毒抜き
イッチ豪奢な廊下を急ぎ、言われた通りの場所に着く。トイレに辿り着いた玲王は、息も絶え絶えになりながらも個室に滑り込んだ。
少年が貸してくれた上着を脱ぐと、今まで見た事が無い程勃ち上がった息子が見える
「っ、痛え」
さっきよりも身体を渦巻く熱の温度が上がっている。どれ程強い媚薬を飲んでしまったのだろう、もしあのまま天使に良いようにされていたらと思うと、背筋に冷たいものが走った
そっと息子に手を添える
軽く触れただけで痺れるような快感が走り、とろりと白濁した液が溢れ落ちた
「うぅ···」
やわらかく握り込み、恐る恐る擦ってみる。すると、目の前で火花が散るような感覚がして、先端から精液が溢れ出た
「──────────ッ!?」
咄嗟に手を離す
過ぎた快感は苦痛とはまさにこの事で、射精したというのに収まらない息子はたかが一撫での余韻で許容量を超えた快感を脳に伝えてくる
「んだよ、今の···」
玲王はもう、自分でコレを触るのが恐ろしくなってしまっていた
だというのに、体を巡る血潮はスピードを増していくばかり。このままでは自分がどうなるか分からない
早く発散しなければ
でも触るのが怖い
触りたくない
思考がループに陥りそうになった、その時
『やっぱりそうなるよなァ、ベイビー?』
鍵をかけたはずの扉が開き、外から声を掛けられる。そこに居たのはサングラスの大男で、玲王の恥態をにんまりとしながら眺めていた
「なっ···!?覗きかよテメェ!」
『まさか。商品のメンテナンスに来ただけさ』
個室に入ってきた大男は後ろ手で鍵をかけると、玲王に近付いてくる。伸ばされた手を玲王は振り払った
「触んな!」
『それは聞けねぇな、だってそれ自分じゃどうにも出来ねぇだろ?』
「あっ!?」
不意に自身の息子を掴まれ、玲王は大きく身体を跳ねさせる。その様子を見た大男は、玲王の後ろに回って抱き寄せてきた
『だから俺が代わりに絞ってやるよ、足の力抜きな』
「ざっけんな!どうせ変な事する気だろ」
『しねぇよ、お前はお得意さんのお気に入りだ。俺がケツ処女ぶち抜いちまったら価値が下がって大損だろ』
大きく身を捩る玲王を落ち着かせるように抱き締めながら、大男は囁いた
『俺が収めてやるって言ってんだ、大人しく身を任せとけ』
「···信用出来ない」
『知るか。どっちにしろ放っておいたらイき狂って死ぬぜ?どうするよ』
まともな状態なら一笑に付して流していた脅し文句だが、今はそうも言ってられない
「そんな危ないもん売ってんじゃねぇ」
悪態をつきながらも、玲王は抵抗の手を止めた。大男は満足そうに微笑み
『じゃ、間違って舌噛んだりすんなよ』
「え?」
容赦無く性器を擦り上げてきた
「ふぁ···っ!??」
途端に達した身体は仰け反り、結果的に大男に上半身をすり付ける形になってしまう。かくかくと勝手に動く玲王の身体を抑えるように、大男はその太い片腕で玲王の腕ごと上半身を抱き留め、もう片方の手で性器を攻め続ける
「ん゙ぁっ、いッ、ゔぅ〜っ!!?」
ガッチリと抑え込まれた上半身の代わりに、性器を擦る手をどうにか剥がそうと脚が勝手に暴れてしまう。後ろから伸びてきた大男の長い尻尾が玲王の両脚を一纏めに縛る
「い゙っかい、やっ、やめ、ろ!チンコ壊れ゙る!」
『壊れても良いだろどぉせ使わねんだし』
「ふざけっ···ァ゙あっ!?」
先端で親指を往復させ、磨くような動作をされると、いっそ痛みの方がマシだと言いたくなるほどの快感に叩き落される。
腹や太ももは激しく痙攣していて、何とか暴力的な快感を逃がそうと必死だ
「い゙やぁっ!怖いっ!こわ、怖いんだってばぁ!離せ、いっかぃ、止まれっ!」
『······っるせぇな』
「んむっ!?」
突然、噛み付くようにキスをされる
何をされたのか玲王が理解する前に、厚い舌が口内に侵入してきた
「···んっ·········く」
荒くなっていた呼吸に加え、更に口を塞がれて、空気を吸おうと反射的に開いた玲王の口を、こじ開けるように大男の唇が深く重なる。上顎を舐られ、舌先が触れ合うと、ビリビリと脳天に響く様な快楽が染み込んでくる。
両者の唾液が混じり合い、流れ込んできたそれを玲王は咄嗟に嚥下した
キスされた事、なぜそんな事をするのか、疑問で脳の処理を割かれ、一時的に下半身の深い快感を玲王は忘れる
それこそがまさに大男の目的だった
「ぷはっ···なんだよ、急にっ!」
『こんだけイけば薬も抜けたろ、ほれラスト一発頑張れ』
「え?ッ、ぁあっ!?ちょ、〜〜ッあ゙」
精液が垂れ流しになっていた玲王のペニスを、仕上げとばかりに大男が擦る。意識の外から帰ってきた強い刺激に、玲王の足先はきゅうと丸まり、両手で大男の腕に縋り付く
最後の一滴が便器の中に吸い込まれて、ようやく毒抜きは終わった
余韻でぐったりとした玲王に、大男は白い大きなバスタオルを投げて寄越す
『向かいの部屋がバスルームだ、着替えも置いてあっからサッサと着替えろよ。今日はもう客も取らねぇし』
「······待てよ、俺を助けてくれたのか?」
『思い上がるな、商品のメンテナンスだって言ったろ。まぁ感謝したいならしてもいいぜ、チンコしゃぶる位はしねぇと俺は喜ばねぇがな』
「やんねぇし···ありがとう」
元々は大男が招いた災難だが、こちらも迷惑を掛けたのは事実である。それを無視して敵意を向け続ける程、玲王も礼儀を弁えてない訳ではない。素直に礼を言うと、大男は瞠目し、返事もせずに身を翻して
『これに懲りたら文字くらい読める様になるんだな』
それだけ言って、消え去った
かけたはずの鍵を開けた時もそうだが、どうやら力の強い悪魔は特殊な能力が使えるらしい
「酷い目にあった···にしても、キスまでする必要あったか?」
執務室に戻った大男は、待ち構えていた専用の娼婦や男娼達を追い出し、一人で大きな椅子に座る
玲王にはああ言ったが、基本的に彼は商品がどんな目に遭ってもノータッチだ。もちろん壊されたら報復くらいはするが、基本的に自分で何とかしろのスタンスであり、玲王の媚薬を抜いてやったのはただの好奇心だった
それなのに
『あーあ、あの大天使の趣味はよく分かんねぇと常々思ってたのに···』
玲王の蕩けた表情や、礼を言う時のほんのり染まった頬を思い出して、思わず口元を片手で覆う
『なるほど、懐かねえ猫が擦り寄ってきた感覚と似てるな。どうにかして手に入れたくなる』
手の下には、凶悪な笑みが浮かんでいた