日に殉ずる月

日に殉ずる月



 槌で悪魔たちを磨り潰しながら独り呟きます。

「エリス姉様……いったい何処に…。」

 姉様が失踪してもう数ヶ月になります。奇しくも姉様の元スールのマルファさんと同じ、一人で祓魔に行ったまま忽然と。どうしてあの日引き留めなかったのか、不要だと止められても着いて行かなかったのか。何度も何度も泣きながら後悔しました。泣き虫で夢見がちな私をいつもそばで守ってくれたエリス姉様は、私にとってこの世界で最も大切で愛おしい存在なのですから。

 あれ以来、私ステラは毎日必死で悪魔を祓い続けました。姉様を傷つけた不心得者がのうのうと生きてはいないか、姉様の手がかりは無いかと。あの姉様が死んだりするわけがないと強く信じながら。

 そんなある日、突然に転機が訪れました。一般人の方々から姉様の目撃情報が得られたのです、それも複数件。

 それは街の外れの方だったということで一致していました。身だしなみを整えるのもそこそこに証言のあった地域へと急行しました。

 辺りを駆け回って駆け回って駆け回って……。ようやく見つけた遠くの後ろ姿は、間違いなく私のエリス姉様。

 感極まって声を張り上げようとした瞬間、姉様の隣に見知らぬ男がいることに気付きました。姉様は愛おしそうに男と腕を絡めて歩き、ある一軒家に入っていきました。…まるで恋人のような親密さでした。

 あの男が何者なのか、私は最悪の事態を想定してカスピテルに変身し、気づかれないよう注意しながらその家の窓に駆け寄って覗き込みました。

「お久しぶり、ステラ♪」

「え…」

 窓の向かいのソファにはあの男と裸のエリス姉様が腰掛け、こちらに手を振っていました。動揺した瞬間背後から霊力の込められた矢と聖水が襲い、私は拘束されてしまったのです。

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イレーヌさんとマルファさんとソフィアに体の自由を奪われながら私はエリス姉様の前に連れて行かれました。

「…目撃証言も含めて罠だったんですか」

「ええ♪マルファお姉さまと旦那様の作戦なの♪」

 エリス姉様は心から嬉しそうに弾んだ声で言います。

「その男は誰ですか⁈何故そんなに親しそうにしているんですか⁈」

「私たちの旦那様♪夫婦仲良くするのは当たり前でしょう?」

 夫?しかも私"たち"の?そんな不埒を姉様が認めるわけがない!姉様は惑わされてる、そうに決まってます!

「姉様、その男はきっと悪魔です!正気に戻ってくださいっ!」

 そう言うと姉様は急に険しい表情になりました。

「……ステラ。いくら貴女でも旦那様を侮辱するなら怒るわよ?」

「ひっ……!」

 今まで聞いたこともないほど低く冷たい声でした。

「ご、ごめんなさい……怒らないで、私を見捨てないで……!」

「………こちらこそごめんね、ステラ。急に貴女を残していなくなってしまって。あんなことを言ったのは寂しかったあまり、よね?」

 口調こそ柔らかいものに戻っていたけれど、その響きには有無を言わせない雰囲気がありました。私は姉様の言ったことに合わせざるを得ませんでした。

「は…はいぃ……。ごめんなさい……」

「ごめんね。急なことでビックリしたわよね?だから今から見せてあげる、旦那様の素敵さを……ね……♡」

 そう言って姉様は男の服を脱がせ、露出した大きなペニスに顔を近づけて嬉しそうに嗅ぎ始めました。鼻をすんすんと鳴らすたびに目がとろんとして頬が上気していました。

「すぅぅ…♡はぁぁ…♡あぁ、幸せ……♡」

 まるで惚れ薬でも嗅がされたかのような恋する乙女の表情でした。

 たっぷり匂いを吸い込んで満足したのか、姉様はペニスに舌を這わせ始めます。

「れろっ♡ちろっ♡おいひぃ♡すきぃ♡」

 そんなことを言いながら、先端からゆっくりとろとろと溢れてくるおツユまで美味しそうに舐め取っていました。奉仕を褒めるように男の手に頭を撫でられると目を細めて喜んでいました。

