死者の思い

死者の思い


彼は悩んでいた。

両親が亡くなってから

真面目にしっかり生きていた…

と思っていたが最近は

毎夜仲間と踊り語り笑うだけの

堕落した生活を送っている自分に。

唇を強く噛み締めていると

つい力が籠り口が削れてしまっていた。

「…おれは!明日からきちんと生きる!」

夜の森で彼は誓い、吠えた。


「という訳でお前ら

どうすればいいと思う?」

「どうって言われてもな…」

「なんで真面目に生きる必要があるんだ?」

月明かりも差し込まない霧の夜。

おれは仲間達と話し合う。

いつもの縦長の石と

難しい字が書いてある

謎の木の棒。

それらをまとめ机代わりにして

3人は向かい合っていた。

真人間として生きる為だ。

「おれは両親を亡くしてな…

若い頃はクソみたいなワルガキだった」

おれは語り出す。

「おれを見捨てず育ててくれたんだ。

だけどそんな両親も数年前に亡くなってな…

そこからは更生して真面目にやると

決めたんだよォ!」

思わず涙ぐむ仲間達。

「死に際もおれの事

気に掛けやがってさぁ!?

『真面目に生きて』ってよ…

『必ず真面目に生きる』って約束したんだぞ

おれァ!

だがここはどうだ!?

真面目にやるったって

夜な夜なダンスだの晩酌だの…

これじゃ真面目もクソもねえよ!」

「お前にそんな

思いがあったなんてなァ…!」

「おれも感動したぜ!応援する!」

興奮のあまり

ガラガラと石は砕け、

木の棒は崩れ落ちる。

「よし!おれァいい歳のおっさんだが

頭が悪い!だから勉強して学者を目指すぜ!」

うおお、と歓声が上がる。

「おれは人を救いてぇ!

人に感謝されるような…医者を目指すぜ!」

再び歓声は上がり3人目は続く。

「おれだって!…そうだ!

おれは運動は好きだけどこの腹だ…」

ボゴォ!!!と己の腹を叩く。

「だがいずれ海軍に入隊する!

そこで大佐を…いや!大将を目指すぜ!」

怒号に近い雄叫びを上げ

3人は誓い合う。

必ず真人間として生き、大成すると。


「おい、あのバカ共をなんとかしろ。

煩くてたまらねェ」

大男が窓から見える3人を指し

指示を飛ばすと

外科医のような男は

身をたじろがせながら答えた。

「いやあ…向上心が高い新入り達のようで…」

「おれも色々な奴らを見てきたがよ…

あんな真面目なゾンビは初めて見るぞ」

「…影の元の人格…でしょうね…モリア様」

ゲッコー・モリアと

ドクトル・ホグバック。

彼らは頭を抱えていが

すぐに思い直した。

「まあ…暫くすれば…従順になるでしょう」

「それもそうだなホグバック。キシシシシ…」

不気味に笑う2人と

夢を語るゾンビ3人。

死人達を運ぶスリラーバークは

魔の三角地帯を今日も行く。

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