波打ち際の恋人たち

波打ち際の恋人たち


目を閉じて浮き輪に乗って波に揺られていると、眠気がやってきた。

じりじりと焼かれるような熱さの中でうつらうつらとしていると、波しぶきが降りかかってきた。

冷たさが心地いい。

肩紐のないフロントリボンのビキニとパレオの組み合わせは、涼しさと暑さの両方を楽しめて個人的には買ってよかったと思っている。

眼を開くと眩しさが襲ってきたのでそれを遮ろうと手を翳すと、日光が掌を透かして目の前が燈色になった。

明るさに目が慣れてきてようやく蒼い空と巨大な白い入道雲が見えた。

海原のほうに目を遣ると水平線がどこまでも続いていた。

反対方向には白い砂浜が広がっている。

それほど人も多くない砂浜では、レジャーシートを敷いたサマーパラソルの下でガガガクラークが座っていた。

膝枕をしているようで、よく目を凝らすと太腿の上に頭を置いているのはガガガカイザーだった。

寝ているのか微動だにしない。

羨ましいと思う。

戻ったら私も膝枕をしてもらおうかな。

一緒に来たはずのもう一人——私の恋人の姿はどこにも見えない。

あの人には私服も、水着も特に何も言われなかった。

——喜んでほしくて、気合入れてきたんだけどな。

だからちょっと拗ねて、誰も来ないような沖合で一人ぷかぷかと浮いている。

我ながら子供っぽいとは思うけれども。

時々、あの人が私のことを本当に好きなのかわからなくなる。

思い返せばはっきりと好きと言われたことが無いような気がした。

いけない、必要以上にネガティブになっている。

気を取り直して砂浜に向かって手を振ると、クラークも手を振り返してきた。

こうしていると人魚姫にでもなった気分だ。

こちらとあちらでは世界が違うのだろうという錯覚すら覚える。

声を失ってでも向こう側に行こうとした気持ちが少しばかり分かるような気がした。

ちょっと泳げば向こうに戻れる私が考えても詮無い事だが。

再び瞼を閉じて海の冷たさと日光の温かさに酔い痴れようとした時、お尻を何かが突いてきた。

魚だろうかと思い体を捩って海の中を見たが、透き通る水の中には魚の影はおろか何もなかった。

気のせいかと態勢を戻すと再びお尻を突かれた。

脚の付け根に近い部分を三度も。

少しむっとした。

魚にしては触り方にいやらしさというか、下心のようなものがあるような気がする。

海中にはやはり何もいない。

溜息を吐いて空を見上げようとした時、ざばんと大きな音を立てて大量の水飛沫が振りかかった。

驚いた私はひっくり返って浮き輪から落ちてしまった。

なんとか海面に出て浮き輪を掴むとそこには見慣れた顔があった。

 

「びっくりした?」

「せんぱい~?」

 

二カ月前に付き合い始めたばかりの恋人、ガガガマジシャンだった。

今日は流石にトレードマークの改造制服ではなくカーゴパンツ風の水着だ。

だが、口元を隠すように覆っている布は変わりなく身に着けている。

それで潜っているなんて苦しくはないのだろうか。

 

「いきなり女の子のお尻を触るなんてマナー違反ですよ」

「悪い悪い。かわいらしいお尻だったからついさ」

 

けらけらと笑いながら浮き輪の反対側にしがみつてきた。

二人して一つの浮き輪に向かい合う形で捕まっている。

悪い人ではないのだが、どうもこの人は自分の欲望に素直すぎるきらいがある。

偶には良い方向に向かうこともあるのだが、大抵は悪い方向に転がっていく。

特に女性関連——というか彼女である私が絡んでいると碌なことがない、気がする。

真正面に視線を向けると、先輩の鍛えられた体が視界一杯に広がって少し気恥ずかしい。

先輩もじっと私のことを見つめている。

最初は顔を見つめているのかと思ったが、それよりやや下のほうな気がした。

 

「ガールの胸ってさ、やっぱり大きいよな」

 

胸を抱き身体を捩って視線を遮る。

案の定というか、なんというか——。

溜息を吐いてしまう。

 

「海に来てまでそれですか? もっと他のことは——」

「ガールだってさっきからずっと俺の胸の辺り見てるだろ?」

「それはそうですけど」

 

