーを探しているのかぐるりと視線を回すものの、ここに居るのは自分も含めて3人だけだった。分からない事を考えていても、何も変わらないため気を取り直して問いかけてみたが、別の方向から足音が聞こえてきた為全員で口を噤む。

「…どうしてここに人がいる、んだ。」

【ドゥリーヨダナ…?】

「…私の事を知って、おるのか…。というか、質問に答えたらどう、だ。」

足音の聞こえた方角、フィンの後ろから声が聞こえそちらの方向へ目線を向ける。するとドゥリーヨダナが此方に向かって歩いて来ていた。カルデアに居るバーサーカーのドゥリーヨダナよりも若く、服を着込んで居るのに関わらず、体の輪郭が薄く感じてしまう。

彼は不機嫌そうに眉根を顰めて此方を見つめ、ピリピリとした気配を纏い警戒しているようだった。

「私達が何故ここに居るのかは分かりません。気が付いたときにはここに居ました。」

「…崩壊しているから、歪が出来やすくなっていて、そこから迷い込んだのか…?」

【…ドゥリーヨダナはここが何処か知ってるの?】

トネリコが庇うように自分の前に出てドゥリーヨダナに現状を説明する。首を僅かに傾げ小声で独り言を呟き、納得したのか警戒を解きジロジロと此方を見つめてくる。なにか知っているような独り言だったためドゥリーヨダナにもこの世界が何なのかを聞いてみる。

「簡単に言うと、ここは精神世界のような場所、だ。正確には違う、のだが、まぁ大雑把き括れば同じようなもの、だな。お前達全員が気が付いたらここに居たのか?」

「私はマスターを迎えに来たのだよ。…実は他の仲間とも逸れてしまってね。他にサーヴァントを見かけていないかい?」

「…はぁ…。仕方ない。一番ここに詳しいのは私だから、な。案内してやろう。」

【ありがとう!助かるよ】

「好き勝手に動かれる方が迷惑、だからな。」

一定の距離から動くことなくドゥリーヨダナは不機嫌そうな様子のまま簡潔にこの世界のことを話した。それを聞いたフィンは眉根を下げ心底困っていますでもいうような大げさな身振りで隠すことなく今の状態を説明した。

ドゥリーヨダナは暫くじっと見つめていたが、面倒臭そうにため息を吐き付いてこいとでも言うように背中を向ける。

お礼を言うと彼は気にするなとでもいうように、ひらひらと手を振り振り返る事なく先へと足を進め続けていた。

「…彼の言う通り、ここは誰かの精神世界のような場所だ。私達は眠ってしまっているマスターに夢渡りをする要領でここにレイシフトすることが出来たんだ。」

「精神世界と聞いて、納得しました。」

【どうして?】

離れないようにして背を追いかけながら歩くと、フィンが近づきドゥリーヨダナに聞こえないようにするためか小声で話しかけてくる。

それを聞いたトネリコも小声で納得するように頷いた。何がなんだかさっぱりわからないものの、そうした方がいいと思い二人に倣って小声で問いかける。

「先程の階段を降るたびに何かに潜り込むような感覚があったんです。それと私達が目を覚ました場所で降っていた雨、あれは恐らく何かに対する深い恨み・憎しみ・哀しみ・怒り等の負の感情が酸性雨という分かりやすい形で具現化しこの世界の全てを削り続けているのでしょう。」

「…成る程。つまり、誰の精神世界かは分からないが自らを傷つける程の憎悪のようなものを抱え込んだ人物の可能性が高いな。先程の彼もどうしてここに居るのかが気になるし、慎重に進んだほうがいいだろうね。」

【そうだとしても、助けに来てくれた皆を迎えに行きたいし、この世界の事もあのドゥリーヨダナの事も知っておきたいんだ。だから、協力して欲しいんだ】

「マスターなら、そう言うと思いましたよ。」

「マスターなら、そう言うと思ったさ。」

いつの間にか魔法を使ってこの世界を解析していたのか、分かった情報を手元に浮かべながらも厳しい顔をしながらはなす。トネリコの手元に魔法で目に見える形にしている透明なデータを覗き込見ながらフィンも警告を告げた。それでも、このまま引き下がるのは嫌だと感じたため真剣な表情で2人の顔を見つめ返す。

2人とも呆れるような仕方ないなとでも言うような表情をしながらも同時に同じ言葉を言いながらもしっかりと頷き返してくれた。

「おーい。付いてこんのか。置いていくぞ。」

【あ!ごめんごめん。直ぐに行くよ!】

いつの間にか距離が開いてしまったのか、先を進んでいたドゥリーヨダナが少しだけ戻ってきて此方に声をかけてくる。慌てて近寄ると呆れたようにため息を吐きながらもまた一定の距離を保ちながらも先へと歩を進めていった。


