水晶と紅玉
斉藤晶、親戚や知り合いの人達が凄い人か芸能人かしかいない普通の小学2年生。
今日はスカイツリーに来ています。
「おおー…東京がオモチャのジオラマみたい…!」
こういう時はお決まりの言葉がある、てお母さん言ってたっけ?
「ふははははー!人がごm
「はいはい、晶ちゃん?テンション上がるのは分かるけど可愛い子がゴミ、はまずいかなー?声のテンション抑え気味なのは偉いけどね」
「でもルビーちゃん、お母さんは街や人が小さく見える時はム○カかゴジ○になる気分を味わう遊びが1番、て言ってたよ。よくお母さんとそんな遊びしてるし」
「うん、今度お母さんとお話しするね?」
教育上良く無いから、と笑顔で言うルビーちゃん。
そう、今日はルビーちゃんとお出かけ!
ルビーちゃんから仕事がお休みだから出かけないか?て誘ってくれたから一緒にスカイツリーを観に来たのだ。
「晶は東京タワーだったりスカイツリーだったり高いところ好きだねー。お父さんとお母さん、両方ともよく知っているつもりだけど2人ともそういう趣味なかったし」
「だって高いところに登ると今まで見えなかったものが一気に見えるんだよ?凄くない?悩んでることが小さいとか、自分という人間の小ささを実感出来るからね…」
「おー…大人だね…なんか嫌なことあった?反省したいこととか」
まぁ、ルビーちゃんなら良いかな。
「実はね」
「うん」
「私、お姉ちゃんになるんだ」
「へー……え⁈硝太とフリル…お父さんとお母さん、そうなの⁉︎」
ルビーちゃんも思わず声出してしまったみたいで
やっちゃった…て顔してる。
まあ驚くよね。私も驚いたし。
多分まだ知ってるの私とルビーちゃんだけだろうし。
「生まれるのはまだ先なんだけどさ、私今まで一人っ子でみんなから可愛がられて来たのに独占されるの嫌だな…て思っちゃった」
事務所に行けばみんなにチヤホヤされて家に来るお父さんやお母さんの友達には可愛がられて来た。
だけどお母さんから聞かされた時、家族が増える喜びもあったけど
急に愛される対象が自分じゃなくなるのが怖い、なんて思ってしまった。
そんなこと無いはずなのに。
「素直におめでとう、て言えなくて…ルビーちゃんが誘ってくれなきゃ私、自分の気持ちどうしたら良いか分からなかった」
「そっか…ね、晶はお姉ちゃんになりたかったの?」
「なりたかったよ。むしろ下に弟、妹できるなら優しい良いお姉ちゃんになりたい。遊んだり勉強教えてあげたり…いっぱい色々してあげたい!
その気持ちはちゃんとあるよ。ずっと…なのに怖いの…この気持ち、どうしたら良いかなぁ…?ルビーちゃん…」
朝から抑えていた気持ちが溢れてくる。
不安や怖い気持ち…まだ生まれて来ていない子に対する嫉妬…同時にそんな自分に対する嫌な気持ち…涙が出そうになる。
こんな私の気持ち、聞いたルビーちゃんなんて思うのかな?呆れた顔してるのか、怒った顔してるのか…怖くて上を見れない。
だけど優しく、凄く暖かいものに包まれた。
「晶は正直で優しい子だね」
「え…?」
「しっかり自分の気持ちに向き合って私に話してくれて、更に優しいお姉ちゃんになりたい、て言ってくれてる。充分、偉いよ。
だからお姉ちゃんが抱きしめてあげます!星野ルビーに抱きしめられる、なんて滅多に無い経験だよー?受け取れ受け取れ」
そう言いながら私を抱き上げて抱きしめてくれるルビーちゃん。
なんで褒められたのか分からない。
私は姉になるのに…
「姉になるのに嫉妬してるのになんで偉いの…?」
「だってその嫉妬を自分で受け止めてるから」
「愛情を独り占めしたいだけなんだよ…?」
「誰だってそうだよ?私だって晶の愛情独り占めしたいもん。硝太やフリルより私だけに向けて欲しい。みんな持ってるから気にしない気にしない」
「良いお姉ちゃんになれるかわからないよ…?」
「無理になろうとしなくて良いけど、その気持ちあるなら充分、良いお姉ちゃんだよ晶。不安な気持ちはお父さんとお母さんに正直に言いなよ」
「言えないよ…がっかりしちゃうよ…赤ちゃん出来たばかりなのに…」
「逆にはっきり不安を言う方がフリルや硝太は喜ぶよ。あの2人、ストレートなのが大好きだから」
私の不安をルビーちゃんは抱きしめて全部受け止めて全部優しく返してくれた。
…溢れそうな涙もいつの間にか引っ込んでいた。
「落ちついた?」
「うん、ありがとうルビーちゃん。
ルビーちゃん大好き」
「私も晶が大好き!!さて、浅草のスイーツ巡りしようか?今日は晶が好きそうなお店たくさん調べたんだー♪」
ルビーちゃんは私と居る時はいつも笑顔で暖かい。今日もその暖かさに救われた。
「そのお店覚えて生まれてくる子と食べに来たいな。また連れて来てくれる?」
「もちろん!お姉ちゃんは家族を愛してるからね!!あ、多分まだだと思うけど男の子なら、女の子なら…とか言ってた?」
確かお父さんとお母さんは…
「女の子も男の子も『あい』て名前にしたい、て言ってた。夢の中でアイさんにあったから、だって」
「!そう、なんだ…そっか…そっか!あの2人にしたらネームセンス良いじゃん!!よーし、早速お祝い持って行こうかな?」
ルビーちゃんは驚いた顔をした後凄く嬉しそうに私の手を引いて浅草の町に繰り出してくれた。
「それが貴方が生まれる丁度1年前になるんだよ?愛衣」
「zzzz」
「寝ちゃったかな?目に星があるみたいに輝いてるのお姉ちゃん好きだなぁ…ルビーちゃんの歌好きみたいだしアイドルになる?愛衣」
妹の愛衣が生まれて1年。良いお姉ちゃん出来ているか分からないけどルビーちゃんがしてくれたように、貴女を助けられる人に私はなりたいな。
「愛衣、浅草のスイーツ巡り一緒に行こうね」
愛衣が私の指をしっかり握り返してくれたように感じた。