そうじゃなくて、もっと水着とかそっち褒めてほしいんです——。

そう言おうとしたが、やめた。

相も変わらず先輩はじっと胸を見ている。

 

「ところで、一つお願いがあるんだけど」

「なんですか?」

「抜いてくれ」

「ハァ!?」

「こうやって浮いているとだな」

「浮いていると、なんですか」

 

じとっとした抗議の目で見つめる。

 

「ガールの胸の谷間が目の前に来るわけだ。大きくてハリのいいモノが波に揺れて、ぷるぷるしていてだな、当然見ているとムラムラする。だから抜いてくれ」

「いやです。あそこにクラークちゃんたちがいるんですよ、見られるなんて絶対いやです。それにここ何処だと思ってるんですか」

「だから、あっちでだな」

 

先輩が指差した先には岩場があった。

起伏が激しく、隠れるにはうってつけといった様相をしている。

 

「いーやーでーすー! だいたい、まだ日も高いじゃないですか」

「頼む! この通りだ」

 

先輩は両手を合わせて頭を下げた。

クラークのいる砂浜と先輩と岩場を順番に見つめて考える。

ベッドでならともかく、外でというのは正直やりたくない。

でも、先輩にがっかりされるのはもっといやだ。

我ながら随分後ろ向きな理由だとは思う。

 

「しょうがないですね、入れるのはナシですよ。まったくもう、変態さんですか?」

「ありがとう、恩に着る」

「着ないで下さい、こんなしょうもない恩なんて」

 

数分ほど泳ぐと岩場へと辿り着いた。

パレオが足に絡んで泳ぎにくかったが、頼んだのは俺だしガールは浮き輪に乗ってていいよ、と先輩が言ってくれたのでついその言葉に甘えてしまった。

人一人乗った浮き輪をああも楽々と押し運べるのだから先輩は中々に体力がある。

砂浜を歩いていると足がチクチクとして痛んだ。

せめてサンダルくらいは履いてくるべきだったかもしれない。

丁度三、四人くらいが隠れられる場所があったので、そこへ行くと待ちかねたとばかりに先輩が水着を脱ぎ出し、勃起した男根が露わになる。

 

「まだあんまり経験ないからだと思いますけど、慣れませんね。やっぱりグロテスクです」

「まだ三回しかしてないからな。昼間、しかも外は初めてだし」

「言わないで下さいよ。恥ずかしいですから」

 

三回とも先輩に滅茶苦茶にされるだけだった。

ずっと激しくされて、喘ぎ声を上げていたらいつの間にか終わっている。

気持ちよくないわけではないが、何か満たされないように感じていた。

それが何かはよく分からないけれども。

しゃがみこんで恐る恐る指先で触るとピクリと動いた。

男根を右手で握ってさてどうしようかなと考え始めた時、先輩からストップがかかった。

 

「そうじゃなくてだな」

「え? なにか駄目でした?」

 

触ってはいけないところでも触ってしまったのだろうか。

一気に不安になった。

 

「いや、駄目という訳じゃないんだけど——」

「じゃあ、なんですか?」

「手じゃなくてだな——口でしてくれないか?」

 

理解できなくて暫くぽかんと口を開けて考えて——結局わからなかった。

 

「くちぃ!? 口って、舐めろって言うんですか? これを!?」

 

視線を上げて先輩の顔を見る。

先輩は小さく頷いた。

 

「変態変態変態変ッ態! 性欲お化け!」

 

信じられない。

クラスの女子グループでそういう話が出たことはあったが、まさか自分がそういうことをすることになるとは思わなかった。

何より目の前のこのグロテスクな物体に顔を近づけるという行為自体、何とも言えない忌避感があった。

先輩がしてほしいと言ったことなのだから、と自分に言い聞かせて忌避感を押さえつけるがそれでもあまり乗り気にはなれない。

だけど、やると言ってしまった以上やるしかない。

目を瞑ってちょっぴり出した舌を亀頭にちょん、と触れさせる。

味も感触も分かったものではない。

目を開けたが先輩の顔は見れない。

もし、がっかりした顔をしていたらどうしたらいいか分からなくなりそうだから。

でも、これどうしたらいいんだろう。

 

「あの、これってどうやって舐めたらいいんですか?」

 