 フィールド名が「地上」から「夢の入り口」という名前に変わり、「地下1階」も「夢の1層目」という名前に変化する。


〜金素材(綺麗な装飾の施された何かの破片)が落ちるクエストのボスはコルデー。取り巻きはメイド服っぽいのを着てるゾンビ

全素材が少しずつ落ちるクエストのボスは水着のスカサハ・スカディ。取り巻きはヤドカリとアーティスティックフィッシュ〜


「あの岩に付けられた扉を潜ると更に下へといける。ここには他のものはおらんようだし、他の貴様達の仲間はこの先に居るのではないか?」

そう言ってドゥリーヨダナが指差した先には大きな岩山のようなものとそれに取り付けられた重そうな扉と此方に敵意を向けてくる大型幽霊のエネミーが立ち塞がっていた。

「…くない」

【何かしゃべってる?】

「幽霊ですし、恨み言ではないでしょうか?」

「わたしたちは、悪くない」

「…………。」

幽霊が何か喋っているのか言葉が聴こえたため、何て話したのか聞こえなかったかトネリコに目線を向けるが聞こえなかったのか首を傾げる。

幽霊がもう一度言った言葉にドゥリーヨダナは表情を消し無言で相手を見続けていた。

「皆、皆、そうしてた。誰も、誰も、咎めなかった。だから、だから、悪くない。……わたしたちは!悪くない!!」

「此方に襲いかかってくるぞ!気を付け給え!」 

 

FINAL BATTLE 1/1

敵は追加で2ゲージある巨大幽霊1体。

パーティーは自由に編成が可能。


「消えたくない。皆同じ事してたのに。渡さなくって・やらなくって・傷つけて・排除しただけなのに。…いやだ。ちがう。そうじゃ、なかったのに。……ごめ、んな……」

「…もう終わってしまった事への謝罪など無価値である事がわからんのか…」

【…扉が開いたみたい。…行こうか。】

全てを言い終える前に大型の幽霊はその姿を崩壊させ、光の粒となり消えていってしまった。酷く冷めた口調でドゥリーヨダナが小さく呟いた後、幽霊の中から髪留めが現れる。浮遊したままそれは扉へと吸い込まれ、重い音をたてながら先へと進む口を開け放たれた。

何とも言い難い雰囲気が漂っていたが、このまま留まる訳には行かないので、気持ちを切り替えるために言葉に出してから足を進めていった。

 

 ~人物設定~

◯ドゥリーヨダナ

この世界の案内役を買って出ただけで、仮契約はしないしするつもりもない模様。

バーサーカーのドゥリーヨダナよりも若く見えるし髭がない。髪は腰まで伸びている。身長は同じ位に見えるが体が薄く見える。具体的に言うなら、彼よりも体重が20kg以上少ないのではないかという具合。

服は着込んでいるものの、酸性雨に当たったせいか所々解れがあったり穴が開いていたりしている。

人と一定の距離感を保ったまま話すし、口調も最初は不自然な所で途切れていたが徐々に普通に話すようになった。

様々な武器を使ってトリッキーに戦う模様。

 

◯フィン・マックール

カルデアからの救援メンバーその1。

フィンの夢渡りの能力を利用して「精神世界≒夢」という定義付けをし、マスター達が居る所にレイシフトを行った。

カルデアへと戻るアンカーのような役割をしており、自分を含めた4人のサーヴァントを送り込むことが出来たがレイシフト中にバラバラになってしまった模様。

 

◯トネリコ

フィンが他のカルデアからのメンバーとレイシフトで逸れていて状況が分からないのに関わらず口説かれたので若干引いている。

マスター、この人に任せて本当に大丈夫なんですか?

 

◯マスター

ドゥリーヨダナの可笑しさに気が付いているものの、指摘するとダメだと感じたためお口チャックしている。

フィンからカルデアから支援を得られる魔術道具をもらったため限定的だった英霊召喚が通常通りが出来るようになった。


ーゆらゆら。ふわふわ。ー

寝ている所、急に声をかけられた。神々が協力して重さを減らせるものを創ったらしい。

ーふーん。そうなんだ。ー

期待なんてしてなかった。だってずっと変わらなかった。耐え忍んでいただけだった。

きゃらきゃらきゃらきゃら声がする。キラキラキラキラ光ってる。

ずっとずっとその昔、私に向けられていた信仰にほんの少し似ているような輝きだった。

ーあなたはだぁれ?ー

ちいさなちいさなヒトだった。半神に吹き飛ばされるくらい弱くて脆いヒトだった。

ーこの子が例の創造物?ー

びっくりしすぎで思わず目を向けてしまう。久方ぶりに大地を見た。やっぱり全然変わってない。苦しいだけの場所だった。

そんなこと知らぬとでも言うように子供はあっちこっちに動いていた。大切な家族を守るために。大切な家族を害されないために。只管前に進んでいた。

ーどうして?苦しいでしょう?痛いでしょう?どうして矢面に立とうとするの?ー

どっしりとした幹のように立ち上がり、ふわりと咲く花のように笑い、キラキラと宝石のように輝いていた。

まるで新しい息吹のようだった。まるで新しい恵みのようだった。

半神を消すために毒を盛って川に落としたのにはびっくりしたけど、全然気にならなかった。

ーあの子はこれからどうなるのだろう。あの子は誰と出会うのだろう。あの子はこの大地で笑っていてくれるだろうか。ー

今まで使ったことがなかった女神の権能を使い並行世界を覗き込む。

”正しく”終わり。足りずに変質し。数え間違いで壊れ。私の一部になり。違うものに攫われて。間違いだと捨てられ取り憑いて。変質して歌を歌い。血の繋がらない家族を得ていた。他にもまだまだきっとあるのだろう。

全部、全部、終わりが違う。全部、全部、消えてしまう。神々に花を贈られ天へと登ったのは果たして祝福だったのだろうか。

ここもきっと違うのだろう。”正しい”終わりは迎えないのだろう。凄く、凄く、嫌な予感がする。

ー私が願うのは烏滸がましいけど、どうかどうか笑っていてー

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