泥中の花 ー地上(仮)編ー
注意:タイトルとことわざの泥中の蓮は関係ないので、それを前提にしてください。
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?「・・・ター、起きてください。」
マスター【むにゃむにゃ・・・】
?「・・・スター、マスター!」
マスター【・・・後・・・5、分・・・】
?「これが噂のレムレム状態。・・・仕方ありません。緊急事態ですし、これとこれを使って」
マスター【すやすや・・・】
?「必技!〇者の〇覚め!!(杖で金属片をガンガン叩き、その音を魔法で大音量にしている)」
マスター【うわわわわ・・・。起きた、起きた、起きました!!その音やめてー!!!】
間。
「おはようございます。マスター。すみません、なかなか起きなかったので。」
【・・・うぅ・・・。だいじょうぶ・・・。起こしてくれてありがとうトネリコ。】
金属片を消しながら問いかけてくるトネリコに未だに残っている違和感を消すように頭を振ってから返事をする。
周囲を見渡すとゴツゴツした岩に囲まれており、地面も凸凹していた。良く寝るとはいえ、さすがにこの状態で寝続けるのは流石に自分でも如何なものかと思ってしまう。
寝る前の記憶を思い起こしてみると、しっかり自室に入ってからベッドに横になったため、寝ている状態から何処かの特異点に引き込まれた可能性があると判断した。
【トネリコ、ここってどこなのか分かる?周囲に誰か人は居た?】
「マスターが寝ている間にこの洞窟を見回っていましたが、外に出る出口が1つあるだけで誰かが居たような生活感はなさそうでしたよ。」
【う~ん。そっか。調べてくれてありがとうトネリコ。それなら、外に出て調査をした方がいいかな?】
キョロキョロ周りを見渡しながらトネリコに問いかけるが、彼女が言うように確かに見える範囲でも人が暮らしていたような形式はなく、自然のまま放置されているような雰囲気を感じる。外に出る道があるならそちらの方へと移動した方がいいと思い、立ち上がって伸びをした。
「外に出ても何も情報はないと思いますよ。私の別にサーヴァントがレイシフトしているのなら話は別ですが・・・」
【どういうこと?】
「見てもらった方が早いと思うので付いて来てください。」
困ったように眉根を下げるトネリコを見て首を傾げる。今までの特異点でも情報が1つもないなんてことはなかったため、そんなことがあるのかと不思議に思ってしまう。そんな風に考えたのを察したのか、トネリコも腰を上げスタスタとでこぼこ道を歩き始めたため置いていかれないように慌てて隣に並んだ。
外に出れる方へと足を進めると、ざぁざぁ雨が降っているような音が聞こえてくる。光が見えてくる方へと目線を凝らすと、どうやら本当に雨が降っているようだった。
「そこで見ていてくださいね」
【なにこれ、こっっっっわ!!】
そう言って徐に地面に落ちていた手のひらに収まるくらいの枝を拾って洞窟から外に出すようにして動かしてみせる。何が起こるのだろうかとその動作をのんびりと見送ってしまう。
すると、洞窟の外へと出された木の枝が雨に当たった瞬間に見るも無残に解け落ちて途中から折れて地面に落ちてしまった。その様を見てしまい思わず悲鳴を上げてしまう。
「この洞窟は何かしらの魔術で護られているようですし、カルデアからの救援を待つならこのままここに居たほうが安全ですよ?」
【・・・それは、出来ない。ここに居るのは何かしらの意味があると思うから】
「そう言うと思ってました。・・・取りあえず外に出ても大丈夫なようにあなたの周りに魔法で障壁を張りますね」
ぐるりと洞窟を見回しながら、トネリコは言うが、危険性のある世界だとしてもここに自分が居る意味があるのではないかという思いと、先にこの場所がどういう場所なのかを把握しておきたいという思いから出た言葉だった。
真剣な表情をしていたためか、トネリコはため息をつきながら呆れたように言葉を呟き、持っていた杖を此方に向け魔術を発動させる。
「取りあえず、これで大丈夫だと思います。私以外のサーヴァントももしかしたらここに居るかもしれませんし、気をつけながら散策しましょうね。」
【ありがとう。トネリコ。それじゃあ、行こう。】
杖を下げて敵対サーヴァントが居る可能性を考えたのか気遣いながら意見を言うのを聞きながらも、意思を曲げるたもりは無い為、お礼を言って彼女と共に雨の降る中に飛び出していった。
〜一番最初の銅素材(蓮の花びらのしおり)が落ちるクエストのボスはシャドウサーヴァントのビーマ。銀素材(ミサンガ)はシャドウサーヴァントのユディシュティラ・オルタが出現する。取り巻きはパーンダヴァの一般兵。〜
【パーンダヴァの兵士やシャドウサーヴァントのビーマ、ユディシュティラ・オルタのシャドウサーヴァントが居たってことは、ここはマハーバーラタ関連の場所なのかな?】
「インドラやパルジャニアが雨を司る神として祀られていますが、酸性雨が発生し始めたのは近代ですからね。どうなのでしょうか・・・。」