つい先輩に聞いてしまった。

先輩は暫く沈黙してから、声を出した。

 

「どうって、カリの裏を舐めたり、咥えたりとか?」

「自分でもよく分かってないことを要求しないで下さいよ」

 

言われた通りにカリの裏に舌を這わせると、ぴくぴくと男根が反応した。

 

「そうそう次は裏筋を」

「ひゃい」

 

更に下に、尿道に沿って付け根付近までゆっくりと舐める。

鈴口にぷっくりと半透明の水玉が浮かんできていた。

気持ち良くなってくれているのだとしたら、それは嬉しいけれども。

 

「ガール、口開けて?」

 

何をするのか疑問に思いつつもあーん、と口を大きく開けた。

 

「咥えて?」

 

先輩はそう言うと私の口に男根を捻じ込んできた。

口からお腹へ、鼻へと、磯臭さが、次いで雄特有の生臭さが突き抜けていった。

 

「んぅぅ!?」

「温かくていいな。頭動かして?」

 

動かしてと言われてもいきなり動かせるわけではない。

なんとか、頭を動かしてゆっくりと男根を口の外へと出していく。

出ていく男根が舌に擦れて、口の中一杯に苦味とえぐみが広がった。

もう少しで全部口の外に出せる、というところで再び奥まで突っ込まれる。

先輩が両手で頭を掴んで勢いよく腰を動かし始める。

 

「んっ! むぅ!?」

 

喉を強く突かれて苦しさと涙が溢れ出てきた。

先輩の太腿を思いっきり叩くが動きは止まらない。

やめて、と叫ぼうとするが口からは呻き声が漏れるだけだった。

 

「出すぞ、全部飲んで」

 

喉の奥に熱いものが叩きつけられた。

飲み切れなかった苦くて熱いねばねばしたものが口の中に溢れてくる。

なんとか吐き出さないように我慢していると、口から男根が引き抜かれる。

耐えきれずに口の中の精液を吐き出してしまった。

 

「げほっ、おえっ、ひどいです先輩」

「悪い、つい」

「うえっ、げほっ、ついじゃないですよ。なんですかまるでモノみたいに」

 

四つん這いになって口内の精液を粗方吐き出したが、それでも苦味と生臭さが残っていた。

涙目でえずいていると内腿に手を当てられた。

 

「なあガール、そろそろこっちもいいよな?」

 

水着がずらされて、秘所をごつごつとした指が撫で上げる。

突然の刺激で身体がびくりと反応する。

 

「ひゃっ! なに言ってるんですか! 出したんだからこれで終わりですよ! それに入れるのはナシって言ったじゃないですか!」

「そうは言うけど、ガールもこんなに濡らしてるわけだしさ」

 

くちゅり、と水音を立てて指が割れ目に沈み込んでくる。

刺激が走って、それに耐えようと反射的に身体が丸まる。

 

「付き合ってから分かったけどガールって結構なマゾだよね」

「はあああ!? 誰が、誰がマゾですか! 先輩が無理矢理してるだけじゃないですか!」

「口ではそう言ってるけど結構感じてるわけじゃん?」

 

そんなわけない、と思う。

毎回毎回、恥ずかしくて死んでしまいそうなくらいだというのに。

先輩を引き剥がそうと身体を動かしたら、膣の浅いところを指が擦り上げた。

 

「ひっ! やだ、やめてください! やだやだやだぁ! やめて! だめ!」

 

先輩が指をガシガシと動かしている。

絶え間ない快感で足が震えはじめた。

涙で視界が歪んでいるなかで必死にいやいやと首を振る。

指が引き抜かれて両手で腰を掴まれた。

逃げようとするが先輩の力が強くて動けない。

すごく、怖い。

震えていると秘所に熱いモノが宛がわれて、押し込まれた。

衝撃で身体が大きく痙攣する。

 

「やっぱりガールも期待して——ってガール!?」

 

いつの間にか大粒の涙がぼろぼろと零れていた。

一度流れ落ちたらもう止まらなかった。

 

「うぐっ、えぐっ、うえぇぇん」

「お、おいガール、悪かったごめんって」

 

子供のように泣きじゃくっている私を先輩が抱きしめる。

 

「せんぱい、わたしのこときらいなんですかぁ?」

「そんなこと——」

「だって、やめてって言ったのに、いやだって言ったのに」

 

