気になると即決行動
「カタクリの乳を吸ったら母乳は出るのか?」
冗談の一欠片も混じっていない真っ直ぐな目で見てくるシドをカタクリは真っ直ぐに見つめ返した
「…………何だと?」
「カタクリの乳を吸ったら母乳は出るのか?」
「丸々同じのを繰り返したな……いや、出ないが」
「ゾ、そうなのか……残念だゾ」
分かりやすく肩を落とすシドに聞かれた内容も合わさりカタクリは深く追求することにした。見聞色を使っていなくともわかる何だか見えている未来を微妙に直視しないようにしながら
「いきなりどうした?」
「母乳は甘いと聞いてな!キミは甘いものをよく食べてるしキミが母乳を出すなら特別甘いのだろうと確かめようと思ったのだゾ!」
「母乳の存在がないゾーラ族の発想は凄いな…」
そもそも男だから出ない、妊娠していない女も出ないと理解していないのだろうか。カタクリより遥かに長く生きているシドではあるが人間とゾーラ族の違いでか驚くべきほど無知な事がある
特に今回はゾーラ族が卵生であることも少しは関係しているのだろうがまさかここまでとは…と半ば呆れたようにカタクリは息を吐いた
「……本当にオレが吸ってもダメなのか?」
だから悲しげに呟かれたそれに悪意も企みもないこともわかっていた。上目遣いにすがるような顔をしているのも無意識であることも
「沢山沢山頑張るゾ?本当にダメか?」
「ぐっ……そんな甘えるような顔をしてもダメだ」
「キミがオレを大切に可愛がるようにオレもキミを大事に可愛がりたいのだが……嫌、か?」
「ぐ、ぅぅ……勇ましい顔から紡がれるギャップ……少し、なら」
「ありがとうだゾ!カタクリ!大丈夫、キミが嫌がる事はしないゾ!」
喜びを抑えきれずカタクリの首を包むよう優しく腕を回し顔を擦り付ける
自身の匂いをたっぷりつけて離れ、長椅子のクッションに凭れたカタクリの上着をプレゼントの包みをほどくよう優しく剥いていくシド
そして鋭い爪先で首筋から胸元まで撫で上げ、そうして刺青の入っているゾーラ族にはないその場所に顔を少し傾け冷たい唇を寄せる
その普段見せる爽やかな笑みや精悍な顔つきとは全く違う、たった一人だけにしか見せる事のない光景にカタクリはくらりとした目眩を覚えた
その色気と熱のこもった感情に普段意識のした事のないその場所にされている奇妙な感覚ですら、自身の熱を昂らせてくるしかなくて……
そうしてしばらく経った後、糸を引きながらシドは唇をカタクリの胸から離して見上げた
乱れた呼吸を吐く上気した顔と目が合う
「母乳出ないゾ…」
「そ、う最初に…言わなかったか……」
「そうか。残念だゾ……嫌じゃなかったか?」
「……お前にされて嫌だったことなど、何もない。今のも……別に悪くなかった」
「そうか!それなら良かったゾ!」
「だが……されっぱなしはおれの気がすまねェ。おれも可愛がりたい…同じように」
シドの尾びれや背中を撫でていたカタクリの指先が脇腹をすべる
その手つきに驚いたように開閉するのは人間にはない、ゾーラ族の持つ特有の箇所であるエラ
「ひぅ!?」
「六個あるが、どれからがいい?」
……というカタシド(シドカタ?)