衣服や武器を雨で溶かされていながらも此方に立ち向かってきた兵士たちを振り解きながらも前に進み、トネリコに問いかける。
彼女は油断なく周囲を警戒しながらも質問に答え、敵を退けつつ並走していた。
【あ!あれ、何だろう・・・。】
「私たちが最初に居た洞窟と同じように雨の影響を受けていませんね。取りあえずあそこで一度休憩をー!?」
酸性雨のせいで高さのある物体の存在しない平野だったが、走るたびに前に大きな影が見えてくる。近づくと最初に身を寄せていた洞窟のように崩れることなく、大きな岩のようなものが見えてきた。岩の下で雨宿りが出来るのではないかと一安心したところ、そこに立ちふさがるようにして魔力が集まり始める。
魔力は人を形作り、アルジュナ、ナクラ、サハテーヴァのシャドウサーヴァントへと変わる。彼らは大きな岩のようなものをじっと見つめているようだった。
彼らの目線の先には固く閉じられた重そうな扉があり、そこを開けようとしているのか攻撃をしているようだった。
「マスター、どうしましょう。今はまだ私達の事に気が付いて居ないようですが・・・。」
【先に進むなら正面突破だ!】
→【気づかれないように不意を突こう!】
「分かりました。ここから攻撃すれば気付かれないでしょう。マスターはそこの比較的大きな岩陰に隠れていてくださいね。」
【うん。援護はするから思いっきりやっちゃって!】
「・・・ふふ。えぇ。分かりました。救世主トネリコとしての力、よく見てくださいね。」
FINAL BATTLE 1/1
敵はアルジュナ、ナクラ・オルタ、サハテーヴァ・オルタのシャドウサーヴァント。
自陣はトネリコのみ。(下の選択肢を選んだため、最初に遠距離攻撃の演出が入り、相手のHPが減る。)
【お疲れ様、トネリコ。怪我はない?】
「勿論です。マスターが支援してくれたお陰ですね。・・・おや、あれは?」
影の彼らが消え去ったのを確認してトネリコへと駆け寄る。彼女は余裕たっぷりに微笑みかけてくれた。その後何か変化がないかと周囲を見回していたが、ある一点で彼女の視線がとまる。
そこはシャドウサーヴァントの彼らが消えた辺りの床下だっため、もしかしたら倒した際に落としたのかもしれない。キラリと光る物が在ることに気がつき拾ってみる。
【これ、髪留め?綺麗な細工がされてるね。】
「何か魔法が込められていますね。少し待ってください」
美しい細工の施された高価そうではあるものの、落ち着いたデザインの髪留めであることに気がつく。トネリコが横からそれを覗き込み杖を向けると、急に光輝き強固な扉へと吸い込まれていった。そうして徐に重たい扉があっさりと開いていった。
【取りあえず、通れるようになったのかな?洞窟みたいになってるみたい・・・?】
「そうですね。下へと向かう階段のようなものがあるみたいですね。雨は流れ込んでいないみたいですが、気を付けて進みましょう。」
【うん。そうだね。行こう。】
~人物設定~
・マスター
自室で寝ていたら見たことのない洞窟で寝てたし、暫く耳がキーンってなった。
今度はこういうタイプの特異点かー。よくある始まりのやつー。と慣れ切ってしまっている。
カルデアとは通信がつながらないだろうと思っているため、管理室につなげる道具を使おうとは考えていない。1人じゃなくて少しほっとしている。
・トネリコ(霊基第1臨で固定されている姿)
洞窟の外が雨であり、彼女の”雨の魔女”という名前の縁からかマスターと一緒にこの世界に引き込まれているサーヴァント。
マスターが起きる前に洞窟内を散策し、他に出口がないことを確認し終えている。その確認が終わっても寝たままだったため強硬手段をとった。
色々な本を読み、有効そうな手段であれば躊躇うことなく再現する。
カルデアからの他のサーヴァントも居るだろうと思っているし、早く戻るべきだとは思っているが、戦闘が大変だけれども独り占めをしたいという欲もあるため合流するまでは存分にその立場を満喫する気満々。
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ざわざわと色んな音がする。
ー守りたかった。大切だった。慈しんでいた。ー
重くて痛くて折れてしまいそうだった。
ー苦しかった。投げ出してしまいたかった。ー
他の神々はくすくす笑って観てるだけ。
ーどうして?どうして?わたしだけ?ー
どんどんどんどん生き物が増えていく。悪魔が降り立ち好き勝手暴れまわられる。
ーいたい。くるしい。いやだ。いやだ。ー
無理だった。これ以上は無理だった。
ーいたい。いたい。きらい。きらい。ー
助けて欲しいと声をかけた。待って欲しいといわれただけだった。神の化身が降りてもっと重たくなっただけだった。
ー知らない。知らない。気にかけてやるもんか。ー
ヴィシュヌに怒られた。
ー寂しい。悲しい。哀しい。ー
大地の重さは減らないのに。私の負担は減らないのに。どうして私だけ耐えなきゃいけないの?
ー眠れ、眠れ。悲しまないように。沈め、沈め。痛みを感じぬように。ー
大地を見るのを止めていた。ずっとずっと変わらなかった。ある時ほんの少し減ったけど、それでもまだまだ重かった。