両手で涙を拭って、鼻を啜りながら続ける。

 

「だっていつもこうじゃないですか。駄目だって言ってもアソコ舐めたり、嫌だって言っても鏡で入ってるところ見せつけたり」

 

抱きしめている腕に力が籠った。

 

「ごめん。俺ガールが本気で嫌がってるって分かってなかったよ」

 

頭の後ろを優しく撫でられる。

 

「ガールのこと好きだからさ、恥ずかしがってるところとか俺だけに見せてくれるのが嬉しくてつい調子に乗ってた。ごめんな」

 

好き、と言葉にされて少し嬉しかった。

ちゃんと言葉にしてくれるとそれだけで安心できる。

先輩の手は変わらず頭を撫でてくれている。

 

「先輩」

「どうした?」

「私のこと、好きなんですか? きらいじゃないんですか?」

「ああ、好きだよ」

 

じっと目を見つめて先輩はそう言った。

涙を拭って笑った。

 

「えへへ、もっと言ってください」

 

耳元で何度も好きだ、愛していると囁かれて、不安が消えていく。

ねえ先輩——、と声をかける。

 

「たぶん私、先輩とのエッチは嫌いじゃないんです。でもいきなり入れたりとか、シャワーも浴びてないのに指で弄ったりとか、舐めたりとかされるのは、いやです」

 

先輩は小さく頷いた。

 

「あとエッチする前はもっとゆったりしたいです。お話したり膝に座ったり。最中も手を繋いだり、抱きしめたりしてほしいです。キスもいっぱいしたい、です」

 

いきなり先輩の顔が目の前に近づいて唇を塞がれた。

温かい舌が私の中に入ってきてくる。

私も舌を出して絡め合う。

じゅるじゅる、ちゅぱちゅぱと水音だけが響き渡っている。

蕩けてしまいそうなくらい気持ちいい。

息が苦しくなってきたところで唇が離れた。

少し名残惜しい。

 

「こんなふうに?」

「んっ、こんなふうに、です。平気ですか? その、先輩のを舐めたり飲んだりした後ですけど」

「ガールのだから問題ない」

 

えへへ、と思わず笑ってしまった。

私も先輩の背中に腕を回して抱きしめ返す。

すると、お腹のあたりに硬くて熱いモノが当たった。

 

「むう、先輩はやっぱり性欲に素直なんですね」

「面目ない。でも仕方ないだろ、こんな可愛い彼女なんだし」

「しょうがないですね。まったくもう」

 

岩場に手を突いてお尻を突き出す。

パレオと水着をずらして秘所を露わにした。

 

「先輩もオアズケじゃ辛いでしょうし、激しくしないなら、いいですよ」

「本当にいいんだな?」

「優しくですからね。激しくされると、先輩の力強いから壊されちゃいそうで怖いんです」

 

次の日も辛いですし、と言うとばつが悪そうに先輩が笑って、優しくだな、と男根を秘所に宛がった。

ゆっくりと、押し広げながら入ってくる。

奥まで入れられて、大きく息を吐いた。

おっきくて、お腹どころか胸のあたりまで圧迫されているかのような錯覚すら覚える。

 

「んっ、奥当たってますね。そこぐりぐりってしてください」

「こんな感じか?」

 

腰を押し付けたまま、円を描くように動かされる。

 

「んっ♡ はぁ♡ これすきかも、です♡」

「そうか、よかった」

 

先輩はそう呟くと、後ろからぎゅっと私を抱きしめた。

緊張して力が入っているのか少し痛いくらいで。

 

「あっ♡ これ、いいです。先輩の体温いっぱい感じられて。おなかの中も先輩でいっぱいで、すごくあったかいです。もっとぎゅってして下さい」

 

抱きしめてくれている腕に力が入った。

もはや抱きしめるというより締め付けるというのが正しいかもしれないが、それがたまらなく心地よかった。

 

「こっち向いて?」

「なんです——んむぅ♡」

 

振り返るとキスをされた。

目を閉じて再び侵入してきた舌を受け入れる。

上顎をつんつんされたり、歯茎をなぞられたりするのが気持ちいい。

でも、一番好きなのは舌を絡めて唾液を混ぜ合う感触だ。

先輩もそれを分かってくれたのか、舌を絡めてくれた。

先輩の唾液がとめどなく流れ込んでくる。

 