「エリスばっかりズルいわ…!私も♡」

 マルファさんが痺れを切らしたように服を脱ぎ捨てながら姉様と男の間に滑り込みました。

「ぼ、ボクも……♡」

 つられてソフィアも。

「あらあら……♡ごめんねステラさん、それでは私も……♡」

 イレーヌさんも男の方に行ってしまいました。私はいつのまにか手足を後ろで霊力で作ったロープに縛られて放置されました。

 4人揃って裸で男の足元に跪いて我先にとペニスに舌を伸ばすのははたから見れば滑稽な絵面かもしれませんが、みんなそんなことは知ったことかと言わんばかりにペニスに夢中になっていました。

 舌以外にも手を使い乳房を使い、ときには腋を使い、みんな思い思いの方法でペニスを刺激します。

 突然ペニスが振動して、みんなの顔と胸元に精液がすごい勢いでかけられました。それを各々幸せそうに指で絡めては舐めとり喉を鳴らして飲み込んでいきます。

 いつのまにか4人の座っている部分の床は滴り落ちた愛液でまるで一つの大きな水たまりのようになっていました。このことも4人は気にする様子もなく、目の前の性行為に没頭していました。

 そして男はエリス姉様たちをひとりひとり犯し始めました。仲間たちで一番小柄なソフィアでさえ男の巨大なモノをすんなりと受け入れていましたし、一番の長身のイレーヌさんでさえ「奥まで来てる」と声を上げて悦んでいました。

 男は目の前の一人を徹底的に感じさせながらも、空いた手で他のメンバーに愛撫をすることを欠かしていませんでした。あまりに慣れた手つきに少し畏怖さえ感じてしまうような佇まいでした。

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4人が体力を使い果たして床にへたり込んでしまうと、男は私の方へ歩み寄ってきます。術者のイレーヌさんがへばってしまったことで私を縛っていた霊力のロープは消滅していました。

 みんなを犯し尽くしてなお男のペニスは悠然と屹立していて、4人分の蜜を被っててらてらと光っています。それをゆっくりと顔に近づけられ、私の取った行動は……。

「……貴女ならそうと思ってた…♡乙女で夢見がちな貴女ならきっとそうなるって…♡」

 エリス姉様が寝転んだまま呟きました。

 私は躊躇することもなく、胸いっぱいに彼自身の匂いを吸い込んでいました。そうしない選択肢は最早頭の片隅にもありませんでした。それほどに目の前で繰り広げられた痴態は私の脳を焼いていたのです。

「すーっ♡すーっ♡はーっ♡」

 嗅いだ瞬間胸が高鳴りました。エリス姉様と初めて出会ったあの瞬間と同じ、恋の高鳴り!

 沢山の女の子の匂いをたっぷり染み込ませたペニス、それはある意味どんな匂いより最も男性的な香り。強い強い雄をアピールするその匂いに私の心は一瞬で恋に落ちてしまいました。何人の女の子を可愛がっても衰えない逞しいペニス…!その素晴らしさを抗い難い本能の部分に突きつけられてしまったのです。

 この方が…このペニス、いえ…おチンポ様が私の王子様でご主人様♡もっと彼を知りたい、もっと彼を感じたい…♡衝動に突き動かされるままに私はさっきの4人の行動をなぞりはじめたのでした。

 悪魔祓いと姉様を探して駆け回ったせいで私の身体は汗だくでしたが、ご主人様は嫌な顔一つせずに抱きしめてくださり、それどころかお口で汗まみれの腋やお股まで愛してくださいました。徹底して女の子を気持ちよくさせることを優先する彼の姿は、童話や少女漫画の王子様に思えました。

「ステラ……ごにょごにょ」

 ご主人様との睦み合いに夢中になっていた私にエリス姉様が背後からあることを囁きました。

「はい、エリス姉様…♡ご主人様、見ていてください♡私の変身……♡」

 そっと祈りを込めると、霊力が光の粒になって身体を覆います。カスピテルへの…いえ、ご主人様のお嫁さんとしての新しい私への変身…。

 出来上がった服は、私の少女趣味を反映したかのようなたくさんフリルのついたドレス。ご主人様に教えて頂いた雌の部分を示すかのように生地は薄く透け透けで、身体のラインどころか大事なところがくっきり浮き出てしまう卑猥さも兼ね備えています。

 そっと裾をつまんで慇懃に礼をして、改めてのご挨拶をしました。

「私ステラをお嫁さんにしてくださりありがとうございます♡このカラダ全て捧げて貴方に尽くします、ご主人様♡」

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 後世に伝わる、ある御伽噺。

 一度滅んだ後の世界、5人の聖女たちが1人の男と結ばれ、共に悪を討ち平和を取り戻した。彼女たちは彼と数多の子を儲け、新世界のアダムとイブとなったという。

 

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