死なせない

死なせない

D-B

「シュロ……ロロロ……」

ルフィに灰熊銃でぶっ飛ばされ、タンカーの近くに堕ちたシーザー・クラウン。

(クソ……動けねェ……)

もはや逃走の体力も殆ど残されていない中で、服の内ポケットを探る。

目的のものは簡単に見つかった。

(スモーカーの心臓……!)

ローに渡された、海軍G-5中将「白猟のスモーカー」の心臓。

「シュロロロロ……

せ、めてお前だけでも……

道連れだァ……」

心臓を地面に投げ、ナイフを手に取って振りかぶる。

「くたばれ、スモーカー……!」

ナイフが心臓に突き刺さるその直前。

《…………ィィィィィイイイイイイイイイイイ!!!!!!!》

金属の擦れる、高温の不協和音が響き渡った。


その頃、C棟【毒ガス兵器起爆室】

満身創痍のハーピー、モネは自らの主人に連絡をとっていた。

「……今、その起爆スイッチの前にいる……

爆発はタンカーにまで及ぶわ。

一隻、無駄になるけどいい?」

『…………問題ない。

悪いな、全て道連れに、死んでくれ……!』

主人からの最期の指令、それをなんとも思わず呑み下す。

「了解、若様。」

安全カバーを外し、羽の先をボタンに被せる。

(さよなら、若様……

あなたこそ、海賊王になる男

……シュガー、私の分まで若様を支えるのよ)

ゆっくりと、虐殺兵器のスイッチを押し込もうとした瞬間だった。

羽が何かに弾かれた。

そのままグルグルと、何かに羽が、足が、体が絡め取られる。指示の遂行を邪魔したのは誰だと、慌ててあたりを見渡すとそこには、ドレスローザでは珍しくもない一体の玩具。

「ムーー。」

確かに麦わらの近くには紅白の玩具が付き従っていたが、これは違う。薄暗い夜の様な色の生地の衣装。帽子を被った顔の左目はボタンではなく大きな縫い跡になっている。

雰囲気だけで、これはシュガー……つまりは妹の作り出したおもちゃでは無いとモネは勘付いた。

そしてそれは、まるで『お前の思い通りにはさせない』とばかりに、それがあやつる何かが体に巻き付いてくる。

かろうじて見えたのは、それは五線譜の様な見た目をしていることくらいだった。

『おいモネ、何があった

応答しろ!』

しかしモネは声を出すこともできない。

(ああ、若様、ごめんなさい……)

そうしてモネは意識を失った。


時は少しだけ戻り、シーザー・クラウンが心臓を貫こうとした時のこと。

「ギィィィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!」

バギィ!

「ガッ!!!」

油断していたシーザーは、意識の外から助走をつけて突っ込んでくる玩具……ウタに全く気がついていなかった。

ウタはその勢いのまま飛び、武装色の覇気を纏わせた足先で思い切りシーザーの顎を蹴り飛ばした。


シーザー・クラウン、玩具の蹴りにより昏倒。


しゅたっと着地を決め、しっかりと決めポーズもとる。

ウタの態度から察するに、武装色は得意ではないようだが、今回はうまくいったとポーズの後飛び跳ねて喜んでいた。

それはそうと、今はそれどころではない。

シーザーの近くに転がる心臓を両手で大事に持ち上げると、テチテチとシーザーから離れる。

離れた先には彼女の相棒、ムジカドール。

「ムー?」「キィ!」

ムジカが首を捻ると、ウタが誇らしげに心臓を掲げる。

ムジカはそれを受け取ると、どこかにしまってしまった。

そして、そのまままたどこかへ去っていった。

ウタはそれを見送ると振り返る。

ちょうどミニメリーに一緒に乗ってきたフランキーが、相手の援軍相手に頑張っているところだ。一足先にサニーに戻って、みんなが戻ってきた時に困らない様に、そして円滑にシーザーを捕まえて置ける様にできる準備をしておこうと、足取り軽く戻っていった。


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