「んっ♡ ちゅぱ♡ んむぅ♡ ひぇんぱぁい♡ もっとぉ♡」

 

求めたら求めただけしてくれる。

お尻を動かしたら、奥をぐりぐりと押し付けてくれる。

じわじわと昂ってきているのが分かる。

お腹の奥がきゅんきゅんと締め付けて切なくなってくる。

 

「しぇんぱい、おく、もっとぉ♡ ぐりぐりって、腕ももっとぎゅっとしてぇ♡」

 

ぎゅーっと一際強く抱きしめられる。

 

「これすきっ♡ ぎゅーって潰されるのすきぃ♡ きもちいいですっ♡」

 

初めてシた時も後ろから圧し掛かられて体重をかけられるのが一番興奮したし、やっぱり先輩の言う通りマゾの気があるのかもしれない。

先輩が何かを呟いて、腰を前後に動かし始めた。

浅いところと奥の両方を擦り付けられて、あっという間に限界が近くなる。

先輩の腰もぴくぴく動いて限界が近そうだ。

さっきまでと違ってこれだけ先輩に包まれているなら、ちょっとくらい乱暴にされても耐えられる気がする。

なにより先輩にもたくさん気持ち良くなってほしい。

 

「せんぱいっ♡ はげしくしていいからっ♡ いっしょにイってください♡」

「本当にいいんだな?」

「いいですからぁ♡ ごちゅごちゅってしてぇ♡」

 

がっちりと上半身を固定されて力強く腰が打ちつけられた。

ぱんぱんと肉同士がぶつかる音と先輩の荒い息が耳によく響いている。

乱暴な腰使いがたまらなく気持ちいい。

今までと変わらないはずなのに、こんなのは初めてだ。

 

「ひゃ♡ ひぃ♡ あっ♡ イく♡ イっちゃいます♡」

「イっていいぞ。イってるところ見せてくれ」

「ひゃい♡ イきます、イくぅっ!」

 

一番大きい快感の波がきて、身体が仰け反ろうとする。

だけど先輩が押さえつけているから身動きができなくて、そのことすら気持ちよくなっていく。

首筋に先輩が吸い付いてきて、悲鳴にも似た甲高い嬌声が溢れた。

 

「ひゃ♡ イってます♡ イってるからぁ♡ らめっ♡ 吸うのりゃめぇっ♡ まひゃイきますぅ♡」

 

イって、押さえつけられて、またイって。

なんとかふわふわした感覚から戻って来たところで息を整えてから、思っていたことを口にする。

 

「せんぱい、おくち寂しいです♡」

「本当にキス好きなんだな。ほらこっち向いて」

「ちがっ、そうじゃなくてぇ」

「そうじゃなくて?」

「先輩の指舐めさせてください♡」

 

口を開けて待ち構える、と人差し指が舌の上に乗せられた。

えへへ、と笑ってから指をしゃぶる。

汗か海水のせいかわからないが、ほのかにしょっぱくておいしい。

 

「んっ♡ じゅる♡ じゅぱぁ♡ むぅ♡ れろぉ♡」

 

指の腹を擽る様に這わせていく。

爪の間を綺麗にしようと舌の先を捻じ込む。

前歯で軽く甘噛みしてから関節に唾液を染み込ませていく。

わざとらしく水音を立ててしゃぶっていると、指が舌の付け根を押さえつけてきた。

お返しとばかりに舌全体で指を包み込んだ。

胸の奥がじんわりと温かい。

 

「うえっ♡ んむ♡ ちゅぱっ♡ はあっ♡ すきぃ♡ せんぱい♡ もっとぉ♡」

「どうだ、おいしいか?」

「ひゃい♡ ちゅば♡ ひぇんぱいのゆびしょっぱくておいひいれふ♡」

 

強めに吸い付くと上顎を爪でカリカリと掻かれた。

気持ちよくて涙が零れてくる。

指が引き抜かれそうになったので、一生懸命吸い付く。

——やだ、いかないで、寂しい。

だが引き留めきれずに、じゅぽん、と音を立てて引き抜かれてしまった。

同時に少し強めに膣奥を突かれて、喘ぎ声が漏れた。

今度は自分の番と言わんばかりに奥をぐりぐり、とんとんと攻めたててくる。

耐えられなくて膝が震えはじめた。

 

