死に損なった転生者の暗躍記録~訳あり男女三組がくっつくまで~(仮) 前書き

死に損なった転生者の暗躍記録~訳あり男女三組がくっつくまで~(仮) 前書き


「Gyaaaaa!!」

 共歴1240年、全長10kmを優に超える全身を黒い靄で覆われた四足獣のような何かが周囲数十kmまで届くような大きな咆哮を上げた。それは出現から僅か7日で大陸の3割を喰らい尽くした怪物であり、【国喰らい】という名が付けられた。

「今じゃ。撃て!」

「……Gyaaaaa!?」

 儂の合図とともに国喰らいの横腹に精鋭の魔法使い54人による強力な複合魔法が撃ち込まれた。それは都市の一つぐらいであれば消し飛ばせる一撃であったが、国喰らいは体勢を崩した程度でまだまだ健在だった。

「仕方あるまい。プラン2で行く。準備は良いな?」

『『『『はい!』』』』

 複合魔法で消し飛ばすプラン1が失敗に終わったので、国喰らいが体勢を立て直す前に封印するプラン2に移行することになった。そのために儂は通信魔法を使って国喰らいの周囲に展開した仲間達と連携し封印の準備を整えた。

『『『『「封印!!』』』』

「Gyaaaaa!?」

 直後、準備されていた封印の術式が展開し、国喰らいをも上回る巨大な魔法陣が現れた。そして魔法陣からはそれに見合う巨大な魔法の鎖が出現し、国喰らいを拘束するとそのまま魔法陣の中に引きずりこんだ。

「……これでも抑えきれんか」

 しかし、国喰らいの抵抗は想定よりも激しく魔法陣への引きずりこみどころか拘束さえもいつまで持つのか怪しい状態であった。

「……仕方あるまい。プラン3で行く」

『え? なんですかそれ』

『プラン3とか聞いてないんですけど』

『ちょっ! あんた、何する気よ』

『……先生、まさか⁉』

 このままでは封印は失敗すると確信した儂が再度仲間達に連絡を入れると疑問と怒声が帰って来た。それもそのはず今回、周囲に説明していたのは撃破のプラン1、封印のプラン2だけありプラン3などというものは存在しなかったからだ。

「ではな。後の事は任せたぞ」

 儂は通信を打ち切るとプラン3、儂自らを犠牲にしての国喰らいの封印を進めた。

(前世と今世で90年と少し。まあ、十分長生きしたものだ)

 封印という最期を前に瞬間記憶能力を持ったがゆえに忘れたくても忘れることの出来なかった今までの記憶が改めて走馬燈として脳を巡った。周囲から距離を取っていたせいで簡単に切り捨てられて殺されることになった前世と、前世の記憶と反省を活かして多数の仲間と協力し魔法、医学、科学、製造技術等様々な分野の発展に携わった今世。心残りがないかと言われると嘘になるが人並み以上の人生だったことはまず間違かった。

(これでようやく終いじゃな)

儂は封印のための最期の一手を打った。すると魔法陣は儂の体を吸収し、それと同時に国喰らいの全身を結界が包み込み国喰らいを封印された。そして儂、ゴーツ・ゴーマンも今度こそ二度と覚めない永い眠りにつくことになった……と思っていた。

 

 

(…………嘘じゃろ? ん? 様子がおかしいのう)

決して目覚めることがないはずの眠りから目覚めてしまった儂は思わず声を上げた。……正確には上げようとして失敗した。

(……なんじゃこれは?)

体の違和感というよりも体そのものの感覚が一切なかった。そのためその時の儂には周囲の状況はおろか自分の状況すら把握することが出来なかった。

(……なんとかするしかないか)

 そんな状況で儂は情報を得るために試行錯誤を繰り返した。そしてそれから2年近い時をかけて儂は周囲に干渉できる分身体を造り出すことに成功し、外部との接触によって封印から50年以上の時が流れたことを知ることとなった。

 

  この物語はそんな儂の人生2.5周目の話……でもあるが本筋は色々と問題を抱えた男女三組がくっつくまでのラブコメである。

   

 

 

Tips:前世について

 現代生まれの日本人女性。しかし、幼少から瞬間記憶能力のせいで周りから気味悪がられ周りとは距離を取るようになり、研究だけやればいい海外の軍組織へと移住する。その後、30歳で上から用済みと始末される。

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