『求婚』
「これはダメね」
「これも違うわね」
「ナミさん、これはどうだ?」
「これとか良いんじゃねぇか?」
「おぉ、ルフィ似合うぞ」
「素敵です」
「なぁ、もう良いんじゃ・・・」
『駄目だ!!』
ルフィは一味の皆の着せ替え人形になっていた。先日ウタに頑張ってロビンから本を借りてちゃんと調べた上で薔薇の花束を渡したのだがウタからの返事をちゃんと聞く前に帰って来た事に総スカンをナミとロビンから喰らい、ルフィもやった事の重大さに気づいたのかすぐに連絡を取るとウタは快くまたデートしてくれるとの事なのでルフィは今度こそと思ったがナミとサンジに謝罪も兼ねてちゃんとしてこいと言われたので服を何時もとは違う感じにしようとなり、そこに一味の面々も加わって沢山の服を着せられる着せ替え人形と化していた。
「ルフィ、良い男は服もキチンとするもんだぜ」
「ま、今回はお前の不始末だしな」
「頑張るんじゃな」
〇〇〇
「うわぁ〜!!これで良いのかな!?それてもこれかな!?」
「ウタ、落ち着け」
「だって、この前の返事ちゃんと出来なくて有耶無耶になっちゃったからちゃんとしないと!」
「ウタ、こっちのガーターベルトの方が良いんじゃ・・・」
「駄目だ!ウタにはまだ早い!!」
「・・・また絞め落とすか・・・」
一方、ウタの方もルフィに返事をするのが有耶無耶になってしまったのを悔いたのかちゃんとする為に何時もとは違う服で勝負しようとしていた。そして前回邪魔をしたシャンクスは流石にガーターベルトは止めて欲しかったがあれ以来ウタからの扱いも悪くなったので聞いてもらえなかった。
〇〇〇
それから1週間後、今度は赤髪海賊団の縄張りでデートをするのでそこにやってきたサニー号からルフィは降りてきた。服は黒を貴重としたスーツで赤いシャツを着ていた。ウタは既にレッドフォース号から降りていて服は黒を貴重としたジャケットの服だった。
「ル、ル、ル、ルフィ、ひ、久しぶり!!」
「あ、あぁ、ひ、久しぶりだな!!」
2人はガチガチに緊張しているのか顔を赤くして固まる直前のような形で話していた。その光景を見ていた面々は初々しいとは思いつつも上手く行くことを祈っていた。
「そ、それじゃ行こうよ」
「お、おう、ちゃんとエスコート?するから・・・」
「あ、ありがとう・・・」
ルフィとウタはそうやってギシギシと動きの悪い玩具のような感じで緊張しながらデートに行った。お互いに距離は近いがこの前の事を意識してか手は繋いでなかった。
〇〇〇
それから6時間後、デートをし終えた2人は浜辺で隣り合わせで座っていた。デートははっきり言って大失敗だった。ガチガチに緊張していたのに加えていつものは違うことをお互いに意識したせいで空回りとなり、楽しめてなかった。
「ル、ルフィ・・・その・・・」
「ウタ・・・ごめん。俺何にも・・・」
「そんな事ないよ!ルフィが色々とやってくれて嬉しかったし・・・」
「・・・」
謝ってくるルフィにウタはそう云うが余計にいたたまれないのか落ち込んでいると浜辺で何かを見つけたのか立ち上がってスッとそっちへ歩いて行った。ウタはその隙に近くの花を一輪取った。
「上手くいく・・・上手くいかない・・・いく・・・いかない・・・いく・・・いかない・・・いく・・・いかない・・・」
花弁を取る簡単な花占いをやってみて勇気をつけようとしたが占いは無情にも上手くいかないと出た。ウタはその結果に余計に気分が落ち込んだ。
(うぅ・・・上手くいかないのかなぁ・・・アレだけ色々と準備したのに・・・)
ウタはこの日の為に準備したのが水の泡になるかも知れないと思うと少し蹲った。
「ウタ〜〜!!」
「??」
そんな暗い雰囲気の中でルフィの大きな声が聞こえたので顔をそっちに向けるとルフィは綺麗な貝殻を持ってきた。
「ウタ、見てみろ!ここ色んなのがあるぞ!綺麗でお前好きだったろ?」
ルフィは笑顔で少し砂を服に付けながらそう言ってきた。ウタはその貝殻を1つ摘んで見ると段々と笑えてきた。先程まで暗い気持ちであったが少しでも笑顔にしようと頑張ってくれてるルフィを見て嬉しくなったしウタは下手に大人ぶるよりももっと素直に動いた方が自分達らしいと改めて思ったのだ。
「フフフッ・・・」
「ど、どうしたんだ?」
「ううん、何でもない。ただ私達はやっぱりこういうの向いてなかったね・・・ルフィ、もう思いっきり遊ぼ!!」
ウタはそう云うと着ていたジャケットを脱いでさっさと立ち上がるとルフィも着ていた上着を脱いだ。2人はそのままやりたいようにやった。水を掛け合ったり、かけっこしたりと無理な背伸びをせずにらしくやった。
「見ろ、ウタ!名付けて砂だるまさんだ!!」
「って雪だるまの砂バージョンじゃん!!私のお城の方が良いから私の勝ちね!!」
「なっ、俺のも負けてねぇだろ!?」
「出た、負け惜しみ〜」
また2人は昔のように砂で何かを作って競ったりもして日も落ちて夕方頃になると2人は疲れたのか浜辺でゴロ寝しながら笑いあっていた。
「ハァハァ・・・やっぱしウタと居ると楽しいなぁ」
「うん・・・私もルフィと居ると楽しい・・・」
「・・・なぁ、ウタ。ちょっと言いたい事があるんだ!」
「!?・・・わ、分かった・・・」
ルフィは何かを決心したのか顔を赤くしながらそう言うと座ったのでウタも向かい合うように座った。何を言うのか察したのでウタも顔を赤くしていた。
「こ、この前の花・・・俺、ちゃんと調べて渡したんだ・・・その滅茶苦茶になっちまったけど・・・ウタと居ると凄え暖けえんだ・・・ずっと一緒に居てぇ・・・ウタ、結婚してくれ!」
ルフィは顔を赤くしながらそう言ってきた。それはルフィにとって一世一代の告白だった。ウタはそれを聞くと嬉し涙で溢れそうになったが必死に抑えた。ちゃんと返事をしてから泣かないとルフィに失礼だからだ。
「あ、ありがとう・・・これからもよろしくね・・・ルフィ・・・」
ウタはそう言って震えつつもルフィの手を取った。ルフィはどっちの返事なのか分かってないのか少し狼狽えるとウタは涙を流しながら答えた。
「OK・・・OKだよ・・・」
「ウタ!!!」
「ルフィ!!」
ウタからの返事を貰ったルフィはその答えに感極まって抱き締めてウタもルフィを抱き締めた。お互いに嬉しくて泣いて心臓の音が煩い中で顔を見合わすと2人はそのまま顔を近づけた。
〇〇〇
それから数時間後、赤髪海賊団と麦わらの一味で宴会が始まった。あれからお姫様抱っこをしながら帰ってきた2人からその報告を聞いて盛り上がった。
そしてシャンクスは大泣きしながら誰よりも2人の事を祝った。