「あ゛―っ♡ だめです♡ それだめぇ♡ イっちゃいます♡」

「ガール、俺もそろそろ限界―—」

「出して! 奥ぅ! 一番奥で、いっぱいっ!!!」

「出すぞ、受け止めてくれ!」

「ひゃい♡ せんぱいのせーしぜんぶうけとめますぅ♡」

 

 

奥にがつんと強く押しつけられたかと思うと、お腹の中いっぱいに熱いものが広がった。

同時にまた絶頂に達する。

 

「やあぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡」

 

快感から生じた激しい痙攣は力尽くで抑え込まれて、気がついたときには先輩に抱かれたまま完全に脱力していた。

砂浜に座り込んだ先輩は私を膝の上に乗せた。

お尻に少し硬いモノが当たっている。

指摘したら二回戦が始まりかねないし、気が付かないふりをする。

くたくただけど、さっきみたいにしてくれるならそれもそれでいいかもしれない、と少し思った。

 

「はぁ、はぁ、先輩。すっごくよかったです。こんなにイったのはじめてです」

「俺もあんなに乱れてるガール見るのは初めてだったよ。こういうのが好きなんだな」

「ん、そういうわけじゃなくて——」

 

体重を先輩に預けながら頭を胸板に押し付けると、少し考えてから続けた。

 

「たぶん先輩にされるならなんでも好きなんだと思います。今まではそう思えなかっただけで」

「なんで急に?」

「なんでって、決まってるじゃないですか」

 

体勢を変えて先輩と向き合う。

両脚の間に先輩の身体を挟んで、首に手を回す。

 

「好きって言ってくれたからですよ」

 

今できる精一杯の笑顔を浮かべて言った。

言ったら急に恥ずかしくなってきた。

立ち上がって水着を着直す。

汗と唾液と色々な体液とでべとべとだ。

人前に出れる状態ではない。

 

「流石にこれは着替えが欲しいですね。でも、クラークちゃんたちのところに行くのも——」

 

辺りを見回すと見覚えのあるバッグが置いてあった。

今はレジャーシートに置いてあるはずの私のバッグで、中には真新しい着替えとタオル、そしてシャワー室の鍵が入っていた。

クラークたちのところへ戻ろうとすれば必ず気がつく位置だ。

先輩が持ってきたはずはないし——。

そこまで考えて、気がついた。

膝枕されていたカイザーはともかく、クラークは私達がここに行くところを見ていたはずなのだ。

恐らく、いつまでも戻ってこない私達を心配して様子を見にでも来たのだろう。

そこで目撃してしまったということか。

その結果がこのバッグの中身というわけだ。

これはつまり、さっきまでの光景を彼女は知っているということで——。

気の抜けた笑い声を上げながら、四つん這いになって砂浜に倒れ込んだ。

 

「お、おいガールどうした?」

「あはは、ってことはあの駄々っ子みたいに泣きじゃくってるところも、先輩に甘えてるところも、全部見られてたってことじゃないですか。どんな顔してあの子の前に出ろって言うんですか。あ゛―っ! もう死にたいです」

「やっぱり甘えてたのか、あれ」

 

顔を動かず目線だけを先輩に向ける。

まだ理解できていないのか、幸せそうな顔をしている。

まったくこの人は。

惚れた弱みというのは恐ろしいものだ。

泡になった人魚姫の気持ちも分かる気がする。

先輩の肩を両手でがっちりと掴むと、何かを察したのか身動ぎをした。

 

「うふふ、せんぱぁい? 私のこと好きですよね?」

「な、なんだよ。好きに決まってるだろ」

「よかった。なら——ふたりで泡になりましょう? 責任取ってください!」

「そりゃあ責任はとるけど——なんだよ泡って!」

 

逃げた先輩をバッグを抱えて追いかける。

ぎゃあぎゃあ、きゃあきゃあと岩場を騒々しくしながら。

この人のことを本当に好きになれたというだけで、来てよかったかもしれないと思えた。

ちなみに、この後一カ月ほど先輩を見るクラークの目は恐ろしく冷たく、いつも以上に彼女は私に優しかった。


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