死なせない inside.U

死なせない inside.U

D-B

この島に来て、緑髪のハーピーを見た瞬間に気がついた。

あれは、私の大好きな親友であり、そして私をこんな姿に変えた怨敵でもあるシュガーちゃんの関係者だ。

シュガーちゃんはお姉さんがいるって言ってたから、多分お姉さんなんだろう。

私を見た時、少し驚いた様に目を見開いて、そして目を細めた彼女。

その時の彼女の雰囲気はもちろん、

(あら、シュガーったらもう1人逃していたのね。

あの子、意外とおっちょこちょいね。)

という心の声がよく聞こえたから、殆ど確信を持っていた。

ルフィ達が乗り込む時、ムジカが私の代わりについていくと主張した。

確かに、戦闘力と自由度はどうやらムジカのほうが上だ。

大人しく、私はフランキーと外にいることにした。


あのみんなと別れた2年間、シャッキーさんやたまにレイリーさんに話を聞きにくるハンコックさんやそのお付きの人たちに覇気の話を沢山聞き、練習していわゆる「見聞色の覇気」は結構いい線まで行けた。

一方で、毎日みんながいるわけじゃ無い。

シャッキーさんだって忙しい日があるし、ハンコックさんたちに会えるのだってよくて2週間に1回、そうなると、教われる日はあまり無い。

その間、私は邪魔にならない様にサニー号でみんなの荷物の整理をしたり、電伝虫に餌をやったり、みかんの木を剪定したり、芝刈りしたり……やることは沢山あった。

ただ、船で過ごしていると、ふとひとりぼっちの孤独感に包まれることがある。

例えば夜に誰の寝息もない寝室に入った時。

例えば気持ち良い木漏れ日があるのに芝生の上に私1人な時。

例えば夕方ご飯の時間にキッチンから何の音もしない時。

他にもたくさん、孤独さを感じる瞬間があった。

怖くて、寂しくて、でも眠れもしない日々の中で、ある時隣に謎の人形がいた。

私と同じようにシュガーちゃんに変えられたのかと思うと、まるで私の考えを読んだようにちがうちがうとジェスチャーする。

彼(彼女?)はそのまま船に居着いて、私の修行中は船の世話をしたり、寂しくてギィギィと鳴ってしまう夜には隣にずっといてくれた。

あの2年間で手に入れた私の「力」は、彼と覇気、そしてシャッキーたちの教えてくれた体術。(あと、実はカクテルの作り方も覚えたけど)


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フランキーと一緒にぐるりとパンクハザードから脱出してきたら、遠くから何かが吹き飛んでくるのを感じた。

あの最低の科学者、シーザー・クラウンが誰かに吹き飛ばされて、私たちの近くに堕ちたのだ。

フランキーは空からくる二人組に意識を向けていて気がついていないけど、周囲に気を配ってた私はなんとか気がついた。

同時に、理由もなく確信する。ルフィが勝った!


近くで見てやろう、あわよくば負け惜しみとでも言ってやろうと近づいていくと、ブツブツと何か言いながらシーザーは何かを取り出した。

見てわかる、あれはモネ……シュガーちゃんのお姉さんの心臓。とらおくんが取ったのだろう。

地面におもむろに置くと、その心臓を刺そうとシーザーはナイフを振り上げる。

されるもんか。あの子の大好きなお姉さんまで奪わせてたまるもんか。

確かに怨敵。でも、それ以前にはじめての女友達で親友。

彼女を助けない理由なんてない。


「ギィィィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!」

(させるかァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!)


武装色を足に纏わせるイメージをして、思い切り蹴り飛ばす。

シーザーは綺麗に意識を失った。

「キキィ……」

(決まった……)

そう、四分音蹴(クアッド・シュート・ムジカ)とでも名付けようか……

そう考えながらシーザーの近くに転がる心臓を抱えて戦闘地域から離れる。

物陰から、ルフィ達について行ったムジカが現れて私の方に手を伸ばす。

「ムー!」

どうやら、この心臓をモネさんに届けてくれるらしい。

「キッ!」(お願いね!)

私が手を振ると、ムジカはお辞儀をして、心臓をどこかにしまって去って行った。


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