水星ちゃんは本当にいい子だね

水星ちゃんは本当にいい子だね



やあミオリネ、いきなり呼び出してすまなかった。…「何の用」って?それは今から順を追って話すから、よく聞いてほしい。


事の始まりは、君に振られたあの日だった。俺だって君には全力だったつもりだし、それが叶わない恋だと知ったらそりゃあ人並みには傷ついてさ。

意外と思うだろ?だけどその時の俺は涙で前も見えないくらいだったんだ。誰にもそういう弱さは見せたくなくてね、学園の展望台でひとり寂しく泣いてたよ。


けど、巡り合わせってのはあるものだよね。

水星ちゃんが来たんだ。本当に、たまたま、俺のところに通りがかったらしい。

「最悪だ」と思ったよ。よりにもよって一番見せたくない相手に出会ってしまったんだ。

何せ相手は君の花婿、俺と決闘をして、そして負かせたホルダー様だ。だからまあ、いつもの態度を取り繕う余裕もなく、冷たくあしらおうとしたんだよ。


水星ちゃんはいい子だよね、真っ直ぐで嘘はつかないし、優しくて気配りもできる。俺の冷たい態度なんて気にせず、彼女は精一杯慰めてくれたんだ。俺の涙の理由も知らずにね。

「貴方は強かったです」とか、「マニューバの動きが見事でした」とか、水星ちゃんなりに身振り手振りを使って必死に俺を励まそうとしてくれてね。なんだかその様子がやけにおかしくて、思わず笑っちゃったんだ。


失恋の気持ちなんてすっかり吹っ飛んだよ。それで俺も水星ちゃんに何かお礼がしたくてさ、彼女を食事に誘ったんだ。「はい!」って何も疑いもせずに了承してたのはちょっと女の子にしては不用心すぎると思ったけど、そんなことは気にもならず、店の手配をしたんだよ。

いつも学園の女の子と食事をする時に通う…そう!フロント50の洋風料理店。味は保証されてるしメニューも豊富だ。

水星ちゃんも入る時はものすごく緊張していたけど、そこはまあエスコートしてあげてさ、メニュー表の端末を見つめては「これはどういう料理なんでしょうか?」って聞いてくるのが面白くてね。テーブルに運ばれた料理を見た時の水星ちゃんのあの目の輝きぶりと言ったら…「ああ、この子を誘ってよかったな」と、心の底から思ったよ。


その時だったかな。あらかた料理も食べ終えて、ドリンクが運ばれてきて、そして俺と水星ちゃんは、そのドリンクを飲んじゃったんだ。

アルコール飲料、つまりお酒だったらしい。何かの手違いかは分からないが、俺が頼んでいたソフトドリンクとすり替わってたみたいなんだ。

俺は何度か飲む機会があったから大丈夫だったけど、水星ちゃんは元々すごく弱いのかな?もう顔まで真っ赤になっちゃって。足取りもおぼつかないものだからとりあえず会計だけ済ませて急いで店を出たんだ。

自販機の水を渡して飲ませたりしても全く良くならなくてね、未成年飲酒なんてバレたりしたらそりゃもう大変なことになる。そのまま地球寮に送り届けるわけにもいかなくて、迷った末に近場のホテルに泊まって介抱することにしたんだ。…他意はないよ?まだこの時は。


それでチェックインして部屋に入ったところまではよかったんだけど、水星ちゃんの酔いもなんか凄いことになっててさ。

服は少しはだけて肩が出てるし、熱に浮かされた表情と舌足らずな言葉遣いが…その…普段の水星ちゃんと違ってやけに蠱惑的で、女の子慣れはしてたはずなんだけどね、そのギャップの破壊力に思わずドキッとしちゃったんだよ。

それでもまあなんとか平静を保って、制服を着たままなのも息苦しいだろうから脱がせてあげようと思ったんだ。


……「ひゃっ…!」ってさ、俺の腕が水星ちゃんの肩に触れてさ、しおらしく熱のこもった吐息を吐いた後俺を恐る恐る上目遣いで見てきてさ、もう俺のビームブレイサーがアンチドート・オーバーライドしちゃったんだよ。


失恋で傷心してたのもあってもう自分を抑えきれなくて、勢いのままに水星ちゃんを押し倒してしまって…、そこで抵抗してくれたらまだ正気に戻れてたんだろうけどね。

ただ、じっ…と俺の目を見つめてきて……


…………………………まあ、その…なんだ、「やっちゃった」んだよ。


だ、大丈夫!ちゃんと対策はしてたから!多分!

それで今日君に話したいことってのはその、水星ちゃんへのアフターケアで………


…水星ちゃん?どうしたのいきなり?………え?




生理が…来てない?

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