泡沫の望み
「ねえあなた!そこでなにしてるの?」
「…」
「ねーってばー!」
「…ね」
「?」
「ね あ こ し の」
「わぁ!しゃべった!」
「あ しゃ べ」
「…もしかして、わたしのまね?」
「もし た わ のま」
「わー!やっぱりそうだー!えへへ、もっといろいろしりたい?」
「わ や へ しりた」
「そっか!じゃあおしえてあげるねー!
えーっと…なんてよべばいいんだろ?」
「ぅあ わ」
「”あわ”ね!じゃあこんどからあわちゃんってよぶ!」
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「ねーねーあわちゃん!またあれみせてー!」
「あれ わか た」
「わ―!すごい!きれー!あわいっぱい!ふしぎだー!あはははは!」
「そ か よかっ ね」
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「ねえ」
「んー?」
「ともだちってなに?」
「えー!あわちゃん知らないの?友達っていうのは、一緒に遊んで、一緒に楽しむ、大事な相手のことだよ!」
「そっか
わたしとあなたはともだち?」
「勿論!私達は友達だよ!約束!」
「…うん」
昔々、あるところに一人の少女と”泡のエネミー”が居ました。
二人はすぐに仲良くなり、ある時は家で、ある時は野原で、ある時は川で。
いつも一緒に遊ぶようになりました。
ですが、そんな日々は唐突に終わりを迎える事になったのです。
ある日少女はエネミーに襲われ、ひどい怪我を負ってしまいました。
泡のエネミーは少女を襲ったエネミーを倒しましたが、少女は既に虫の息でした。
少女は言いました。
「私達は友達だよ。これから先も、ずっと。」
そして泡のエネミーの手を握り、少女は目を瞑りました。
泡のエネミーは何度も少女の名前を呼びましたが、少女の声が返ってくる事はありませんでした。
泡のエネミーは悲しみに暮れ、少女と共に泡となって空へ舞っていきました。
やがて舞っていった泡は空で一つになり、水溜まりへ落ちました。
泡はぶわりと膨れ上がり、人の形を取り、少しずつ歩き出します。
そうして生まれたのが、”泡沫のエネミー”でした。