水曜日の少女

水曜日の少女


毎週水曜日午後八時。この時間だけは譲れない。たとえオカンを筆頭とした家族から胡散臭い萎びたさつまいもを見るような目で見られようとも!


「じゃあアタシ、テレビ見てるから!邪魔せんといてな!」

「へーへー……俺、どこで育て方間違えたんや」

「いや、アレはオマエの育て方ってよりか……素質?」

「ホンモノここに沢山いるのに何が楽しいんだろうな、俺にはよく分かんねえわ」

「安心せえ、撫子以外誰も分かってへんから」

「うっさいわ!」


外野に叫んでから自分の部屋に駆け込む。時間はちょうど十分前、専用に買い与えられたテレビの前で準備万端。つい一ヶ月前まで普通に共有のテレビ見てたけど、何でか専用テレビが貰えたのはいいことだ。なにせ好きなだけ録画を流せるから!

ワクワクすることしばらく。長く感じた十分が終わって、ついにオープニングが始まった。きたきたきた、今日もこの時間が始まった!


『スピリッツ・アー・オールウェイズ・ウィズ・ユー!』

「ボハハハハーーー!!!」


ドン・観音寺様!!!あああ今日もまたお変わりなく麗しいおじ様ですわ!!!今日もまたその尊顔を拝謁できる幸福をアタシは、わたくしは感受しております!!!


「えへへへへ…………」


クッションを抱いてバタバタ足を動かしながら観音寺様の一挙一動を目に焼き付ける。うわああああ決めゼリフが今週も!!!耳が幸福に包まれるわ!!!

あっという間に過ぎ去った一時間で、全身が多幸感に包まれる。もちろんこの話も録画済みだ、今週きちんと見直せるように!

……ん?いつもの予告とちょっと違う……


「っきゃーーー!!!!!!」

「撫子うるさいで!ええかげんもう少し静かにせえ!」

「イヤや!なんで邪魔されんとアカンの!!!うるさいならハッチが結界張ったらええやろ!!!」

「それでオマエなんかあってもこっち気づけへんやん!興奮でぶっ倒れても知らんぞ!!!」


否定できない!

でも大騒ぎするのも仕方ないと思うんだ。

だって、だって!!!

来週のぶら霊、空座町で生放送だっていうんだから!!!



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