決着

決着


ライダー side in

バーサーカー殿からの伝言によりやることが決まった。

今この状態で勝つために必要なのは2つ、ひとつは私の間合いに誰かひとりがいること、そしてセイバーの動きをほぼ確実に止めなければならないことだ。

故に、徐々に戦いの位置を主殿達の方へと近づける。

狙うのは───

ライダー side out


神永 side in

サーヴァント達の戦いが激化する。

互いに宝具を切り消耗した状態での斬り合い。

現状7対3程でセイバーが押している。やはり攻撃が通らないのが厳しいのだろうか。だが心なしか傷が増えつつある。おそらくバーサーカーの宝具が一度貫通したせいか性能が落ちたのか?だがライダーの剣ではかすり傷、バーサーカーの一撃は確実に逸らしているため当たらない。…ほんとに不味いな、かと言って消耗度合いを考えれば撤退は無理だろう

「さて、このままでは君たちの負けは確実だろうね」

トーマスが余裕そうにこちらへ話しかけてくる

「まだ分からないわ」

「いやいや、君たちの方が不利だ」

右手の令呪を見せながら

「私はセイバーへ全二角使えるが君たちは各一回ずつしか使えない、それだけでどれだけこちらが有利か分からない訳では無いだろう?」

令呪を用いたブーストは強力だ、それが2回残っている。それだけでこちらが不利な状況なのは即座に理解する、がそれ以上に

「生憎諦めが悪くてな、それにサーヴァントが諦めてないんだ、俺たちが諦める訳にはいかないだろ」

トーマスを見据えながらキッパリと言い放つ

その言葉に一瞬止まり高笑いをあげる。

「いや若いというのは良いな、セイバー遊びは終わりだ、片付けたまえ」

「了解した、先ずは貴殿からだ」

「ッく!?おぉおらぁ!!」

バーサーカーへと狙いを定めたのかセイバーの連撃がバーサーカーを襲う、ライダーへも牽制を兼ねての攻撃を行っているためかフォローもできていない。

「…これで終わりだ!」

セイバーの鋭い刺突がバーサーカーを貫く。

「バーサーカー!!!!」

バーサーカーの口からごぷりと血が溢れる、セイバーが剣を抜こうとした瞬間、バーサーカーは剣が刺さったまま前へと一気に出る、さらに深くまで刺さる剣。

「セイバー!何をしている、即トドメをさせ!」

だがセイバーの剣が抜ける様子がない。

「へっ……足柄山の金太郎、舐めんじゃねぇぞ…!」

バーサーカーは渾身の力を込め剣とそれを握るセイバーの手を押さえつける

「やれぇ!!ライダー!!!」

いつの間にかライダーがこちらへすごい勢いで走り出してくる、ちょっと待て太刀抜いてないか!?しかも明らかにトーマスではなく俺たちの方に向かってるぞ!?

「ライダー!お前何を……!」

「宝具───『遮那王流離譚一景、自在天眼・六韜看破』!」

その瞬間、身体からゴッソリ魔力を持っていかれた。

「ガ───!?」

倒れそうになる瞬間、景色がぶれる

明らかに自分の位置が先程まで立っていた位置とは違う場所に転移している。

そして目の前には

ライダーの太刀に首を切られたトーマスが居た。

神永 side out


ライダー side in

遮那王流離譚一景、自在天眼・六韜看破

私の宝具、遮那王流離譚の中でも特に強力な奥義のひとつだ、効果は至って単純。

私の把握している戦場内の全員を自由な立ち位置に強制転移させるというものだ。だが制約も多く、先ず転移させる人数で消費する魔力量が跳ね上がること、戦場内の状況を把握していること、そしてそれを行っている間は無防備に近い程の隙を晒してしまうこと。

正直一人では使うことができないであろう宝具、だが今協力者がおり敵マスターの攻撃手段が潰えている。

この状況を打破する唯一と言っていい手段だ。

直接私がセイバーのマスターに斬りかかりに行っていたら一瞬の防御から令呪の転移で殺されていただろう。

故に、主殿達に斬り掛かる必要があったのだ。

そして現在、私の左手には切り落としたマスターの首がある。

「───何とかなりましたね」

首を片手に持ちながら一人言をこぼす、これぐらいはいいだろう。

振り向きバーサーカーへと声をかける。

「何とかマスターを倒せました」

「おう、そうか……」

未だに剣を押さえ込みながら小さく声を出すバーサーカー、セイバーはと言うとマスターが倒れたからか足元からゆっくりとエーテルの体が解けている。

「…今回は守ることが出来なかったか」

「流石に運が良かったからです」

「ふっ、それを引き寄せたのもお前たちの実力だ」

そういったセイバーは剣から手を離しながらこちらを見据える、その目は倒された悔しさを滲ませない優しいものであった。

「見事だ、ライダー。故に警告を、キャスターに気をつけろ。アレは恐ろしく頭のキレる軍師だ」

「っ!?貴方の陣営は一体どれだけ情報を……!」

「マスターの部屋を調べろ、そこに全てがある」

その言葉を言うとセイバーの体が消えていく。

最後に何かをつぶやく

「全く、願いを叶えようとするのはこれ程まで難しいか」

どこかニヒルな笑みを浮かべたままセイバーは消えていった。

「……チッ、流石にもう厳しいか」

バーサーカーの方を見ると指先が消えかかっていた。

「霊核を貫かれちまってたみたいだな、いや流石だぜ」

「バーサーカー殿…」

「湿気た顔すんじゃねぇよ、マスター呼んでもらえるか?」

「わかりました」

そう言って美作殿を連れてくる。

「バーサーカー…貴方」

「悪ぃな、無茶しすぎちまったわ」

そう言って笑うバーサーカー、美作殿は涙を湛えた目で

「何言ってるのよ!貴方は悪くない、全力で戦ったんでしょ?」

「まぁ…な、なぁマスター」

「何?バーサーカー」

「オイラは…良いサーヴァントだったか?」

「ええ、最高のサーヴァントだったわ。ありがとう、金時」

名前で呼ばれたバーサーカーは一瞬固まり照れくさそうな顔をしながらも笑顔で

「おう…そうか」

「ええ、貴方のおかげでここまで戦えたわ」

「んな事はねぇ、マスターならどんなサーヴァントでもいい戦いしたと思うぜ」

「ふふっありがとう」

「あ〜それと、隼人」

「何だ…バーサーカー」

フラフラとしながらこちらへ歩いてくる主殿

「マスターを頼んだぜ、泣かせたらぶん殴りに来るからな」

「……わかった、任せろ」

「へっ、言ったかんな?…そろそろ限界見てぇだな」

そういったバーサーカーの全身が消えかかっていた。

「よぉし、ライダー!」

「はい」

「後は任せたぜ!」

その一言と共にバーサーカーは消えてしまった。

「……バカねアイツ」

美作殿の表情は暗くてよく見えない、だが彼女足元に水滴が落ちたような跡が残っていた。

ライダー side out

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