泥だらけのお嬢様
泥団子の術式を持つ術師と指パッチンで斬撃を飛ばす術式を持つ術師が補助監督の運転するワゴン車に揺られながら、今日行った任務のことを思い出していた。
「泥団子さんってかなりの努力家ですのね!巨大な泥団子を作るだけでなく泥の人形を作る拡張術式だなんて」
指パッチンの術師は泥団子の術師を褒めちぎる。それはお世辞などでは全くなく、彼女は本心から彼を敬っていた。 しかし、泥団子の術師は謙遜するように掌を振る。
「いや、それでもワイはお前に怪我をせてもうた。その腕の傷…まだ痛むやろ?」
そう言われて指パッチンの術師は赤く染まった制服の袖を抑えた。彼に言われて一度引いた痛みが戻ってきたのだ。
「えぇ、確かに少し痛みますわね。しかし、この程度のことで怯んでなどいられませんわ!なんせ、私は立派な呪術師ですもの!もちろん、貴方もね」
そう言って胸を張る彼女に泥団子の術師は頬を赤らめる。それから泥団子の術師が頬を赤らめるのを見て、指パッチンの術師も頬を赤めた。
「…やっぱり、お嬢は可愛えな」
「…貴方も素敵ですわよ?」
二人の熱気を浴びて、運転席の補助監督は気まずそうにすることしかできなかった。